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(写真:新ユニホームを身に纏いポーズをとる代表選手たち)

 1日、全日本スキー連盟(SAJ)は都内で会見を開き、男子ジャンプの葛西紀明(土屋ホーム)、女子ジャンプの高梨沙羅(クラレ)、男子ノルディック複合の渡部暁斗(北野建設)、女子フリースタイルスキー・ハーフパイプの小野塚彩那(石打丸山クラブ)ら日本代表有力選手が出席し、新シーズンに向けた抱負を語った。また全日本スキーチームの愛称が「SNOW JAPAN」に決まり、新たな公式ユニホームも披露された。

 

 2年前のソチ五輪では7個(銀4、銅3)のメダルを獲得した全日本スキーチーム。昨シーズンも、W杯で日本勢が大活躍した。女子ジャンプの高梨がW杯で2年ぶり3度目の総合優勝を果たすと、女子フリースタイルスキー・ハーフパイプの小野塚は連覇を達成。男子スノーボード・ハーフパイプの青野令(日本体育大)は2009年シーズン以来の3度目の総合チャンピオンに輝いた。

 

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(写真:各競技の主力選手をモデルに起用し、ビジュアル面も重視)

 あと1年3カ月ほどで平昌五輪を迎える。更なる飛躍を遂げるため、プレ五輪シーズンで弾みをつけたいところだ。メディアの注目度も高まり、毎年恒例となっているSAJの「TAKE OFF」会見には多くの報道陣が詰め掛けた。この日、今シーズンからSAJが力を入れるブランディングのひとつとして、代表チームの愛称が「SNOW JAPAN」と発表された。非常にシンプルな名称である。わかりやすく覚えやすいネーミングだが、浸透させるにはやはり6競技の成績が大きく左右するだろう。

 

 今シーズンも優勝争いを期待されるのが、昨シーズン好成績を収めた高梨、小野塚、渡部だ。女子の高梨は連覇、小野塚には3連覇がかかっている。

 

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(写真:「選手としても人間としてもまだ未熟。先輩の背中を見て学んでいきたい」と気を引き締める高梨)

 4度目の総合女王に挑む高梨は「今シーズンは世界選手権、来シーズンは平昌五輪と続くので、いいシミュレーションができればいいと思います」と意気込んだ。ソチ五輪では金メダルの大本命に推されながら、表彰台にすら上がれなかった。本人は「会場の雰囲気に合わせられず、自分のモノにできなかった」と振り返る。「心に余裕をもって臨めるようにトレーニングをしています」と雪辱の機会を虎視眈々と狙っている。20歳になったばかりの高梨はW杯総合連覇、世界選手権制覇と更なる飛翔を誓った。

 

 2年連続でクリスタルトロフィーを持ち帰った小野塚は「新しいシーズンになればイーブンになる。終われる立場ではなく、自分との戦い」と口にする。3連覇を意識するのではなく「1試合1試合を戦っていく先に3連覇があればいい」と目の前の戦いに集中している。「ベーシックな部分を掘り下げるため」に個人合宿も敢行した。新たなトリックにも挑戦するなど進化に余念はない。「楽しみでもあり、不安でもある」というシーズン。W杯初戦は来月17日にアメリカで行われる。

 

 一方、渡部は11-12シーズンから安定して総合上位に入っているものの、まだ表彰台の頂点には立てていない。「昨シーズンは2位ばかりで勝てそうな試合も落とした。今シーズンはその2を1に変えられるように攻めたレースをしたい」。ソチ五輪でも掴んだのは銀メダル。20年ぶりの快挙ではあったが、金メダルへの想いは強い。「オリンピックの金メダルをノルディック複合個人で獲った人は誰もいない。僕が大きなことを成し遂げるとすれば、それぐらいしかないと思っている。2018年に金メダルを獲って、史上初と言われるように、しっかりと試合をやっていきたい」。複合のエースは前人未到の頂を目指す。

 

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(写真:「40歳を超えてもできるということを見ていただきたい」と抱負を述べる葛西)

 その他でに多くの注目を集めたのは、“レジェンド”葛西だ。昨シーズンはW杯通算500試合出場を達成。表彰台には5度上がり、自らの最年長記録を何度も塗り替えた。これまでの葛西は“進化”し続けてきたが、現在は“維持”がテーマだという。「ソチ五輪からほとんど変わらないトレーニング、変わらないジャンプを続けてきました。今はそれを維持するように心掛けている」と語った。その秘訣を問われると「秘密です」と煙に巻いたが、長年の経験で会得したものがあるのだろう。「五輪で金メダルを獲るのは夢」と話す葛西。45歳で迎える平昌五輪の舞台に立つことができれば8大会連続出場となる。まずは今シーズン、結果を残すことで、その実力を証明したい。

 

 それぞれの想いを胸に新たなフライトへと旅立つ。「SNOW JAPAN」の行く先は平昌、そして北京へ――。まずはプレ五輪シーズンという助走路を滑走する。

 

(文・写真/杉浦泰介)