11月21日に開幕するカタールワールドカップの組み合わせ抽選会が行なわれ、日本代表(ポット3)は、スペイン代表(ポット1)、ドイツ代表(ポット2)、コスタリカ代表とニュージーランド代表による大陸間プレーオフの勝者(ポット4)と同じグループEに入った。

 

 昨年のEURO2020でベスト4に入ったスペインと、その大会において決勝トーナメント1回戦で敗れ、その後に就任したハンス=ディーター・フリック監督のもとここまで8勝1分け無敗と息を吹き返してきたドイツは、ともに優勝候補の一角と言っていい。

 

 この2強が断然優位に立つグループに日本が入ったことを「不運」だとは思わない。目標とするベスト8どころかグループリーグ突破すら難しくなったとはいえ、日本が1998年にフランスワールドカップ出場を果たして以降、優勝経験がある欧州の強豪と戦うのは初めてになる。スペインの優勝はアンドレス・イニエスタが輝きを放った2010年、計4度の優勝を誇るドイツの直近は開催国ブラジルを準決勝で7―1と圧倒した2014年。スペインにしてもドイツにしても優勝の記憶は新しい。

 

 日本の初戦は11月23日にドイツ、2戦目は27日にコスタリカORニュージーランド、そして3戦目が12月1日、スペインと戦うスケジュールになる。スペイン、ドイツを相手にどこまでやれるのか。日本サッカーの現状を把握できる絶好の機会と考えれば、むしろ「幸運」に思えてくる。

 

 大事になってくるのはやはりドイツとの初戦だ。

 過去の大会がはっきりと教えてくれている。初戦に敗れた1998年フランス大会(対アルゼンチン、●0-1)、2006年ドイツ大会(対オーストラリア ●1-3)、2014年ブラジル大会(対コートジボワール ●1-2)はいずれもグループリーグ敗退に終わっている。翻って初戦で勝ち点を得た2002年日韓大会(対ベルギー △2対2)、2010年南アフリカ大会(対カメルーン 〇1―0)、2018年ロシア大会(対コロンビア 〇2-1)は決勝トーナメントに進んでいるのだから、いくらドイツが相手とはいえ最低でもドローには持ち込みたいところだ。

 

 かなり困難なミッションになることは覚悟しなければならない。

 決勝までの7試合をトータルで考えると強豪国は試合をこなしながら段々とコンディションを上げていこうとするチームが少なくないが、ドイツはスタートをかなり大事にしている印象がある。2010年はオーストラリアに4-0、そして優勝した2014年もポルトガルに4-0と圧倒している。グループリーグ敗退に終わった前回こそメキシコに0-1で敗れただけに、今回はネジを巻いてくること間違いない。

 

 フリック監督は長らくドイツ代表のコーチを務めた経験があり、ワールドカップの戦いも熟知している。それにトーマス・ミュラー、マヌエル・ノイアー、ヨシュア・キミッヒ、セルジュ・ニャブリ、レロイ・サネらバイエルン・ミュンヘン監督時代に指導してきた彼らがチームの中心を担い、バイエルンでの日常がドイツ代表に通じているメリットは極めて大きい。欧州、国内のクラブからバラバラに集まってくる日本とは大きな違いがある。

 

 これまでのワールドカップならある程度十分な準備期間があった。しかし11月開催の今回は違う。たとえばブンデスリーガの2022~23年シーズンで言えば、11月11~13日の試合を最後に中断する。すなわちその10日後にワールドカップが始まるとなると、コンディションや連係を合わせていく時間はかなり限られてしまう。強化試合も1つに限られる可能性が高い。クラブと代表の活動がつながっているほうが極めて有利になる。これはスペインにも同じことが言える。

 

 日本はドーハでの戦いに慣れているとはいえ、欧州から距離も近く、試合間移動の負担もほとんどない。冷房完備のスタジアムが整備され、暑さの心配もかなり軽減される。環境面が日本にとってプラスに作用するとは考えにくい。

 

 ドイツに食らいつくには、徹底した準備が必要だ。これからの強化試合はとにかく強豪とのマッチメークが望ましい。対戦相手の分析や対策はもちろんのこと、本大会までのコンディション調整も極めて大事になってくる。森保一監督は過去6大会分のノウハウを活かしていかなければならない。

 

 日本代表のストロングポイントは逆境に強いこと。2010年の南アフリカワールドカップは大会前にバッシングが吹き荒れ、前回のロシア大会は大会直前に監督交代があった。それでも決勝トーナメントに駒を進めている。森保ジャパンも今回、最終予選で最初の3試合で2敗するという状況からカタール行きのチケットをつかみ取っている。

 

 指揮官はもちろんのこと、選手、代表スタッフ、日本代表にかかわるすべての人に、難しいミッションを成し遂げようとする強い意志がなければならない。ハードルが高いからこそ、やり甲斐があるというものだ。


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