やっぱりオカは外せない!

 そんなレスターサポーターの声が聞こえてきそうである。欧州チャンピオンズリーグ(CL)決勝トーナメント1回戦第2戦でホームのレスターはセビージャに2-0で勝利し、2戦合計3-2でベスト8に駒を進めた。岡崎は2トップの一角で先発し、激しいプレッシングの先導役となって勝利に貢献した。得点こそ奪えなかったものの、献身的な働きはチームの動力源であり続けた。

 

 奇跡の英プレミアリーグ制覇を果たして迎えた今季は一転して試練のときを迎えた。激しいポジション争いにさらされ、サブに回る機会が多くなった。チームの成績も低迷。降格圏内が迫ったところでクラウディオ・ラニエリ監督が解任され、助監督のクレイグ・シェイクスピアが暫定的に指揮を執ることとなった。

 

 チームの危機に奮起したのが、ほかならぬ岡崎であった。

2月27日のホーム、リバプール戦では先発に復帰して、猛烈なプレッシングを繰り返した。チームはプレッシング主体の連動した守備から速攻に転じる昨季のスタイルに立ち戻り、リーグ戦の連敗も5でストップ。岡崎は次のハル・シティ戦にも先発して2連勝を収め、息を吹き返したチームのけん引役となっている。

 

 そして、このセビージャ戦の活躍である。ロシアW杯アジア最終予選のUAE戦、タイ戦を控える日本代表にとっても明るいニュースとなった。そして何よりヴァイッド・ハリルホジッチ監督を喜ばせたに違いない。

 

 昨年4月、キリンカップの発表会見で指揮官が岡崎について長く語ったことがあった。

「岡崎はすべてを出し尽くす選手だ。このような人物がチームにいるのはうれしいこと。彼はチームのために犠牲を払うことができ、クリスティアーノ・ロナウドや(ズラタン・)イブラヒモビッチのようなエゴイスティックな選手じゃない。毎試合彼のことを見ているが、本当にすべてを出し尽くしている。彼が国際Aマッチ100試合出場を果たしたとき、みんなの前で『みんなには、岡崎のように全力を出し尽くす姿を見せてほしい』と言った。2、3人の選手には『岡崎を見ろ』と伝えた。彼は良い模範だ」

 

 すべてを出し尽くす――。

 このフレーズを何度も口にしていた。ストライカーは点を取ることが一番の仕事だ。無論、岡崎も得点にこだわっている。しかし前線の効果的かつ持続的な献身は、チームを奮い立たせる活性剤ともなる。

 

 今季はその「すべてを出し尽くす」が影を潜めていたところがあり、代表でも10月のオーストラリア戦、11月のオマーン戦、サウジアラビア戦と3試合続けて先発から外れている。だが自分らしさを取り戻したこと、ポジションを取り戻したことで代表でも先発復帰する可能性があるように思う。

 

 岡崎は現在106キャップ。ハリルジャパンのメンバーの中ではトップの数字だ。

 彼を初めてA代表に呼んだのが、岡田武史氏(FC今治オーナー)である。南アフリカW杯アジア最終予選を戦うチームの主力にすぐに引き上げている。

 

 その理由を尋ねたことがある。

「ボール扱いは今でこそめちゃくちゃうまくなっているけど、当時は下手だったし、雑だった。ただ向こうっ気の強さを買った。攻守にわたってスイッチを入れる役割をやってくれたし、特にW杯予選ともなると、岡崎のようなアグレッシブなタイプはとても貴重だった」

 

 最終予選に必要な男、岡崎の復調は実に頼もしい。

 足踏みしている代表通算50ゴールも、そろそろ見たいものである。


◎バックナンバーはこちらから