11日、北京冬季オリンピックのスノーボード男子ハーフパイプ決勝が雲頂スノーパークで行われ、2大会連続銀の平野歩夢(TOKIOインカラミ)が96.00点のハイスコアをマークし、同種目日本人初の金メダルに輝いた。2位はスコッティ・ジェームズ(オーストラリア)が92.50点、3位にはヤン・シェレル(スイス)が87.25点で入った。その他の日本勢は平野歩夢の弟・海祝(日大)が9位。戸塚優斗(ヨネックス)は10位、平野流佳(太成学院大)は12位だった。

 

 平野歩夢は予選で封印していた大技「トリプルコーク1440」(斜め軸に縦3回転、横1回転)を惜しげもなく披露した。昨年12月、世界で初めて成功させた超高難度技をオリンピックの大舞台で連発。ついに表彰台の頂点を射止めた。

 

 予選を93.25点でトップ通過し、決勝に残った12人のうち最後に出番は回ってきた。1本目から平野歩夢はトリプルコーク1440にチャレンジ。見事に決めて、オリンピック史上初の成功者となった。しかし、その後のエアで転倒し、33.75点で9位だった。

 

 2本目は直前で、予選2位通過のジェームズが92.50点のハイスコアでトップに立った。平野歩夢はトリプルコーク1440に再びチャレンジして成功。その後も「キャブダブルコーク1440」(スイッチスタンスからの斜め軸に縦2回転、横2回転)、「フロントサイドダブルコーク1260」(斜め軸に縦2回転、横半回転)、「バックサイドダブルコーク1260」、「フロントサイドダブルコーク1440」と5つのトリックを全て成功させた。

 

 1440の技を3本も決める高難度の構成だったが、得点は91.75点とジェームズに0.75点及ばなかった。ジャッジ6人中2人は平野歩夢の方を評価したが、残りの4人はジェームズのトリックが上と見た。これには平野歩夢も納得していなかったようだ。本人が「怒りを表現できた」と口にしたように、むしろ闘志に火を付けた。

 

 迎えたラストの3本目。第1トリックのトリプルコーク1440は2本目よりも高いエアで魅せた。5つのトリックをノーミスで成功。2本目よりも凄味が増した圧巻のパフォーマンスだった。スウェーデンのジャッジが100点満点で98点という高得点をつけるなど、96.00点で最後の最後にジェームズの得点をまくった。

 

 18年平昌はこの種目の第一人者ショーン・ホワイト(アメリカ)に次ぐ銀メダルだった。今大会限りでホワイトは現役引退を表明しており、平野歩夢にとって3度目の冬季オリンピックがリベンジを果たす最後の機会だった。平昌は逆転で金メダルを逃したが、北京では逆転で悲願の金メダルを掴んだ。

 

「小さい頃の夢がひとつ叶った。(金メダルを)獲らずには終われなかった」と平野歩夢。表彰式後のインタビューに、淡々と答えながらも喜びを滲ませた。

「ここまで来られたのも家族、身近にいる人たち、応援してくれている人たちがあってのもの。納得いく滑りというのを、みんなに届けられた。何か刺激になってくれれば、それ以上のものはない」

 

 23歳のスノーボーダーは、これから追われる立場になるだろう。彼がホワイトを「ショーンは相変わらずチャレンジし続けている。出ている中で最年長。そういう姿を僕にはできないことをいつも見せてくれている」と語っていたように、平野歩夢という存在も世界中のスノーボーダーの刺激となっているはずだ。

 

(文/杉浦泰介)