全世界に衝撃を与えつつある彩艶のフィード

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 2週続けて同じテーマを取り上げることをお許しいただきたい。鈴木彩艶について、である。

 

 ブライトンと敵地で戦った開幕戦、アストンビラは0-4で敗れた。公式スタッツによれば、浴びたシュートは21本だった。

 

 続く第2戦、ビラはホームでアーセナルに0-1で敗れた。ハルと戦った第3戦は、0-0のスコアレスドローだった。

 

 結果的に、まだ鈴木彩はチームに勝利をもたらせていない。ただ、ファン、メディアは彼の登場によってチームが変わりつつあると感じており、また彼らの感触はスタッツによっても証明されている。

 

 初戦、ビラが21本のシュートを打たれたことはすでに述べた。だが、鈴木彩をスタメンに起用した第2戦以降、ビラの被シュート数は激減する。アーセナル戦で6本、ハル戦で11本、2試合合わせて17本である。

 

 もちろん、開幕戦のビラは試合途中でフィールドプレーヤー1人を失っており、人数の少ない状況が被シュート数を増加させたのは間違いない。ただ、鈴木彩が出場した2試合、合わせて17本という被シュート数は、昨シーズンのビラの1試合あたりの平均被シュート数11本に比べても明らかに少ないのだ。

 

 サッカーにおいて、シュート数が増える要因は何があるか。私は、ボール保持率と人数だと思っている。つまり、いかに長い時間、多くの人数で敵陣でのプレーを増やしていくか、である。

 

 攻撃の人数を増やすためには、当然、後方の選手も敵陣に進入する必要がある。ところが、ここで鈴木彩が利いてくる。

 

 彼のフィードは、あたかも最後尾のピルロ(元イタリア代表MF)かのように正確にポイントをついてくる。それも信じられないほどのロングレンジで。対戦相手としては、いやでも自ら背後を突かれるリスクを考慮しなければならない。必然的に、敵陣に進入しようとする意図にはブレーキがかかる。

 

 それが、鈴木彩を先発起用するようになってからの2試合、ビラの被シュート数が減少した最大の要因ではないかと私は思う。

 

 もちろん、まだたった2試合、単なるデータのブレである可能性は否定できない。それでも圧倒的ですらある鈴木彩のフィード力は、バーミンガムという地域を超えて、全英、いや全世界に衝撃を与えつつある。

 

 言うまでもなく、鈴木彩のフィード力は昨日今日、突如として上達したわけではない。少なくとも日本人のファンは、彼の卓越した能力をよく知っていたはずだった。

 

 だが、ビラでの鈴木彩は、パルマでの鈴木彩、日本代表での鈴木彩よりも、より危険な存在であるように私には見える。安全とリスクのバランスを、少しばかりリスク寄りに寄せたように思える。

 

 だとすれば、多くの人を驚かせている鈴木彩のフィード力は、エメリ監督との出会いによるところも大きかったかもしれない。監督によっては、ゴールキーパーのフィードに100%の安全しか求めない人もいる。そして、そういう指揮官の下であれば、鈴木彩の能力は封印されてしまう。

 

 だが、エメリ監督は鈴木彩の能力を解き放った。その信頼が、鈴木彩に安全とリスクのバランスを変えさせた。現時点での圧倒的高評価は、監督と選手の合作だと私はみる。移籍決定までにはごたごたもあった鈴木彩だが、ビラへの移籍、最高の決断だったと言えるのではないだろうか。

 

<この原稿は26年9月10日付「スポ-ツニッポン」に掲載されています>

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