篠原颯斗(日本体育大学硬式野球部/徳島県美馬市出身)第1回「ドラ1でのプロ入り誓う本格派右腕」
「ドラフト1位でプロに行く」
そう力強い目標を掲げているのが、日本体育大学硬式野球部4年・篠原颯斗だ。昨年秋、首都大学野球リーグ戦1部で4勝を挙げ、防御率0.40をマーク。最優秀投手とベストナインに選ばれ、冬には侍ジャパン大学代表候補合宿にも参加した本格派右腕である。今年度からエースナンバー「18」を背負う。
「入学してきた時から持っていた思いなので、実現したい。あとは最終学年としてチームを引っ張っていく立場になり、チームの日本一を目標にしているので、そこも達成できるようにやっていきたいと強く思っています」
現在、NPBは12球団。ドラフト1位は年間12人しかいない狭き門である。この高い目標を篠原は、大学入学前に立てたものだ。
なぜ「プロ入り」ではなく「ドラフト1位」なのか。本人の談――。
「目標は高ければ高い方がいい。目標をドラフト3位、4位に置くよりも、ドラフト1位の方が自分の中でもモチベーションに繋がる。高校(池田)の時は“プロに行きたい”という、ぼんやりとした目標だったんですが届かなかった。それではダメだっていうこと。(投手コーチの)辻(孟彦)さんが僕を大学に誘っていただいた時、『ドラフト1位でいけるように頑張っていこう』という話をしていただいた。目標を高く設定しないと、そこ(プロ入り)に向かっていけないと思うんです」
この秋のNPBドラフト会議に向け、今年度のピッチングがNPB球団へのアピール材料となる。4月5日、首都大学野球春季リーグが開幕した。日体大、そして篠原の初戦はプロ野球の巨人ファームの本拠地・ジャイアンツタウンスタジアムで行われた。“開幕投手”を任された篠原は、2部から昇格してきた武蔵大学との一戦のマウンドに上がった、しかし初回、先頭打者にヒットを許すと、自らの牽制悪送球でピンチをつくり、ヒットと味方のエラーでいきなり2点を失った。
それでも大崩れしなかった。無死二塁のピンチ、4番からの打順をファーストファウルフライ、センターフライ、ショートゴロに打ち取った。篠原は得点圏にランナーを置くと、スイッチが入るという。「昨季はほとんどの試合でランナーいない方が少ないぐらいの感じでした。もちろん、それではダメなんですが、得点圏にいると気持ちは絶対に入ります。それにランナーがいても、“いつも通り”という落ち着きにも繋がっている」。3回から5回、7回と出塁を許したイニングの方が多かったものの、2回以降は淡々とスコアボードに0を並べ続けた。
空振りの取れるストレート
ストレートは自己最速を1km塗り替える151kmをマーク。7回を投げ5安打2失点(自責点0)は先発投手としての役目を十分に果たしたと言えよう。打線は2回と3回のホームランで追いつき、5回に相手のエラー絡みで勝ち越した。チーム、そして自らの白星スタートを切った。これで篠原は3年春から8連勝。リーグ戦では負けなしだ。この春の「5勝以上」を目標に設定している彼にとっては、連勝記録を伸ばしていくことがチームの秋春連覇に繋がる。
篠原の武器は低めに垂れないストレートだ。この日も低めズバッと決まるウイニングショットを光っていた。篠原本人も「自分の持ち味はストレート高校の時からストレートは大事にしてきました。特に低めのボールは良かったと思う」という。日体大の古城隆利監督も「強いストレートで空振り、三振を取れる」と評価する。
その古城からチームの投手陣を任されているコーチの辻は、これまでプロ入りした選手を含め、数多のピッチャーを見てきた。その中でも篠原は「今までの日体大の選手とは少し違うかもしれません」と評する。辻が評価しているのも「ベース板付近でも球威が落ちない」というストレートだ。
辻は続ける。
「140km台中盤を出すピッチャーは大学生でもたくさんいますが、ストレートで空振り、三振を取れるピッチャーは、今少なくなってきている。全体的に球速が速くなってきている分、バッターの目も慣れてきているし、ある程度打てるようになってきた時代。それでも篠原のストレートは、相手が予測していても、空振りが取れたり、抑えられたりするんです」
辻によれば、今年2月にトラックマンで計測した際、真っすぐに対する数値はプロ野球の一流選手と同等の数値が出たという。ストレートで空振りを取れるのは、回転数の他にも、時にスライダー気味に動くことも理由のひとつ。だ
「それでも球威は落ちず、左打者のインコースに食い込み、バットを折ることも。そのあたりも真っすぐがわかっていても、空振りしたり、見逃したりすることにも繋がっているのかもしれません」
今では新聞記事等でも「プロ注目」の枕詞が付く篠原だが、いわゆる野球エリートではない。全国大会出場経験は大学に入ってから。野球のキャリアは小学3年時、地元の軟式野球部チーム、「江南パワーズ」で本格的にスタートした。
(第2回につづく)
<篠原颯斗(しのはら・はやと)プロフィール>
2003年11月24日、徳島県美馬市生まれ。江原南小3年時から軟式の野球を始める。江原中時代は軟式野球部に所属。池田高校では1年秋からベンチ入り。3年夏はエースとして、県大会ベスト4に導くも、甲子園出場には届かなかった。日本体育大学入学後は2年春から公式戦デビュー。3年秋には、4勝0敗、防0.40(リーグ1位)とチームのリーグ優勝に貢献し、最優秀投手、ベストナインに輝いた。冬には侍ジャパン大学代表候補合宿に参加した。MAX151kmのストレート、スプリット、スライダー、カーブなどを駆使する右の本格派。身長182cm。右投げ右打ち。背番号18。趣味は映画鑑賞。
(文・写真/杉浦泰介)
