2022年のJリーグが開幕し、約2週間が経過しました。開幕節で4カードが引き分けと、全体的にぼやっとした入りになってしまった印象が強いですね。シャキッとしない様子でリーグが開幕を迎えてしまいました。今回は僕の古巣・鹿島アントラーズをメインに語ろうと思います。

 

 アントラーズは、水戸ホーリーホックとの16回目の茨城ダービーで初めて黒星を喫しました。リーグの開幕節はアウェイで行われたガンバ大阪戦。こちらは3対1と勝利しましたが、試合内容に点数を付けるとすれば、20点くらいでしょうか。勝ったことは最低限良かったなぁ、と思う程度で水戸との戦いで露呈した課題の改善ができていないように思いました。

 

 アントラーズは現在、スイス人のレネ・バイラー新監督が新型コロナウイルスの感染拡大の水際対策の影響により、未だ合流できていません。現在は岩政大樹コーチが監督代行という立場で指揮を執っています。ここが非常にネックな部分ですね。だから、僕は言いたい。

 

「やっちゃえ、岩政!!!!!」

 

 日産自動車のキャッチコピーみたいですが(笑)。バイラーが合流できないのは仕方ありません。サッカーは、基本的にピッチに立っている選手が連係してボールを、またはゴールを奪う競技です。そのために近くにいる指揮官が指示を出しますよね。今年のアントラーズはかなりイレギュラーなスタートですが、現場の指揮を任されているであれば、岩政の意見をもっと反映させてほしいです。

 

 茨城ダービー、ガンバ戦……。守備面で抱える問題の質は同じように感じます。前線の選手がプレスをかけにいくタイミングとDFラインが考えるプレスのタイミングが一致してなさすぎです。それにより間延びが生じます。プレスに行くなら中盤もDFラインも迫力を持って押し上げる。行く必要がないのであれば、しっかりとリトリートする。試合には流れがあるのは当然ですから、もっとメリハリがあって然るべきではないでしょうか。近年、アントラーズはボールを自分たちで保持するスタイルに舵を切ろうと試みています。それは悪いことではないですが、守備が緩くなるのはまた話が違うと思いますね。ちなみに、ガンバ戦で前からのプレスで2点目を奪えましたが、あれは相手の稚拙さにも助けられたものです。

 

 3連覇時のレギュラーセンターバックは誰?

 

 アントラーズが3連覇を達成した時。(小笠原)満男を中心にプレスの迫力がすさまじかった。岩政はその時のレギュラーセンターバックですよ。賢い彼ですから現状、ピッチで起きている問題点に気付いているはず。だから僕は「やっちゃえ、岩政」と言いたいんです。

 

 岩政にも「指揮って(仕切って)いいのか」と遠慮があるのかもしれません。代行とはいえ、チームを預かっています。もし、この時期に負けが立て込んだら、こんなことは考えたくないですが岩政のこれからの指導者人生に日が当たらなくなってしまう可能性だってあり得てしまいます。外から見る人間は「あの時期に鹿島で結果を出せなかった指導力がない人」という表現になってしまう。これは恐ろしいことです。だったら、岩政が思うようにやるべきです。

 

 昨季のレギュラーセンターバックだった町田浩樹はベルギーのクラブへ、犬飼智也は浦和レッズに移籍しました。昨年のレギュラーセンターバックが一気に抜けたことの影響は少なくありません。だったら、尚更、岩政の経験に基づいた指導が幅を利かせても“アリ”だと僕は思いますよ。

 

●大野俊三(おおの・しゅんぞう)

<PROFILE> 元プロサッカー選手。1965年3月29日生まれ、千葉県船橋市出身。1983年に市立習志野高校を卒業後、住友金属工業に入社。1992年鹿島アントラーズ設立とともにプロ契約を結び、屈強のディフェンダーとして初期のアントラーズ黄金時代を支えた。京都パープルサンガに移籍したのち96年末に現役引退。その後の2年間を同クラブの指導スタッフ、普及スタッフとして過ごす。現在、鹿島ハイツスポーツプラザの総支配人としてソフト、ハード両面でのスポーツ拠点作りに励む傍ら、サッカー教室やTV解説等で多忙な日々を過ごしている。93年Jリーグベストイレブン、元日本代表。

*ZAGUEIRO(ザゲイロ)…ポルトガル語でディフェンダーの意。このコラムでは現役時代、センターバックとして最終ラインに強固な壁を作った大野氏が独自の視点でサッカー界の森羅万象について語ります。


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