12日、北京冬季オリンピックのノルディックスキー・男子ジャンプ個人ラージヒル(LH)決勝が国家スキージャンプセンターで行われ、個人ノーマルヒル(NH)金の小林陵侑(土屋ホーム)が292.8ポイントで銀メダルを獲得した。史上4人目、日本勢初となる個人2冠はならなかった。金メダルは296.1ポイントでマリウス・リンビク(ノルウェー)、3位には281.3ポイントでカール・ガイガー(ドイツ)が入った。その他の日本勢は佐藤幸椰(雪印メグミルク)が15位、陵侑の兄・潤志郎(雪印メグミルク)が24位、中村直幹(フライングラボラトリー)が29位だった。

 

 張家口の寒空に高く舞った日本のエース。NHに続く2冠とはならなかったが、その実力はオリンピックの大舞台でも遺憾なく発揮された。

 

 予選9位通過の小林陵侑は、この日の試技で最長の136.5mを記録した。そして決勝1回目でヒルサイズ(140m)をも超える142mの大ジャンプ。着地もテレマークをきっちり決め、飛型点はジャッジ5人中4人が19点台(20点満点)をつけた。ジャッジの最高点と最低点を除く3人の合計点が反映されるため57.0という高得点だった。合計147.0ポイントで暫定トップに立ち、2冠への道を一歩刻んだ。

 

 オリンピックにおけるノルディックスキー・ジャンプの個人2冠は過去3人(のべ4度)。88年カルガリー大会で70m級(現NH)、90m級(現LH)の個人2種目に加え、団体90m級で3冠を達成したマッチ・ニッカネン(フィンランド)、02年ソルトレイクシティと10年バンクーバーの2大会達成したシモン・アマン(スイス)、14年ソチ大会のカミル・ストッフ(ポーランド)だ。またストッフは18年平昌大会でLHも制し、2連覇を達成している。

 

 伝説のジャンパーたちが成し遂げた偉業へと挑む2回目のジャンプ。小林陵侑に次ぐ140.5mを飛んだ2位のリンビクとは2.2ポイント差。飛距離にすると約1mのわずかな差だ。1回目を飛んだ50人のうち上位30人までが跳躍する権利を得られる2回目は、1回目30位の兄・潤志郎からスタートした。各選手が130mを超すジャンプを飛ぶ中、小林陵侑の直前に飛んだリンビクが魅せた。秒速0.24mの追い風という不利な条件ながら、140mの大ジャンプ。151.3ポイントを加え、296.1ポイントでトップに立った。

 

 自身の跳躍の直前だったため、結果は見ていないが好記録だったことは理解していた。「歓声が上がっていたので、さすがに緊張しましたね」と小林陵侑。風は秒速0.09mとリンビクよりは良い条件だ。トップに立つための目安は140.5m。勢い良く滑り出し、素早く空中姿勢へ入った。しかし記録は138m。合計292.8ポイントで1位のリビングには3.3ポイント届かなかった。小林陵侑は「普段のW杯でも見られない熱い戦いだった」と悔しさを滲ませつつも、好勝負を楽しんでいた。

 

 2冠は惜しくも達成できなかったが、日本人の個人種目で1大会2個のメダル獲得は、98年長野オリンピックの船木和喜(NH銀、LH金)以来、2人目の快挙だ。21歳で初出場した平昌オリンピックはNHで7位、LHで10位だったことを考えれば、大きな飛躍を遂げた。W杯通算勝利は日本人男子歴代トップを塗り替えた。18-19シーズンにはW杯総合優勝も果たした。その歩みを「前回のオリンピックからすごく成長できた。充実した4年間だった」と振り返った。

 

 残すところは14日に行われる団体戦のみである。「ビッグジャンプを見せたい」。25歳のジャンパーは今大会3種目の表彰台を見据えていた。

 

(文/杉浦泰介)

 

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