レッドソックスのフロントがダルビッシュ有(北海道日本ハム)のピッチングを見たら、今すぐ松坂大輔と交換したくなるのではないか。
春先に行なわれたWBCに出場したピッチャーの多くが故障したり調子を崩すなか、彼は涼しい顔で快刀乱麻のピッチングを続けている。
7月22日現在、12勝3敗、防御率1.31。勝ち星と防御率、そして投球回数はパ・リーグのトップだ。
ダルビッシュがスゴイのは、今季も含めて4年連続で、ほほ同程度の成績を残していることだ。つまりスランプがないのだ。
特筆すべきは防御率だ。07年が1.82(1位)、08年が1.88(2位)、そして今季が1.31(1位)。この安定感は驚異的である。
春先のWBCでは国際球が指に馴染まず苦労したが、今すぐメジャーに行っても15勝以上は間違いあるまい。
そんな完全無欠のダルビッシュだが、ひとつだけ残念に感じられることがある。それはライバルがいないことだ。
村山実には長嶋茂雄、江夏豊には王貞治、江川卓には掛布雅之、野茂英雄には清原和博、松坂大輔にはイチローと、エースと言われるピッチャーには皆、宿敵がいた。だがダルビッシュには「コイツだけには負けたくない」と目の色を変えるような宿敵が見当たらないのだ。
年齢からすれば埼玉西武の“おかわり君”こと中村剛也あたりが有力候補なのだろうが、まだそこまではいっていない。福岡ソフトバンクの松中信彦あたりがもう少し若かったら火花が散っていたのだろうが……。
しかし逆にいえばライバル不在の状況は、ダルビッシュが「別格」であることの証左でもある。近年、これだけ相手を見下ろしながらピッチングを楽しんでいたピッチャーがいただろうか。松坂でも、ここまでの別格感はなかった。
ライバル不在――それはダルビッシュにとって幸せなことなのか、それとも……。
<この原稿は2009年8月10日号『週刊大衆』に掲載されたものです>
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