カタールワールドカップ・アジア最終予選はいよいよ佳境を迎える。

 残りは4試合。B組2位に浮上してきた日本代表は1月27日に中国代表と、そして2月1日に首位を走るサウジアラビア代表といずれもホームの埼玉スタジアムで対戦する。

 

 現在3連勝中の日本ではあるが、“絶対に負けられない”ではなく “絶対に勝たなければならない”状況に変わりはない。ワールドカップ出場権を自動的に手にできる2位以内(3位はプレーオフに回る)に入るには中国、サウジアラビア相手に2連勝がマストだ。他カードの状況次第とはいえ1勝1分けだと非常に苦しくなってくる。

 

 もう一度、整理しておこう。

 自動出場2枠を巡るB組の戦いは勝ち点16のサウジアラビア、同12の日本、同11のオーストラリア、この3チームに絞られたと言っていい。後がないオーストラリアはホームのベトナム戦、アウェーのオマーン戦を2連勝で乗り切ると勝ち点を17まで伸ばすことができる。日本は中国に勝ってもサウジアラビアに引き分けてしまえば16。つまり2位と3位が入れ替わることになってしまう。

 現時点で日本と勝ち点4の差があるサウジアラビアからすれば、ホームのオマーン戦に勝利できると長距離移動と時差調整を伴う日本には引き分けで十分。〇△で勝ち点は20となり、ワールドカップ出場に王手を掛けられる。

 次の3月シリーズは、2連戦の1試合目に日本がアウェーでオーストラリアとの直接対決に臨む。いかなる状況でも厳しい戦いになるのは間違いないものの、2位と3位が入れ替わっていればオーストラリアは引き分けで御の字となる可能性がある。というのもサウジアラビアがここでアウェーの中国戦に勝ってワールドカップ出場を決めれば、最終戦となるホームでのオーストラリア戦が“消化試合”となるからだ。モチベーションに大きな差が生じることとなり、いくらアウェーとはいえオーストラリア優位に傾くだろう。

 

 日本がサウジアラビア、オーストラリアに2戦連続で引き分けとなってしまうと、最終戦となるホームでのベトナム戦に勝利しても勝ち点20どまりで、オーストラリアがサウジアラビアに勝利した場合の21には届かない。だからこそ日本としては是が非でも中国、サウジアラビアに2連勝して2位をキープしたうえで次のオーストラリア戦を迎えたい。そうなれば仮にオーストラリア戦で引き分けても、最終戦に勝利すれば自力で2位以内を確定できる。

 

 しかしながらこの1月下旬、2月頭の試合というのはコンディション的に簡単ではない。国内組はオフ明けで、海外組もウインターブレイク明けの選手や移籍したばかりの選手もいれば、猛威をふるうオミクロン株に感染してコンディションが読めない選手もいる。しかも何より痛手なのが、吉田麻也、古橋亨梧、室屋成、三笘薫の4人が負傷で招集できない。戦術面でも不在は大きいが、チームを束ねてきた吉田キャプテンがいないのはかなり一大事である。

 この難局を全員で乗り切っていかなければならない。

 守護神の権田修一に聞いたエピソードがある。昨年10月、ホームでオーストラリアに勝利した後、ロッカールームでディフェンス陣、中盤の選手たちが自然と集まって失点シーンを検証したという。後半20分、長友佑都が相手サイドバックにアプローチに行くタイミングで裏に出され、中に折り返されて守田英正がフルスティッチを倒してFKを与えた場面だ。

 

「なぜあの現象が起きたかを確認しておく必要がありました。(ボールホルダーへのアプローチが)遅れた場合、どう対処していくか、サイドバック、中盤、センターバックはどうするか。ラインの上げ下げも頑張らなきゃいけないし、そこも大事だっていう話になったんですけど、横のスライドがあのオーストラリア戦ではしっくりきていなかった」

 

“勝ったから良し”とせず、キャプテンがわざわざ呼び掛けなくてもみんなで集まって課題を修正しようとした。この姿勢が11月シリーズのクリーンシートにもつながったと言っていい。

 

 1月下旬または2月頭にワールドカップのアジア予選があったのは2008年までさかのぼる。アジア3次予選でタイをホームに迎えて4対1と快勝しているが、3得点がセットプレーからだった。身長差のみならず、オフ明けのコンディション面も考慮したうえでスカウティングをもとにセットプレーの練習をかなりやり込んでいた。その意味においてもセットプレーは磨いておく必要があり、選手間でもしっかりと共有を図っておかなければならない。

 

 今回、代役のキャプテンを置く置かないは別として全員がキャプテンの意識を持つ必要があるだろう。森保一監督の指示を踏まえたうえで、細部の戦術確認に動くそれぞれの姿勢が一体感につながっていくに違いない。

 監督、スタッフ、選手、全員の力。

 この難局をうまく乗り超えられれば、カタールがハッキリと見えてくる。一人ひとりの力が試される。


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