第91回 広島四者協定の、わくわくする「伸びしろ」

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 3月25日、広島四者協定で初めてのイベント「きて、みて、体験! みんなのパラスポーツひろばin広島」を開催しました。ゲストに地元広島出身の卓球パラリンピアン、"マダムバタフライ"こと別所キミヱさんと、ボッチャ日本チャンピオンの古満渉さん。トークショーとパラスポーツの体験会を実施しました。特に別所さんから放たれるオーラとサービス精神のおかげで会場は終始、華やかでにぎやか。今年70歳になる別所さんの「私にはまだまだ伸びしろがある」というお話は会場を感動で包みこみました。

 

 この広島四者協定は広島大学、広島県、広島県障害者スポーツ協会、そしてNPO法人STANDの4団体が、2016年9月に締結したものです。全国で47番目に設立された広島県障害者スポーツ協会の設立のお手伝いをさせていただいたことからご縁が始まり、県、広島大学、広島県障害者スポーツ協会の皆さまと「地域での新しいかたちを」との機運が高まり、協定を締結しました(四者協定の詳細について掲載したコラムはこちらです)。

 STANDではこれまでも様々なパラスポーツの体験会やイベントを行ってきました。パラスポーツを通して、共生社会の実現を目指すのが目的です。続けるうちに事業には様々な人に関わってもらいたいという思いが湧いてきました。STAND単独での開催ではその場は大変有意義で、楽しいものですが、終わると解散。それ以上広がらない閉塞感があったからです。

 

 例えば障がいのある人ない人が集まる。いろいろなスポーツをする人がパラスポーツで交流する。スポーツに縁のない人や嫌いな人の参加。多様な団体との連携などをスポーツを通して深めていきたかったのです。しかしなかなかSTANDだけでは実現は遠く感じていました。

 

 そんな中、14年から継続的にサポートしてくださる企業が現れました。ともに企画・運営していただくと、いろんな知見、アイディア、びっくりするような人との出会い、目からうろこの技術など驚きの連続でした。またあるときは、支店のある地域ぐるみの協力、自治体との連携、社員の方がリーダーを務めるスポーツ少年団との共催。どれも、単独では思いつかない、たどり着かないことばかりです。これまでと全く違う大きな手ごたえを感じました。

 

 さらに、自治体との連携というかたちも実現しました。ここでは事前の広報活動の徹底や、地元の子供たちのチアリーディング、バトントワリング、知的障がいのある子供たちのダンスチームの発表の場としても活用していただき、またそれを応援する親御さんはじめ地域の方たちとの共有の場としての役割を果たすなど、自治体ならではの信用、ネットワークで実現できたことが多くありました。

 

 しかし、そうなるとまた欲が出てきます。イベントや体験会、いわゆる「祭り」が終わると、STANDとそれらの人や団体との関係には一旦、ピリオドが打たれます。自然に、大きな輪になる方法はないだろうか……。

 

 広島の四者協定は最初からずっと4つの団体がつながっています。1回の事業ごとに解散することはありません。例えばイベントなら、次回を「1から」始めることはないのです。2回目、3回目と、何かを足して、発展していきます。さらに、「仲間」が増える予感がしています。

 

 4つの異なる種類の団体が組んでいると「地域社会のため」の理解が得られます。一団体では難しい企業や団体の協力も、得られやすいと感じています。今回も会場を提供くださったり、広報活動を支援してくださったりと、協力をいただきました。こうして、仲間が増えて、関係の広がり方が立体的になる。短い時間でしたが、大きな手ごたえと予感のプレゼントをもらったとてもいい1日になりました。

 

伊藤数子(いとう・かずこ)プロフィール>

新潟県出身。パラスポーツサイト「挑戦者たち」編集長。NPO法人STAND代表理事。スポーツ庁スポーツ審議会委員。東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会顧問。STANDでは国や地域、年齢、性別、障がい、職業の区別なく、誰もが皆明るく豊かに暮らす社会を実現するための「ユニバーサルコミュニケーション事業」を行なっている。その一環としてパラスポーツ事業を展開。2010年3月よりパラスポーツサイト「挑戦者たち」を開設。また、全国各地でパラスポーツ体験会を開催。2015年には「ボランティアアカデミー」を開講した。著書には『ようこそ! 障害者スポーツへ~パラリンピックを目指すアスリートたち~』(廣済堂出版)がある。
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