一流へのハードル 〜中田翔と堂林翔太〜

 ここ数年、一番注目してきた打者は、中田翔(北海道日本ハム)ということになると思う。何よりも大阪桐蔭高校時代、1年生で出場した夏の甲子園が鮮烈だった。今よりも、顔も体も細かった。しかし、腰からお尻にかけては、見事なほどにふくらみがあった。つまりは、下半身の力を使ってプレーしていたということだろう。

日本野球よ、理念を語れ!

「これが、最後のスターだったのかなあ」  知人の巨人ファンが、ふと、そうつぶやいた。松井秀喜の引退会見である。  もちろん、すべての巨人ファンが共有する感覚ではあるまい。松井がメジャーに移籍して以後も、巨人は次々とスターを生み出してきた。 「でも、純粋なスターは松井までだったような気がするんですよね」

WBC日本代表私案

 ダルビッシュ有(レンジャーズ)はWBC不参加を表明する声明文でこう書いた。 <I have decided with my team of advisors that getting ample rest is the most important thing for me right now…>  いや、何も英語を引用しなくてもいいのだが、ちょっとカッコつけてみました。英語がカッコいいなどという感性は、我ながらどうかと思いますが(笑)。

ジャイアンツと巨人

 昔、将棋の大山康晴名人が、なぜか当時まだ若手だった中原誠現十六世名人を苦手にしていたことがあると記憶する(ちなみに、将棋にはまったく詳しくないのですが)。もしかしたら、その現象と似たような側面があるのかもしれないと思うのが、前田健太(広島)と大島洋平(中日)の対戦成績である。

監督の資質

 パ・リーグのリーグ優勝を果たした北海道日本ハムの栗山英樹監督が、テレビ出演して印象的なことを語っていた。11度胴上げされたのだが、その間どんな気持ちだったか、と問われて、「クライマックスシリーズの選手起用のことが気になっていた」と答えたのだ。

甲子園とWBC

 日本野球の土台は、やっぱり甲子園(全国高校野球選手権)だなあ。つくづく思う。  今年は、最大の目玉である“160キロ投手”大谷翔平(花巻東)が、岩手県予選の決勝で敗退し、とびぬけたスターのいない大会になるのかと思った。

ダルビッシュ時代の投手たち

 柔道男子73キロ級で銀メダルを獲った中矢力選手が印象に残る。もちろん、ロンドン五輪の話である。  相手を見据える目がいい。上から目線で相手を見下ろすのではない。かといって、挑みかかる猛禽類のような視線でもない。相手に対して、上からでも下からでもなく、どこか静かに、しかししたたかな自信を帯びて、相手を見る。これが世界と戦う目だよなぁ。

怒りと希望 〜6・13千葉ロッテ×広島〜

 広島カープの代走・中東直己は、自軍の三塁側ベンチに帰る時、三塁側スタンドが異様な沈黙に包まれていることに気が付いたはずである。それは不穏な中に怒気を含んだ、観客の沈黙であった。中東の表情も明らかにこわばり、青ざめていた。少し古い話になる。場所はQVCマリンフィールド。6月13日の千葉ロッテ−広島戦のことだ。

日本ハム・栗山監督の我慢

 北海道日本ハムの栗山英樹監督は、さわやかなイメージが売りの評論家だった。  ここで言う「さわやか」とは何か。まずは、端正なマスクと、明瞭な話し方。その外面的な特徴に加えて、いわば内面的な特徴もあった。それは、彼が現役時代、決して超一流の大選手ではなかったことにある。むしろそのことを逆手にとって、取材者として現役の一流選手たちの話を引き出していった。

2つのスライダー勝負を見つめながら 〜統一球と日本野球〜

 日本プロ野球選手会は、日本野球機構(NPB)に対して、統一球の見直しを申し入れたそうだ(4月24日)。へーえ。導入されて1シーズンと1カ月ちょっと。志の低い話だなあ。  これに対して、広島の鈴木清明球団本部長は「選手会から面白味がないという話が出たが、それは12球団でも話している。持ち帰る」とコメントしたそうだ。ま、こちらは、さもありなん、だな。なにしろ、巨人の渡辺恒雄球団会長が、昨秋、「プロ野球の経営者としては、統一球ってのはどうだ? コマーシャルベースで考えれば、空中戦の方が面白い。(略)フェンス間際でみんなホームランにならないでアウト。これで観客数が減ってんだよ」と発言しておられますからね(2011年9月26日)。この方に同調なさるのは、この国の球団経営者の常、なのでしょう。21世紀も、もう10年以上過ぎたというのに……。

力強さとしなやかさ

 隣のヤクルトファンが「あたーっ」と声をあげて、へたりこんだのが印象的だった。  3月30日の今季開幕戦。読売巨人−東京ヤクルトの一戦である。ヤクルトの先発・石川雅規が、なんと8回裏まで巨人打線をノーヒットノーランに封じこめたのだ。すわ、開幕戦で快挙達成かと思った途端、9回裏に坂本勇人に初ヒットを許したのでした。

ヒーローの美と原型

 今年のプロ野球界の最大の話題は、やはりテキサス・レンジャーズのダルビッシュ有が、どのくらい活躍するか、ということになるのだろう。  それにしても、連日のように放映されるキャンプの映像を見ていると、改めてきれいなフォームだと思う。  左足を上げた時の、軸足(右足)でまっすぐに、すっくと立った姿。右腕の軌道、そして、限りなく打者寄りで放すリリースポイント。理にかなっている、だけではない。端的に美しい。

惜別

 人は誰でも永久保存しておきたい記憶を一つや二つは持っているものだ。野球観戦において、そういう試合のコレクションが一つ増えた。  2011年10月29日。パ・リーグのクライマックスシリーズ・ファーストステージ第1戦。埼玉西武−北海道日本ハム戦。ダルビッシュ有の日本最終登板となった試合である。

吉見的なるもの、川崎的なるもの

 日本シリーズが始まったと思ったら、何やらうっとうしいニュースに話題をさらわれたプロ野球界ですが、福岡ソフトバンクが日本一になったというのは、まぁ、妥当な結果というべきだろう。3位のチームの下剋上なんて事態は、どう見ても日本一とは違うことがらですから。

心は技術で補える

 北海道日本ハムの梨田昌孝監督は、じっと腕組みをしたまま動かなかった。  10月30日のパ・リーグクライマックスシリーズ・ファーストステージ、埼玉西武対日本ハムの第2戦である。2−1で西武リードという緊迫した展開で迎えた9回表。日本ハムのマウンドには4番手の増井浩俊。今季、セットアッパーとして花開いた増井はこの日も8回をなんとか抑えて、2イニング目である。

ある日の落合采配から

 かのコルビー・ルイス(レンジャーズ=元広島)が、3日(現地時間)レイズとの地区シリーズで6回1失点の好投。今季ポストシーズンの1勝目を挙げた。  ルイスが好投すると、なんか、嬉しい。「日本での経験は野球人生を変えただけでなく、喜びと感謝の気持ちに満ちた人生の大切な1ページ」(「スポーツニッポン」10月5日付)だそうだ。

統一球と金属バット

 夏の甲子園(全国高校野球選手権)は面白かった。いくつも印象的な試合があったが、たとえば八幡商(滋賀)−帝京(東東京)。3−0と帝京リードで迎えた9回表。帝京の左腕・渡辺隆太郎は8回まで二塁を踏ませず、このまま危なげなく完封で逃げ切るのだろうと、誰もが思ったに違いない。ところがこの回、1死から3連打を浴びて満塁。ショートゴロエラーで3−1とされて、なお1死満塁。  続く八幡商の打者・遠藤和哉はファウルで粘り、カウント3−2となった。さらにファウルをして迎えた9球目。帝京の1年生捕手・石川亮はおそらくスライダーのサインを出した、のだと思う。投手・渡辺はうなずいてから首を振り、サイン交換をやりなおす。結果、投げたボールはストレート。これが高めに入ってしまって、なんと逆転満塁ホームラン。強豪・帝京敗退の瞬間だった。

捕手の領分

 大変極端な言い方をすれば、今季のリーグチャンピオンを決定づける打席であった。振り返っておこう。  その前に、耳慣れない言い方をした。「リーグチャンピオン」。セかパかを言っていない。どちらかと問われれば、パ・リーグである。しかし、両リーグの現在の力の差を考えると、パ・リーグの1位が、すなわち日本でペナントレースを戦う両リーグ12球団のチャンピオンと言うにふさわしい。その意味で、今季の日本プロ野球全体のペナントレースにおける「リーグチャンピオン」を決定づける試合だった。

「弱さ」という問題

 その瞬間、何とも言えない気持ちの悪い感覚に襲われたのを覚えている。あれ、オレはもう野球を観る資格がないのだろうか、というような……。  6月26日の中日−広島戦である。0−0で迎えた3回裏、無死。広島の打者はこの日がプロ入り初登板初先発のルーキー・中村恭平。なんとかバットに当てた打球は、大きくバウンドして三塁前へ。中日の三塁手・森野将彦が打球が落ちてくるのを待って一塁へ送球。これがワンバウンドになって、セーフ……のはずだったのである。ところが、塁審の判定はアウト!  えっ? この程度の基本的なアウト、セーフを間違うようでは、オレはもうダメだな。それが最初に襲った気持ち悪さの内実だった。

武田勝とマエケン

 北海道日本ハムは、なかなか魅力的なチームである。なんたって、日本一の大エース、ダルビッシュ有がいる。ストレートが常時150キロを超える変化球投手。投手の理想形でしょう。見ているだけで、十分に幸せになれる。  打者には、ようやく開花し始めた“怪物”中田翔。ド派手に打ったりド派手にスランプに陥ったり、見る者を飽きさせない。糸井嘉男も稲葉篤紀も、実に味のある好打者である。故障して調整中だが、投手陣にはあの斎藤佑樹もいる。クローザーは武田久。1番セカンド田中賢介も逸することはできない……。とまぁ、多士済々なのだが、序盤戦、例年以上に注目を浴びた投手がいる。武田勝である。  先発登板試合で、味方が5試合連続完封負け。1失点か2失点の好投を続けたのに連敗して、そんな変わった記録で話題となったのだ。

スラッガーの条件

 その男の練習なら見たことがある。  荒涼とした河川敷のような草原が広がるところ。野の果ては川につらなるのだっただろうか。  コーチが上げるトスを、目いっぱいひっぱたく。いや、打撃する。打球は、はるか野の果て、水平線を目指して飛んでいくかのようだ。  いわゆるロングティーと呼ばれる練習である。秋を迎え、シーズンもそろそろ終わりに近づこうかという夕暮時。2軍の試合終了後のことである。

茫然と、野球を見る

 東京で生活をし、野球を見る。茫然と、野球を見る。  たとえば、センバツ第4日目、第3試合(3月26日)を見た。国学院久我山−九州学院戦。久我山のエース川口貴都は180センチ、82キロの2年生。しっかりとした体をしている。普通に投げて、ストレートは140キロを超える好投手である。将来、プロに行っても不思議はないな。うまく成長したらローテーション投手までありえるかもしれない……。

投げろユーセイ! 打てドウバヤシ!

 まだ3月になったばかりのウイークデーのナイトゲームだというのに、観衆なんと3万4722人! 3月2日に行なわれた東京ドームの埼玉西武−巨人オープン戦である。  観る側の期待値がいかに高かったかの証左だが、その関心の大半は、西武先発のルーキー大石達也にではなく、巨人先発ルーキーの沢村拓一に向けられたものだったのではないだろうか。「巨人に怪物が入ったらしい」という高揚感が、まだ潜在的には巨人ファンとして、世に沈潜しておられた東京近辺の多くの人々の、ヒーロー待望論的興味を一気に掘り起こしたといおうか。

Back to TOP TOP