櫻井裕子(女子プロレスラー/愛媛県八幡浜市出身)最終回「初めて獲った賞とベルト」
櫻井裕子は、これまでのプロレス人生で辞めようと思ったことはないという。しかし、本人の希望とは別に事情が変わることだってある。
2021年11月、彼女が所属していた『アクトレス・ガールズ』は年内で女子プロレス団体としての活動終了と同時に団体内のユニット「Beginning」と「Color's」が解散することを発表した。後者は櫻井のほか、SAKI、清水ひかり、網倉理奈がメンバー。『アクトレス・ガールズ』が翌2022年から、<プロレスを用いたよりエンターテインメント性の高い公演へと移行>するためだ。
声優を目指していた櫻井が、会社の方針転換により、新生アクトレスに残留、またはプロレスラーを辞める決断をしてもなんらおかしくはない。だが、彼女の選択は違った。
「プロレスを始めて3、4年。“お試し期間”というには長かった。それにあの頃はレスラーとしての成長期だった。自分の中でもできることが増え、試合がより楽しくなっていたんです。また(Color'sの)SAKIさんは『もし残るなら残ってもいいし、外に出てプロレスを続ける場合、分からないこともあるだろうからサポートするから相談してね』と言ってくれました」
Color‘sは櫻井にとって「家族のような存在」だという。そこから離れるという選択肢はなかった。
一方のSAKIは当時のことをこう振り返る。
「(アクトレス・ガールズの)プロレス活動終了の話がある以前から私は今後のことで悩んでいた。裕子がそれを察してかは分からないのですが『私はSAKIさんについていきます』って言ってくれた。同じことをプロレス活動終了の際にも言ってくれて、裕子がプロレスを選んでくれたことが素直に嬉しかった」
Color'sの4人は新たに「COLOR'S」を結成し、『アクトレス・ガールズ』から離れて自主興行を開催することとなった。実質のフリー転向である。
櫻井はフリー転向後の転機に、2024年の女子プロレス団体『プロレスリングWAVE』が主催するシングルマッチ公式リーグ戦「CATCH THE WAVE2023」出場を挙げる。同じCOLOR’Sの清水ひかりのほか、『ディアナ』の梅咲遥ら4人と対戦した。1分け3敗に終わり、予選リーグ敗退。敗者復活戦も勝ち上がれなかったが、その年の敢闘賞を受賞した。
「賞状とトロフィーをいただきました。それまでプロレス以外も含めて賞状をもらったことがなかった。頑張ってきたことが、ひとつのかたちになった瞬間でした」
学生時代を含め、無縁だった勲章をプロレスラーとして手に入れた。2024年12月には、宮崎有妃と組んでWAVE認定タッグ王座を獲得した。デビューから6年で初の戴冠だった。
リングが檜舞台
櫻井はイソップ童話の「ウサギとカメ」のウサギのようにピョンピョンとスターダムを駆け上がっていったわけではない。どちらかに分類するならば、カメタイプだろう。現在、プロレスデビューから7年が経ち、着実に力は付けてきている。
再びSAKI。
「裕子は不器用なところもあって、でもそれを経験で補い力にしていった印象があります。私が想像した以上の選手になっていると思います。裕子のそばにいて、“なんとかなる”とか“仕方がない”の精神が常にあると感じています。常に気持ちがフラットなんです。嬉しい楽しいという感情はすぐに分かるけど怒っているところはあまり見たことがない。それもひとつの才能なんじゃないかなと思っています。『この技を練習してみようか』『この技の練習台になって』と提案すると、なんでも分かりましたと挑戦してみちゃう。本当に物怖じしないんです。新しい技を練習したい時はつい頼っちゃいます」
近年の女子プロレス界は、Netflixのドラム『極悪女王』のヒットや、女子レスラーのバラエティ番組出演などで、再び盛り上がりを見せている。2025年、東京スポーツが制定する「プロレス大賞」でSTARDOMの上谷沙弥が「最優秀選手賞(MVP)」と「女子プロレス大賞」の2冠を獲得した。女子のMVP受賞は初だった。
その上谷は櫻井と「CATCH THE WAVE2024」で対戦している。率直な気持ちを聞いた。
「(プロレス大賞受賞)悔しいという気持ちはないです。彼女はプロレス、特に女子プロレスを世間に知ってもらうために並々ならぬ努力をしていると思うので、とても尊敬しています。賞を受賞したからではなく、またどこかで対戦したい。そういう機会が生まれるように私も頑張りたいと思います」
現在もプロレスラーとしてリングに上がる続ける理由は何か。櫻井にプロレスの魅力について聞くと、こう答えが返ってきた。
「リング上では先輩後輩も関係ない1対1の勝負。最高に手が合った時、試合が終わったら“もう一度闘いたい”と思ってしまう。身体は痛いんですけど……」
闘争心の燃料は相手だけから得るものではない。
「試合中に“ヤバイ”というピンチの状況でも、お客さんやセコンドの声で、めっちゃ元気が出ます。ファンがいてくれるから私はプロレスラーでいられる」
目を輝かせながら、そう語った。
(おわり)
<櫻井裕子(さくらい・ゆうこ)プロフィール>
1991年8月28日、愛媛県八幡浜市出身。中学時代は吹奏楽部、高校時代は生物部に所属した。大学卒業後、アパレル会社に就職。2年勤めた後、声優を目指し、上京。声優事務所に所属後、アクトレス・ガールズに練習生として加入。18年11月に後楽園大会でデビュー。現在はフリーとしてwaveのリングを中心に上がっている。24年12月、宮崎有妃とのタッグでWAVE認定タッグ王座を獲得した。身長164cm。得意技はブレーンバスター・ホールド、ドラゴンスリーパー、コブラツイスト。好きな食べ物はアイス、メロンパン。
(文・プロフィール写真/杉浦泰介、その他の写真/本人提供)
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