15日、北京冬季オリンピックのスピードスケート女子団体パシュート決勝が行われ、日本はカナダに敗れた。日本は連覇こそならなかったが2大会連続3度目のメダル獲得。カナダは4大会ぶりの表彰台。決勝でオリンピック記録を塗り替える2分53秒44をマークし、初の金メダルに輝いた。3位はオランダ。3大会連続のメダルを手にした。

 

 2連覇まで、あとわずかだった。2018年平昌オリンピックに続く連覇を狙う日本は、前回の金メダルメンバーである髙木美帆(日体大職員)、佐藤綾乃(ANA)、髙木菜那(日本電産サンキョー)の布陣で臨んだ。最後のカーブまでリードしながら最後尾に位置していた髙木菜那が転倒。カナダに先着を許した。

 

 3人1組で隊列を組み、1周400mのリンクを6周する団体パシュート。主に中長距離を得意とする選手が選ばれる。個のスピードはもちろんのことチームのコンビネーションが必要とされる種目だ。日本は10年バンクーバーでの銀メダルを皮切りに、14年ソチ4位、18年平昌金メダルと安定した成績を残している。

 

 2日前のタイムで競う準々決勝は、オリンピック記録を更新する2分53秒61とトップで通過した。この日の準決勝は4位のROC(ロシアオリンピック委員会)と対戦。日本は3人がバランスよく先頭に立つ滑りで、ラスト1周までに6秒39差をつけた。最後は流してフィニッシュ。2大会連続の決勝進出を決めた。

 

 約2時間後に行われた決勝は、オランダを破ったカナダが相手だ。準々決勝では日本に次ぐ2分53秒97で2位に入った。決勝は準々決勝、準決勝と同じイバニー・ブロンディン、バレリ・マルテ、イザベル・ワイデマンのメンバー構成。ブロンディンとワイデマンは平昌オリンピック4位入賞メンバー。またワイデマンは今大会5000mで銀、3000mで銅メダルを獲得している。団体パシュートでは今季W杯3戦全勝と強敵である。

 

 号砲とともに勢いよく飛び出したのは日本だ。スタートの半周(200m)のラップは17秒98。20年に記録した世界記録をも上回るペースである。1周目のラップはカナダに1秒05の差をつけた。後方の選手が先頭の選手を押し、先頭交代を極力減らす“プッシュ”という戦術が世界の主流となりつつあるが、日本はバランスよく先頭交代を図った。

 

 後半型のカナダはじわりじわりと差を詰めてくる。ラスト1周を報せる鐘の音が鳴る。日本の2000m通過タイム2分38秒65はオリンピックレコードを塗り替えるペースだ。しかしカナダとの差は0秒39しかない。

 

 残り半周で0秒32差。ここで最後の直線へ向かおうとする日本にアクシデントが起きた。最後尾に回っていた髙木菜那がバランスを崩すと、こらえ切れずに転倒する。3人の隊列から外れてしまい、その間にカナダはフィニッシュ。2分53秒44のオリンピック新で同国初の金メダルを手にした。

 

 連覇をゴール目前で逃したショックのあまり髙木菜那はレース後号泣した。「転ばなかったら優勝できたかもしれない」と自らを責めたが、佐藤は「今日はカナダが強かった」と潔く負けを認めた。2大会連続のメダル獲得にも笑みはない。金メダル以外は負け。パシュートは日本の“お家芸”と言っていいだろう。

 

(文/杉浦泰介)