8日、北京冬季オリンピックのスピードスケート・女子1500mが国家スピードスケート館で行われ、髙木美帆(日体大職員)が1分53秒72で2位に入り、銀メダルを獲得した。髙木美帆の同種目での銀メダル獲得は、2018年の平昌大会に続いて2度目。金メダルは五輪新となる1分53秒28を記録したオランダのイレイン・ブストで、髙木美帆は0秒44及ばなかった。また佐藤綾乃(ANA)が4位、髙木菜那(日本電産サンキョー)が8位となり、日本勢全員が入賞を果たした。

 

「前回は金を獲れなかった悔しさと、メダルを獲れたうれしさが入り混じった気持ちだった。今回は金メダルを逃した悔しさが強い」

 レース後、髙木美帆は語った。18年平昌オリンピックはこの種目で銀メダル。大会後には500m、1500m、3000m、5000mと4種目の総合順位を争う世界オールラウンドスピードスケート選手権を制した。同大会優勝は男女を通じ、欧米出身以外の選手として初の快挙。また19年には1分49秒83の世界記録をマークするなど着実に力をつけてきた。それだけに本人にとっては悔しい“敗戦”となったのかもしれない。

 

  髙木美帆は今大会5種目にエントリーするハードなスケジュールで挑む。2日前の3000mは6位だったが、1500mは先にも触れたように世界記録を保持する得意種目である。悲願のオリンピック個人種目金メダルを獲得し、弾みをつけたいところだった。立ちはだかったのはスケート王国のオランダ勢だ。平昌オリンピックでは7個の金を含む16個のメダルを獲得した。今大会も既に女子3000mを制している。

 

 9組のマレイケ・フルーネワウトが1分54秒97で暫定トップに立った。10組の髙木美帆の姉・菜那はラスト1周で同組の選手と接触もあり、フルーネワウトの記録を上回ることができなかった。すると11組のアントワネット・デヨングが1分54秒82、12組のブストがオリンピックレコードを23秒塗り替える1分53秒28をマークした。このままいけばオランダ勢が表彰台を独占する。

 

 13組の佐藤は今季W杯同種目世界ランキング1位だ。入りの300mはブストより0秒30速いペース。しかし徐々にブストの記録に遅れをとってしまう。それでも粘りを見せて低地での自己ベストを更新する1分54秒92をマーク。ブスト、デヨングに次ぐ3位に食い込んだ。

 

 髙木美帆は最終組で登場。入りの300mは佐藤より0秒11速いペースで滑ると、700mもブストより0秒11速く通過した。後半型のブストに対し、ここからどれだけ粘れるかが金メダルのラインとなる。1100m通過は0秒03の遅れだ。ラスト1周(400m)を30秒台前半でまとめたかったが、直線で一瞬よろめくなど31秒22と踏ん張り切れなかった。

 

 ブストの記録には0秒44届かなかった。「どの選手がタイムを出したとしても私がベストを出そうとすることに変わりはない。自分の実力が彼女より劣っていた」と髙木美帆。日本人最多となる冬季オリンピック4個目のメダルを手にした。残る個人種目は500m、1000m。団体種目ではパシュートも残っており、まだまだその記録を更新する可能性は十分ある。

 

 ブストは、この種目2大会連続3度目の金メダルを獲得した。日本勢は2位、4位、8位に対し、オランダ勢は1位、3位、5位。日本が連覇を目指すパシュートでも最大のライバルになることは間違いない。

 

(文/杉浦泰介)