第116回 群馬・八木沢壮六コーチ「新生ペガサス、投手陣の現状」
開幕までいよいよ約1カ月となりました。今季のBCリーグは、4月21日にスタートします。我々、群馬ダイヤンモンドペガサスの開幕戦はホーム敷島球場で信濃グランセローズと対戦します。五十嵐章人新監督の下、さらに大半の選手が新人という新体制の中、3シーズンぶりのリーグ優勝、さらには石川ミリオンスターズに続いての独立リーグチャンピオンと、昨季は裏切ってしまったファンの期待に応える結果を残したいと思います。
昨季は前期こそ、7割という高い勝率で地区優勝を果たしたものの、後期は最下位に陥ってしまいました。そして、新潟アルビレックスBCとのプレーオフでもチームを立て直すことができずに連敗を喫し、球団創設以来、初めて地区優勝を逃したのです。では、前後期の差はどこにあったのか。最大の要因は投手力でした。安定感を見せていた前期とは一転、後期は踏ん張らなければいけないところでの失点が多かったのです。もちろん、投手陣だけのせいではありません。前期が非常に良かっただけに、選手には多少、気の緩みが生じたところもあったことでしょう。とにかく、全ての歯車がかみ合わなかったのです。
シーズン終了後には、創設以来4年間、指揮官を務めてきた秦真司前監督(現・巨人コーチ)、そして15名もの選手がこぞって退団しました。私自身、長い間、野球界で指導者をしてきましたが、これほど多くの選手がチームを去っていくのは初めての経験でした。これも、活発に新陳代謝が行なわれる独立リーグならではということなのでしょう。そんな中、投手陣で残ったのは、堤雅貴(高崎商業高)と栗山賢(日本文理高−鷺宮製作所)の若手2人です。
1年目からNPB入りを期待されてきた堤は、素質のあるピッチャーです。うまく調子を乗せられれば、自ずと勝ち星はついてきます。しかし、もう一段レベルアップを考えた時に課題となるのが、ボールの角度です。身長173センチと上背がない彼は、ボールそのものに角度がないため、フォークのような落ちるボールに落差をつけることができないのです。そこで重要なのがリリースの際のトップの位置を高くすること。これがボール1個分でも違うと、バッターの感覚は大きく変わります。そして、他の球種においては、常に低めにコントロールすること。そうしてバッターの目線を下げることで、落差を生み出すのです。
自主トレーニングを見ていると、堤は今のところ、フォームに大きなズレもなく、修正しなければならないような所は見受けられませんので、順調に仕上がってきているようです。どの球種でもストライクを投げられるようになることが先決ですが、今のフォームを崩さない程度にリリースのトップの位置を高くすることを、今季の課題の一つとして取り組むことを本人に提案できればと思っています。
新監督に求む、決断力
一方、昨季に入団した栗山は、前期は肩の調子がよくないこともあり、途中まで何試合かリリーフで投げただけでした。しかし、その肩が治り、前期終盤に初先発のマウンドを踏むと、後期には信濃相手に4安打完封勝ちまで収めたのです。結局、栗山は堤の7勝に次ぐ5勝(2敗)を挙げました。これには栗山も自信をもったことでしょう。彼に大きな変化をもたらせたのは、肩が回復してから取り組んだフォーム改造でした。もともと栗山はボールに力があり、ナチュラルに変化する、いわゆる“クセ球”と球質としてもバッターにとっては打ちづらいボールを投げます。ですから、きちんとストライクに投げられるコントロールさえあれば、十分に勝つことができます。
しかし、そのコントロールが課題だったのです。原因は右足にありました。これまでの栗山はリリースした後、着地する右足に重心がかかっていました。これがボールが抜けたりしてコントロールが乱れる最大の要因であり、また、肩にも負担がかかっていたのです。そこで、リリースした後、ステップした左足に重心をかけたままにし、右足が着地する際に重心がかからないように修正したのです。これによって、リリースの際にボールを最後まで持つことができるようになり、コントロールが安定したのです。今季はスタートから主力の一人として活躍してくれることを期待しています。
新戦力としては5名の投手が入団しました。MAX145キロ、右の本格派・清水信寿(豊田西高−中京大−エイデン愛工OB BLITZ−三重スリーアローズ)、落差のあるカーブを武器とする糸川諒(久居農林高−四日市大−三重)、183センチの長身右腕・高田兼大(九州産業大附属九州高−九州産業大−福岡オーシャンズ9)、地元出身者の内山哲次郎(前橋工業高)と北井頌太(樹徳高−城西国際大−日本ウェルネススポーツ専門学校)です。堤、栗山を含めて、4月のオープン戦でじっくりと彼らの実力を見極めたうえで、どう1年間戦っていくかを考えていきたいと思っています。
今季、指揮官を務めるのが五十嵐新監督です。実は五十嵐監督とは、ロッテ時代に監督と選手という関係でした。現役時代の五十嵐監督は、決して華々しいプレーヤーではありませんでしたが、強肩が自慢のユーティリティープレーヤーとして鳴らしました。性格は、何事にも慎重なイメージがありましたね。じっくりと考えてから行動を起こすので、いい意味で人よりもワンテンポ違っていました。それが彼の長所でもあったのだと思います。その五十嵐監督が指揮官としてスタートを切るわけですが、もちろん私に遠慮は無用です。彼が思ったように、やってほしいと思います。
監督として何より大事なのは、決断力です。これは、野球界のみならず、どの競技においても、さらにはどの職場においても言えることだと思います。やはり、先頭に立つ者が迷っていては、組織はまとまりません。しっかりと決断をして、周囲に明確な方向指示をすることこそが、長として果たすべき役割なのです。五十嵐監督には、ぜひ決断力のある指揮官になってほしいですね。
さて、コーチとして1年目の昨季は悔しい思いをしましたから、今季こそはファンの皆さんと笑顔でシーズンを終えたいと思っています。選手を伸ばすには、勝つことこそが最も効き目のある薬。そして、それが地域貢献にもつながります。ぜひ、新生ペガサスに期待していただきたいと思います。
<八木沢壮六(やぎさわ・そうろく)プロフィール>:群馬ダイヤモンドペガサスコーチ
1944年12月1日、栃木県生まれ。作新学院高3年時の春、エースとしてセンバツに出場し、優勝する。卒業後、早稲田大に進学し、67年にドラフト1位で東京オリオンズ(現・千葉ロッテ)に入団した。先発の一角を担い、76年に15勝、77年には11勝をマークした。79年シーズン限りで現役を引退。その後はロッテ、西武(現・埼玉西武)巨人、阪神、東京ヤクルトなどでコーチを務める。2011年より群馬ダイヤモンドペガサス投手コーチに就任した。
昨季は前期こそ、7割という高い勝率で地区優勝を果たしたものの、後期は最下位に陥ってしまいました。そして、新潟アルビレックスBCとのプレーオフでもチームを立て直すことができずに連敗を喫し、球団創設以来、初めて地区優勝を逃したのです。では、前後期の差はどこにあったのか。最大の要因は投手力でした。安定感を見せていた前期とは一転、後期は踏ん張らなければいけないところでの失点が多かったのです。もちろん、投手陣だけのせいではありません。前期が非常に良かっただけに、選手には多少、気の緩みが生じたところもあったことでしょう。とにかく、全ての歯車がかみ合わなかったのです。
シーズン終了後には、創設以来4年間、指揮官を務めてきた秦真司前監督(現・巨人コーチ)、そして15名もの選手がこぞって退団しました。私自身、長い間、野球界で指導者をしてきましたが、これほど多くの選手がチームを去っていくのは初めての経験でした。これも、活発に新陳代謝が行なわれる独立リーグならではということなのでしょう。そんな中、投手陣で残ったのは、堤雅貴(高崎商業高)と栗山賢(日本文理高−鷺宮製作所)の若手2人です。
1年目からNPB入りを期待されてきた堤は、素質のあるピッチャーです。うまく調子を乗せられれば、自ずと勝ち星はついてきます。しかし、もう一段レベルアップを考えた時に課題となるのが、ボールの角度です。身長173センチと上背がない彼は、ボールそのものに角度がないため、フォークのような落ちるボールに落差をつけることができないのです。そこで重要なのがリリースの際のトップの位置を高くすること。これがボール1個分でも違うと、バッターの感覚は大きく変わります。そして、他の球種においては、常に低めにコントロールすること。そうしてバッターの目線を下げることで、落差を生み出すのです。
自主トレーニングを見ていると、堤は今のところ、フォームに大きなズレもなく、修正しなければならないような所は見受けられませんので、順調に仕上がってきているようです。どの球種でもストライクを投げられるようになることが先決ですが、今のフォームを崩さない程度にリリースのトップの位置を高くすることを、今季の課題の一つとして取り組むことを本人に提案できればと思っています。
新監督に求む、決断力
一方、昨季に入団した栗山は、前期は肩の調子がよくないこともあり、途中まで何試合かリリーフで投げただけでした。しかし、その肩が治り、前期終盤に初先発のマウンドを踏むと、後期には信濃相手に4安打完封勝ちまで収めたのです。結局、栗山は堤の7勝に次ぐ5勝(2敗)を挙げました。これには栗山も自信をもったことでしょう。彼に大きな変化をもたらせたのは、肩が回復してから取り組んだフォーム改造でした。もともと栗山はボールに力があり、ナチュラルに変化する、いわゆる“クセ球”と球質としてもバッターにとっては打ちづらいボールを投げます。ですから、きちんとストライクに投げられるコントロールさえあれば、十分に勝つことができます。
しかし、そのコントロールが課題だったのです。原因は右足にありました。これまでの栗山はリリースした後、着地する右足に重心がかかっていました。これがボールが抜けたりしてコントロールが乱れる最大の要因であり、また、肩にも負担がかかっていたのです。そこで、リリースした後、ステップした左足に重心をかけたままにし、右足が着地する際に重心がかからないように修正したのです。これによって、リリースの際にボールを最後まで持つことができるようになり、コントロールが安定したのです。今季はスタートから主力の一人として活躍してくれることを期待しています。
新戦力としては5名の投手が入団しました。MAX145キロ、右の本格派・清水信寿(豊田西高−中京大−エイデン愛工OB BLITZ−三重スリーアローズ)、落差のあるカーブを武器とする糸川諒(久居農林高−四日市大−三重)、183センチの長身右腕・高田兼大(九州産業大附属九州高−九州産業大−福岡オーシャンズ9)、地元出身者の内山哲次郎(前橋工業高)と北井頌太(樹徳高−城西国際大−日本ウェルネススポーツ専門学校)です。堤、栗山を含めて、4月のオープン戦でじっくりと彼らの実力を見極めたうえで、どう1年間戦っていくかを考えていきたいと思っています。
今季、指揮官を務めるのが五十嵐新監督です。実は五十嵐監督とは、ロッテ時代に監督と選手という関係でした。現役時代の五十嵐監督は、決して華々しいプレーヤーではありませんでしたが、強肩が自慢のユーティリティープレーヤーとして鳴らしました。性格は、何事にも慎重なイメージがありましたね。じっくりと考えてから行動を起こすので、いい意味で人よりもワンテンポ違っていました。それが彼の長所でもあったのだと思います。その五十嵐監督が指揮官としてスタートを切るわけですが、もちろん私に遠慮は無用です。彼が思ったように、やってほしいと思います。
監督として何より大事なのは、決断力です。これは、野球界のみならず、どの競技においても、さらにはどの職場においても言えることだと思います。やはり、先頭に立つ者が迷っていては、組織はまとまりません。しっかりと決断をして、周囲に明確な方向指示をすることこそが、長として果たすべき役割なのです。五十嵐監督には、ぜひ決断力のある指揮官になってほしいですね。
さて、コーチとして1年目の昨季は悔しい思いをしましたから、今季こそはファンの皆さんと笑顔でシーズンを終えたいと思っています。選手を伸ばすには、勝つことこそが最も効き目のある薬。そして、それが地域貢献にもつながります。ぜひ、新生ペガサスに期待していただきたいと思います。
<八木沢壮六(やぎさわ・そうろく)プロフィール>:群馬ダイヤモンドペガサスコーチ
1944年12月1日、栃木県生まれ。作新学院高3年時の春、エースとしてセンバツに出場し、優勝する。卒業後、早稲田大に進学し、67年にドラフト1位で東京オリオンズ(現・千葉ロッテ)に入団した。先発の一角を担い、76年に15勝、77年には11勝をマークした。79年シーズン限りで現役を引退。その後はロッテ、西武(現・埼玉西武)巨人、阪神、東京ヤクルトなどでコーチを務める。2011年より群馬ダイヤモンドペガサス投手コーチに就任した。