10日、北京冬季オリンピックのフィギュアスケート男子フリースケーティングが首都体育館で行われた。鍵山優真(オリエンタルバイオ/星槎国際高横浜)が自己ベストを大幅に更新する合計310.05点で銀メダルを獲得。前回大会銀の宇野昌磨(トヨタ自動車)が合計293.00点で続き、銅メダルを手にした。五輪3連覇を目指した羽生結弦(ANA)はショートプログラム(SP)8位からの追い上げ及ばず4位だった。金メダルは合計332.60点のネイサン・チェン(アメリカ)。SPとフリーで最高得点をマークし、4年前の雪辱を果たす完全制覇となった。

 

 現世界王者に日本勢が挑んだが、表彰台の真ん中は譲るかたちとなった。それでも2位から4位までを独占。日本男子シングルのレベルの高さを改めて証明した。

 

 17番目に登場した羽生。2日前のSPでは、冒頭のジャンプでリンクに空いた穴にはまり、予定していた4回転ジャンプが抜けてしまった。結果として1回転しか回れなかった。ミスがなければ約15点は稼げる1本目のジャンプが0点となり、それが大きく響き“まさか”の8位スタートとなった。

 

 大逆転の3連覇に望みを繋ぐには、フリーでのパーフェクトな演技が求められた。しかし冒頭の4回転アクセルは転倒。続く4回転サルコウもうまく着氷できなかった。それでもSP同様、ミスの後に大崩れしないのが羽生の強みか。安定した演技を披露する。後半の4回転トウループ-3回転トウループのコンビネーションを確実に決め、ステップは最高レベル4。優雅にリンクを艶やかに滑った。フリーの得点は183.21点。合計283.21点で暫定トップに立った。

 

 その後4人が滑ったが、羽生の得点を上回る者が現れないまま、残すのはSPの上位3人となった。3位の宇野は出だしの4回転ループを決めたが、続く4回転サルコウ、4回転フリップは着氷でバランスを崩した。フリーは187.10点。この時点で宇野の表彰台は確定したものの、チェンと鍵山にプレッシャーをかけることはできなかった。

 

 18歳の鍵山はSP終了後、初出場の大舞台を「楽しまなきゃ損」と語ったようにフリーでものびのびとした演技を見せた。4回転ループでうまく着氷できなかったものの、残りのジャンプは大きなミスなくまとめた。本人は「団体、SPとは違い、“終わってしまう”と考えると緊張した」と言うが、硬さは感じさせない堂々とした演技だった。フリーで201.93点。宇野を上回り、トップに立った。この時点で銀メダル以上は確定だ。

 

 鍵山、宇野のメダルの色は、大トリに控えるチェンの演技次第だった。世界選手権3連覇中の王者は、SPで現行の採点方式で世界最高となる113.97点をマークした。赤を基調とした衣装を纏い、音楽に乗ってテンポよく軽やかに氷上を舞った。基礎点94.34点という高難度のプログラムをほぼミスなく演じ切った。218.63点はフリーでもトップ。合計で2位の鍵山に22.55点差をつける圧勝だ。4年前の平昌オリンピックは金メダルを期待されながら、SPでミスを連発して5位に終わった。世界王者としての意地を見せた。

 

 金メダルを胸に掛けることはできなかったが、それでも団体戦での宇野と鍵山が銅メダル獲得に貢献し、個人戦でもダブル表彰台を達成した。日本強しという印象を世界に改めて植え付けたのではないか。

 

(文/杉浦泰介)