ソフトボール
人生には幾つもの分岐点がある。長望未はこれまで自らの直感を信じて歩んできた。小学3年でソフトボールを始めたのは、彼女にとって“これだ”と思える何かを感じたからだ。長はそれまで小学1年からの2年間、バレーボールをやっており、監督やコーチから「筋がいいね」と褒められるほどだった。だが、バレーボールが彼女の心を打つことはなかった。長がソフトボールに惹かれた理由は、やはりバッティングだった。
バッターボックスに立つ前、トヨタ自動車レッドテリアーズの長崎望未は自軍のベンチを見つめていた。自らの呼吸を聞きながら、集中力を研ぎ澄ましていたのだ。 昨年11月、日本リーグ決勝トーナメント。前年度覇者のルネサスエレクトロニクス高崎との決勝、相手の先発マウンドには上野由岐子が立っていた。北京五輪や世界選手権など数々の国際大会で日本に金メダルをもたらしてきた日本の大黒柱である。 1回裏、1死三塁の場面、先制のチャンスで3番・長の打順は巡ってきた。いつも通りのルーティンをこなす。土埃のついたバットに息を吹きかけ、「頼むよ」と“相棒”に気持ちをこめた。