勝てば7大会連続となるワールドカップ出場が決まり、負ければ一転して3位に転落してプレーオフに回る可能性が高くなる。3月24日にシドニーで行なわれるアウェーのオーストラリア代表戦はまさに森保ジャパン最大の正念場だ。

 

 カタールW杯、アジア最終予選も残り2試合。序盤に2敗を喫して崖っぷちに立たされたなか「絶対に勝たなければならない戦い」を続けて5連勝をマークし、「王手」を掛けるところまでやってきた。

 

 あらためて状況を整理しておこう。

 直接対決となる2位・日本と3位・オーストラリアの勝ち点差は「3」。得失点差が日本の「+6」に対してオーストラリアが「+9」であることを考えると、日本が負けてしまえば勝ち点差が並んでも得失点差で下回り、なおかつ最終戦でひっくり返すことも難しくなる。最終戦の相手は日本がホームで現在最下位のベトナム(29日)、オーストラリアがアウェーで現在首位のサウジアラビアとの対戦(日本時間30日)。サウジアラビアが先の中国戦(日本時間25日)でワールドカップ出場を決めてしまえば彼らにとっては“消化試合”に過ぎなくなり、モチベーションに大きな差が生じることになる。つまりはオーストラリア戦での結果が日本の命運を決めることになるわけだ。

 

 ニュアンスとしては「絶対に勝たなければならない戦い」から「絶対に負けられない戦い」に切り替わる。ただ、難しいミッションであることは明らか。オーストラリアと最終予選で同組に入るのは4大会連続で過去のアウェーマッチは2分け1敗で分が悪い。加えて、相手は勝つしかないという状況のために必死になって臨んでくる。10月の試合は日本がホームで勝利しており、リベンジへの意欲も相当に強いはずだ。日本が高い集中力でサウジアラビアに借りを返したようなことを、逆にオーストラリアにやられてもおかしくはない。

 

 受け身になるのは危険。しかし一方で自分たちが優位に立っていることを踏まえて戦うことが肝要になってくる。追い込まれているのはオーストラリアのほうであり、何よりも失点しないことが大事だ。

 

 発表されたメンバーは大所帯となる27人。

 大体予想どおりだが、「無失点」をキーポイントに挙げるならば気になるのは最終ラインだろうか。

 センターバックは前回、中国戦、サウジアラビア戦において守備を統率して2試合連続のクリーンシートに貢献した板倉滉、谷口彰悟に加えて、ケガからキャプテンの吉田麻也が復帰した。植田直通も名を連ねている。

 

 結果が出ているときはメンバーをいじらないのが森保一監督の一つの特徴。板倉、谷口が基本線と見るが、プレッシャーが最大級にのし掛かるゲームでそれもアウェーとなると、経験値の高いキャプテンの起用に踏み切ることも十分に考えられる。

 

 サイドバックも右こそ酒井宏樹が「鉄板」だが、左は不透明だと考える。ベテラン長友佑都は今季まだFC東京で先発機会を得ていない。欧州では試合勘から遠ざかっていても代表では出場を果たしてきただけにその実績はあるものの、そうは言っても懸念は残る。オランダのズヴォレでコンスタントに出場している中山雄太が万全であれば、先発交代の可能性は大いにある。オーストラリアはフィジカルを前面に押し出すチームからつないでくるモダンなチームに印象を変えているが、それでもいざとなったときの力技には迫力を感じる。「高さ」のケアを考えても、中山の起用は指揮官の頭にあるのではないだろうか。

 

 10月の試合では、1-0とリードしていた後半20分にペナルティーエリア前でFKを与え、そこから同点ゴールを奪われた。長友佑都が相手サイドバックにアプローチに行くタイミングで裏に出され、サイドハーフのボイルから中に折り返されて守田がフルスティッチを倒したという場面だった。長友、中山どちらが出るにせよ、チームとして「アプローチに行くタイミング」と「横のスライド」をもう一度、意思統一しておく必要があるだろう。

 

 先発メンバー選考の教訓としてはチーム全体の動きがあまりに重く、0-1で敗れた9月のオマーン戦を繰り返してはいけない。2連戦の一発目はいつも難しくなるとはいえ、コンディションを見極めたうえで判断すべきということは指揮官の胸に深く刻まれているはずである。

 

 前回のロシアワールドカップ、アジア最終予選においてヴァイッド・ハリルホジッチ監督は招集前、わざわざ海外に日本代表スタッフのトレーナーを送り込んで選手の状態を確認するほど徹底していた。

 

 コンディショニングが森保ジャパンの生命線を握るのは言うまでもない。


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