この緩やかに弧を描くような軌道は、どこかで見た覚えがある――。 瞬間的にそんな記憶の断片をたぐりながら、長友佑都(インテル)のセンタリングを眺めやったような気がする。 長嶋茂雄さんだったら、「センタリングのボールの、あのアークが……」とでもおっしゃるだろうか。
「ハムユウ」をご存知だろうか。「ハマユウ」じゃないですよ。「ハマコウ」でもない。人並みにケータイなぞでニュースをチェックしていると、最近、しょっちゅう、この言葉を見かける。正確に書くと、下は漢字になっていて「ハム佑」。 「ハム佑」が走ったとか、笑ったとか、酒が苦手だとか。 要するに、北海道日本ハムに入団した斎藤佑樹投手のことである。いくら字数を節約したいからといっても、「日本ハム斎藤佑」くらい書いてもバチは当たらないと思うのだが……。それにしても、すさまじい人気である。 ついにはイチロー(マリナーズ)までが、夢の中で対戦したけど、160キロ出ていて打てなかった、とおっしゃったとか。いやはや。
どうなっているんでしょうねえ、日本の政治は。いや、あわてて申しそえますが、私は政治にも経済にも、きわめてうとい人間である。当欄で表明するほどの政治信条、見解など、何も持ちあわせていない。
今年のポストシーズンは準決勝が面白かった。というと、3位千葉ロッテが、ペナントレースで優勝した福岡ソフトバンクを下した“下克上”に、痛快な感情を抱いた方が賛同なさるかもしれない。実は、そっちではない。3位巨人が、優勝した中日に敗れたセ・リーグの方である。
心なしか、両者ともやや調子が悪いように見えた。いや、絶好調時と比べれば、明らかに出来はよくなかった。 それでも、試合結果は1−0である。2010年の日本のプロ野球を語る時、やはりこの両エースの投げ合いは、投手のレベルの頂点を示したものとして、記憶されるべきだろう。
今シーズン前半の日本球界の話題を独り占めしたのは前田健太(広島カープ)だった。彼の持ち球をご存知だろうか。ストレート、カーブ、スライダー、ツーシーム、チェンジアップ、カットボール……。もう少し簡略に言えば、要するにカーブ、スライダー、チェンジアップである。 何かが抜けているでしょ? そう。フォークがない。投げようと思えば投げられるのかもしれないが、一軍の試合の重要な場面で、彼がフォークを使うことはない。 時代の流れというものを感じる。おそらくは、この背景にはメジャーリーグの趨勢があるだろうからだ。
もうだいぶ以前のことのような気がするが、サッカーW杯南アフリカ大会が閉幕して間もない頃、釜本邦茂さん(日本サッカー協会名誉副会長)のこんなインタビュー記事が出ていた。 <岡田監督は、オシムさんから続く「人とボールが動くサッカー」という理想を捨て、守備をかためて数少ないチャンスで得点して勝つサッカーに切り替えた。これは大英断だった。W杯という大会は、勝たなければ意味がない。試合から1週間もたてば、みんな内容なんて忘れている。>(「朝日新聞」7月2日付「W杯を語ろう」)
海の向こうに怪物が出現した。それも超弩級の怪物が……。 昨年、メジャーリーグのドラフト全体の1位でワシントン・ナショナルズに入団したスティーブン・ストラスバーグである。 彼の売りは、なんといっても100マイル(約160キロ)を超す速球である。とはいえ、速いだけでコントロールのかけらもない剛球投手は数多い。どうせそういうタイプなのだろうと高をくくっていたら大違いでした。
たとえばアストロズの松井稼頭央は解雇されて、現在ロッキーズ傘下のマイナーでプレーしている。今季パイレーツに移籍した岩村明憲は、松井同様に不振が続いている。別に、松井稼や岩村にメジャーリーグで活躍する能力がないと言っているのではない。松井稼ならロッキーズ時代、岩村ならレイズ時代に、輝いているシーズンもあった。このような状況を、彼らはメジャーに「消費されている」と表現してきた。
今季、開幕からスタートダッシュを決めたのは、セ・リーグは、やっぱり読売巨人軍、そして、パ・リーグは意外にも千葉ロッテだった。セ・パともまだまだ首位戦線は混沌としているが、この2チームが今季の主役であることは、おそらく、間違いあるまい。 ま、巨人の場合は当然だろ……と思うでしょ。実は当然というより、ある起爆剤があったと見ているのだが、その話はまた後で。
ダルビッシュ有(北海道日本ハム)も岩隈久志(東北楽天)も勝てなかった今季のパ・リーグ開幕戦。その翌日の第2戦では、一転して彼らのような剛球とはまた一味違う投手戦が展開された。
西村徳文新監督を迎えた千葉ロッテは、今年は走るのだそうだ。 例えば2月23日の対ヤクルト練習試合。初回1死2塁、打者4番・金泰均の場面。2塁走者・早坂圭介がなんと3盗を敢行。まんまと成功して、1死3塁のケースをつくり出した。繰り返すが、打席に立っていたのは4番打者である。 西村監督はこう言っている。 「盗塁はいつ走ってもいいグリーンライト。4番の場面でもすきあらばどんどん行かせる」(「スポーツニッポン」2月24日付) 「グリーンライト」というサインは、確かトレイ・ヒルマン監督が北海道日本ハム監督時代に使って注目を浴びた。要するに、走者の判断で行けると思ったら、いつ盗塁してもいい、信号は常に青ですよ、ということだろう。
菊池雄星(埼玉西武)の登録名が「雄星」に決まった。うーん。少しでも野球に興味のある日本人なら、花巻東高から西武に入団したあの菊池は「雄星」という印象的な名前の持ち主であることは知っているはずだ。あえて「雄星」にしてアピールするまでもないだろうに。それに「ユウセイ」の4音より、「キクチ」という鋭角的な3音のほうが声援としては締まるような気がする。
メジャーリーグに移籍した日本人選手の多くは、アメリカ社会に“消費”されている――これまで意識的にそう書いてきた。 その一例として、昨年までの松坂大輔(レッドソックス)を挙げることができる。ご承知のようにレッドソックスは、約60億円の大金を投じてポスティングで松坂を獲得した。メジャーでの松坂は、まだその金額ほどの大活躍はしていないというのが大方の感想だろう。
東北楽天イーグルスのマーティ・ブラウン新監督は優秀である――と私は思う。同時にもうひとつ言えることがある。彼はあまりツイていない。 日本人女性と結婚したせいかどうかは知らないが、広島カープの監督を退任した後も、日本球界での監督を希望していた。そこへ白羽の矢を立てたのが楽天だった。
ただ見入るのみ――そんな87球だった。 日本シリーズ第2戦、北海道日本ハム先発ダルビッシュ有の投球である。 左腰、左臀部痛を伝えられ、この日はなんと42日ぶりという強行登板。5〜6分の力なんてものではない。3分くらいの力である。 試合後、自ら明かしているが、ステップする歩幅も短くし、「腰を使わずに手だけで投げた」。
花巻東の菊池雄星投手は、メジャー志向が強いそうだ。最終的に彼がどのような結論を出すのかは、もちろん今の時点ではわからない。ただ、メジャーリーグに対して、志向というか、憧れをもっていることは確かだろう。 左腕投手としては、おそらく20年に一人の逸材である。あれだけの体の柔軟性とスピードを持ち合わせた投手など、そう簡単に出現するものではない。日本の球場で野球を見続けている者としては、できればテレビ画面ではなく、目の前でナマの菊池投手を見たいと、正気なところ思う。なにしろアメリカに行く機会などまずない、ドメスティックな人間なものですから。
甲子園(全国高校野球選手権大会)は、日本野球の父であり母である。日本野球の基盤である。改めて、そう思う今年の夏であった。 もうだいぶ古い話になったが、今春、日本はWBCで連覇を飾った。この優勝が日本野球にもたらす果実は小さくないだろう。WBC出場を夢見て練習に励む野球少年も増えたに違いない。
過日、広島に帰省する機会があった。そのとき乗り合わせたタクシー運転手A氏の独白に触発されるところが多かったので、以下に紹介することにする。
テレビでは今日も野球中継をやっている。といっても、地上波ではありませんよ。たとえば6月30日から巨人−広島3連戦があったのだが、読売の主催試合にもかかわらず、日本テレビは中継しなかった。そんなに野球が見たけりゃ、勝手にケーブルテレビにでも加入しろってか?
人は何のために野球を見るのか。別になにやら高尚な議論を始めようというのではありません。要は楽しいから見る。気持ちがいいから見る。ひいきのチームが勝ったら人生が幸せになるから見る。人間、やっぱり幸せにならないとね。そういう様々なことを含めて、習慣になっているから見る。
岩村明憲が二盗を敢行した時、あなたはどう感じただろうか――。 もちろん、WBC決勝、日本対韓国戦10回表の、あの有名なイチローの打席の話である。 たしかに、「へぇ、思い切ったことするなぁ」とは感じた。それは覚えている。実は、そこから先が面白いのだが、なぜか「これで敬遠だな」とは思わなかったのである。
さあWBC。ここまできて、余計なことを言っても始まらない。松坂大輔もイチローもダルビッシュ有も村田修一も、誰もが力を発揮して勝ち進むことを祈る。今は、ひたすら日本代表を応援したい。