MAX157キロのストレートがうなりをあげてキャッチャーミットを突き刺せば、決め球のスライダーはキュキュッと軌道を変える。巨人のドラフト1位ルーキー沢村拓一はキャンプ、オープン戦と結果を残し、開幕早々の先発デビューが濃厚だ。プロの一流打者とも真っ向勝負を展開する新人は、果たしてどんな活躍をみせるのか。豪速球右腕の1年目にかける思いと、意外な素顔に二宮清純が迫った。
二宮: 沢村選手のストレートはスピンがかかって、非常に質がいい。やはり、このボールが生命線だと?
沢村: ストレートが走らないと、変化球だけではどうしてもキツイ。変化球も大事だと言われますが、実際にピッチングの基本はストレートなので。

二宮: ブルペンでキャッチャーミットにボールが収まる音が小気味いいですよ。
沢村: あれはブルペンキャッチャーの方がうまく捕ってくれているだけです。たいしたボールは投げていません。プロのキャッチャーは本当にキャッチングがうまいので乗っていけます。ただ、「おっ、今日はいいボールなげているな」と勘違いすることもあるので、そこは気を付けます。

二宮: ブルペンよりも実戦で調子を上げていくタイプですか?
沢村: はい。ブルペンでいくら良くても、実際にマウンドで投げたらダメでは話にならない。実戦でたくさん投げて、自分の持ち味を出したいなと考えています。

二宮: 巨人の環境にはもう慣れましたか?
沢村: そうですね。僕が大学時代に見ていた巨人は本当にスター選手ばかり。新人では僕だけが1軍に帯同させてもらって最初は緊張しました。でも、皆さん素晴らしい方々で気さくに話しかけてくれるので本当にやりやすいです。積極的にコミュニケーションをとらせてもらっています。

二宮: 人気球団だけにファンの声援も多いでしょう?
沢村: 巨人はファンの数、世間の注目度も含めて別格だなと思います。球団の職員や選手の数も多い。いい環境でやらせてもらっていますよ。

二宮: 他球団を見ても同級生のいい選手がたくさんいます。ライバル意識はありますか?
沢村: 同じ大学日本代表で野球をやった仲間も多いので、“打たれろ”といった気持ちは全くないですね。心から“いいピッチングをしてほしい”と思っています。“アイツ、何やっているのかな”とニュースも見ますよ。お互いにいいピッチングをすることがベストですね。

二宮: 中央大の高橋善正監督は「大学時代から“プロに行きたい”という高い目標を持って練習していた」と褒めていましたよ。
沢村: 「沢村は練習する」と皆さんおっしゃっていますが、僕はそこまでやっているとは思わないです。ただ、朝、これだけはやると決めたことは、どんなに疲れていてもやります。自分の中で譲れない一線をつくって厳しくやらないと、それがマウンドに出てしまいますからね。

二宮: 実際にプロに入ってレベルの違いを感じた点は?
沢村: サインプレーにしても牽制にしてもプロとアマチュアでは違いますね。何よりミスをしない。僕もミスができないので、常にいい緊張感の中でプレーできています。

二宮: やはり理想は先発完投ですか?
沢村: そのこだわりはないです。大学時代はひとりで投げ切るしかないと思っていましたけど、巨人には後ろ(リリーフ)に素晴らしいピッチャーがたくさんいる。完投への意識は持ち続けながらも、まずは行けるところまで行くという気持ちで投げたいです。

二宮: 沢村選手はマウンドでの真剣な表情と、普段の笑顔とのギャップがいい意味で魅力のひとつですね。
沢村: 人気商売でもありますから、第一印象は大事だと思っています。笑う時は笑いますよ。でも、マウンドではニコニコしていても仕方がない。

二宮: 先輩から食事に誘われることも多いと思います。お酒は飲みますか?
沢村: 好きですね。もちろん一番は野球のことを考えているので、飲み過ぎないようには注意しています。ビール、焼酎、日本酒が好きです。苦手なのは白ワイン。甘いのは好きじゃないんです。

二宮: 好きな食べ物は?
沢村: 基本的に肉食系です。草食じゃない。

二宮: それは生き方としても?
沢村: 草食系なんて男じゃないですよ(笑)。考え方が古臭くて今時、流行らないと言われるかもしれないですけど、やはり存在感がある男は見ていてカッコイイ。巨人はそんな選手ばかりですね。

二宮: 最後に今季の目標を。
沢村: 1軍で1年間、チームに貢献することです。新人王とか個人の成績はあまり考えていません。遠い先のことより、目の前の目標をコツコツ達成していければと思っています。

<現在発売中の小学館『ビッグコミックスピリッツ』(2011年4月11日号)に沢村投手のインタビュー記事が掲載されています。こちらもぜひご覧ください。>