春季キャンプまで残り一週間を切りました。各球団の一、二軍の振り分けが発表され、今年のドラ1ルーキーからは平沢大河(千葉ロッテ)、オコエ瑠偉(東北楽天)、桜井俊貴(巨人)ら8人が一軍スタートに決まりました。
平沢は打撃練習に力を入れよ!
新人選手のなかで僕が最も期待している選手は、仙台育英高からドラフト1位でロッテに入団した平沢大河です。既に彼の打撃技術はかなり高いレベルにあります。昨年の甲子園を見ていて、中日にいた立浪和義のような選手になる可能性を感じました。
高卒の選手がプロの世界に入ると、まず打球の速さに驚きます。最初は守備力の差を痛感すると思いますが、守備は練習を重ねることで必ずうまくなります。彼は何よりも、自分の特徴であるバッティングを必死にやってほしいです。平沢に求めるのはこれだけです。
ロッテはサードの今江敏晃、セカンドのルイス・クルーズとレギュラークラスが移籍したので内野のポジションが空いています。チーム事情からすると、内野手の平沢がスタメンを掴むことは充分に考えられるでしょう。
1988年に立浪は高卒新人で「2番・遊撃手」での開幕スタメンを勝ち取りました。平沢が、この時以来となる28年ぶりの高卒新人開幕スタメンを掴めるか。18歳の若武者に注目です。
中日&巨人&阪神、セ3球団に期待の星
例年、パ・リーグは1年目から活躍する選手が多いですが、セ・リーグは少ない傾向があります。しかし、今年はセ・リーグに3人の注目ルーキーが入りました。
1人目は、巨人の桜井俊貴(立命館大)です。球種はそれほど多くありませんが、同じチームの澤村拓一のような力強いボールを投げます。昨年の神宮大会では18奪三振を記録。その時の映像を見ましたが、マウンド上で堂々たるピッチングを披露していました。“怖いもの知らず”という投球をプロのマウンドでも見せて欲しい。
桜井が1軍で活躍するためには、今よりもコントロールの精度を上げる必要があります。そのためには、下半身を鍛えてフォームのバランスを安定させることです。今は最速149キロですが、下半身を鍛えることで150キロ台も出るようになるでしょう。
2人目は、阪神の高山俊(明治大)。大学時代は通算127安打を放ち、東京六大学リーグの通算安打記録を48年ぶりに塗り替えました。彼は左打ちで広角にも打てるバッター。加えて長打力もあると聞いています。
春季キャンプは2軍スタートですが、阪神の2軍には掛布雅之新監督がいるので妥当な判断でしょう。同じ左打者で通算349本塁打を記録した掛布監督のもとで、プロとしての基礎を教わって欲しいです。将来は阪神のクリーンアップを担う選手に成長することを期待しています。
そして3人目は、中日の小笠原慎之介(東海大相模高)です。サウスポーながら直球は最速151キロを出します。しかし、ストレート以上に彼の魅力は、変化球のコントロールが素晴らしいことです。昨年の甲子園を見ていて、「変化球での打ち取り方」がすでに確立している印象を受けました。ここから更に成長するためには、緩急をうまく使える技術を身に付ける必要があるでしょう。
チーム一丸となって若手育成を!
小笠原選手が入団する中日は、山本昌さん、岩瀬仁紀、大野雄大が代表されるようにサウスポー育成に定評のある球団です。コーチだけでなく、ベテランが若手に積極的にアドバイスをする雰囲気もあります。それを物語るのが、大野が若手だったころのエピソードです。
直球を武器にする大野は今では中日のエースに成長しましたが、最初の頃は結果ばかり求めるがゆえにストレートを投げず、大人しいピッチングをしていました。これを指摘したのが、当時中日にいた井端弘和です。
「オマエ、なんで自分が一番自信のあるボールを投げないんだ?ストレートが良いのになぜだ?」
この言葉を受けて以来、大野は自分の武器であるストレートを思い切り投げられるようになりました。チーム内に彼のような経験をした先輩がいることは、小笠原にとってプラスになるでしょう。先輩から色んなことを吸収して欲しいですね。
桜井、高山、小笠原が所属するセ3球団の指揮官はいずれも40代と若いです。特に巨人・高橋由伸監督、阪神・金本知憲監督は監督1年目。彼らが素質のある新人選手たちをどう育てて、どう使うのか。そこも今シーズンの楽しみのひとつです。
佐野 慈紀(さの・しげき)
1968年4月30日、愛媛県出身。松山商−近大呉工学部を経て90年、ドラフト3位で近鉄に入団。その後、中日−エルマイラ・パイオニアーズ(米独立)−ロサンジェルス・ドジャース−メキシコシティ(メキシカンリーグ)−エルマイラ・パイオニアーズ−オリックス・ブルーウェーブと、現役13年間で6球団を渡り歩いた。主にセットアッパーとして活躍、通算353試合に登板、41勝31敗21S、防御率3.80。現在は野球解説者。
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