20代前半の選手が中心の四国アイランドリーグPlusで、まもなく40歳を迎える選手が奮闘している。愛媛の河原純一(元中日)だ。NPBで延べ16年間に渡って積み上げてきた実績と経験は充分。1995年に駒澤大学から巨人に逆指名(1位)で入団し、02年には抑えに転向して28セーブをあげて日本一に貢献した。その後、西武に移籍し、1年の浪人生活を経て09年からは中日へ。貴重な中継ぎとして落合ドラゴンズのブルペンを支えた。昨季限りで中日から戦力外通告を受けたとはいえ、39歳のベテランが独立リーグで投げ続ける理由はどこにあるのか。リーグの印象や、若い選手たちに伝えたいことも含めて本人へインタビューした。
(写真:登板は8試合と少ないが、うち7試合は無失点と貫録のピッチングを見せている)
――現状、8月7日を最後に登板がありませんが、その理由は?
河原: コンディションが良くなったからです。体の状態さえ良ければ、もっと投げたい気持ちはあるのですが……。

――愛媛に入団して初登板が6月28日と少し時間がかかりました。やはりアイランドリーグのように限られた環境の中でコンディションを上げるのは難しかったと?
河原: 予想外のケガがあったり、いろいろあって少し遅くなりました。肩、ヒジの状態さえ良ければ、もっと早いタイミングで投げるつもりでしたよ。だって前の年だって中日で元気に投げられていたわけだから。

――07年オフに西武を戦力外になった後、1年間、浪人を経験しています。この時には独立リーグでプレーする考えはあったのでしょうか。
河原: あの時はほとんどなかったですね。西武をクビになった時は「もう1回、きちんと体を鍛え直してトライしたい」という気持ちだったから。今回の状況とはちょっと違いましたね。05年にヒザを手術して中途半端な状態のまま投げていたので、どこかに所属するのではなく、1年間、徹底して体づくりに充てようと考えていました。でも今回は戦力外になった時には体に大きな問題はなかったし、何より年齢を考えれば、ここで1年を棒に振るわけにはいかない。

――野球を続けるなら韓国や台湾などへ渡る道も考えられます。アイランドリーグ、そして愛媛に入った決め手は?
河原: 一番最初に声をかけてくれたからです。NPBのトライアウトを受けた翌日くらいに連絡をもらいました。その時は、まだNPBのどこかで働けるところを探していたので返事は保留しましたが、最終的に他から声がかからなかったのでお世話になることに決めました。

――NPBで投げられないなら引退という決断をする選手もいます。でも、河原投手はユニホームを脱ぐことは考えなかった?
河原: 確かに働き口がなければ辞める理由にはなるでしょう。でもトライアウトを受けたのだって、「まだやれる、やりたい」という気持ちがあったから。それなのにNPBの球団から話がないから辞めるというのはちょっと納得がいかなかったんです。もうここまで野球をやって来たんだから、自分で納得のいく形で辞めたい。

――昨季は中日で30試合に登板。クライマックスシリーズ、日本シリーズでも投げました。完全燃焼したわけではないと?
河原: もちろんです。落合(博満)監督、森(繁和)コーチともに、戦力外になっても1軍のメンバーとして僕を使ってくれましたからね。戦力として見なされていないなら、普通、1軍では投げさせてくれないですよ。だから、その期待に何とか応えたいという一心で投げていました。

――実際に四国に来てみて、アイランドリーグの印象はいかがですか?
河原: それはいろいろありすぎて難しい質問ですね(笑)。まぁ、一言でいえばハード。環境や条件が当然のことながらNPBとは違いますよね。

――ハードとは、たとえば?
河原: ホームゲームといっても愛媛の場合は、いろんなところに行って試合をするし、球場もいろいろ。NPBでは絶対にやらないような球場だと、マウンドがまともに投げられる状態ではない場所がある(苦笑)。高校、大学から四国に来た若いピッチャーは気にならないかもしれないけど、もう10年以上、NPBの環境でやっていて、そこで投げろと言われたら厳しいものがありますよね。まぁ、これも含めて独立リーグなんだなと感じています。

――開幕から約3カ月遅れの初登板は、1イニングを三者凡退。久々のマウンドはどんな感覚でしたか?
河原: いい意味で、いつもと変わらなかったですね。緊張感もありましたし、独立リーグだからといって気が抜けることもありません。その後、7試合に投げましたけど、できるだけ今までと同じような気持ちで投げたいと考えていました。確かにNPBと比べればバッターのレベルも高くないのは事実ですけど、だからといって緊張を緩めてしまっては絶対にプラスにならないし、結果も出ない。だから、むしろ無理してでも自分の気持ちを追い込んでマウンドに上がっている面はありますね。

――初登板から4試合連続でパーフェクトリリーフが続きましたが、5度目の登板となった徳島戦(7月20日)には4連打を浴びて最終回に逆転負けを喫しました。
河原: 投げていれば、いつかは打たれますよ。僕は球威で抑えるタイプではないから、少し甘く入れば打たれてしまうんです。
 それにNPBと違って、相手バッターに対する情報量が少ないですからね。NPBでは相手バッターに関するデータが徹底的に分析されていたので、それらを頭の中に入れて投げるのが当たり前でした。要は相手を抑える術はわかっていて、その通りに投げられるかどうかの勝負。年齢を重ねる中で僕はこの部分を特に重視してやってきました。ところが、このリーグにはそんなデータがない。何も相手のことがわからないまま投げるというのは正直言って戸惑います。ここがNPBとの一番の大きな違いかもしれませんね。

(後編につづく)

(聞き手:石田洋之)


【BCリーグ】
◇後期
 エスピノサ、2発7打点の活躍(群馬2勝4敗、金沢市民野球場、137人)
馬ダイヤモンドペガサス   10 = 004030201
石川ミリオンスターズ     3 = 000000030
勝利投手 糸川(4勝4敗)
敗戦投手 高(0勝2敗)
本塁打  (群)エスピノサ4号満塁、5号3ラン
       (石)謝敷3号3ラン