(写真:今年も子どもたちからパワーをもらった)
「復活したミヤマ☆仮面とクワガタ忍者で被災地を盛り上げにいこう」
僕は先月の『こどもの日』(5月5日)に息子と共に福島県南相馬に足を運んだ。今回の目的は、被災地支援のイベント『子どもまつり』に出演するためだ。
福島県浪江町は、5年が経った今も面積の8割が帰還困難区域のままなのだが、その隣に位置する南相馬のチビッコたちも外遊びが満足にできない状況が続いている。
未来を担う子どもたちに少しでもノビノビと元気に遊んでもらおうとNPO法人の『ピースプロジェクト』が立ち上がり、道の駅に隣接する大きな公園を貸しきって『こどもの日』にイベントを開催しているのである。
公園内に数多くの鯉のぼりを泳がせ、焼きそばなどのフードや玩具、遊具などを取り揃えていた。現地のチビッコたちを盛り上げようと多くのボランティアの方たちが手伝いにやってくる。
「あれ? もしかしてナオキックさん?」
ボランティア集団の中に見たことがある顔を見つけ、僕は驚いた。
元キックボクサーの「ナオキック」こと石川直生さんだった。
かつて『ゴング格闘技』や『格闘技通信』など専門誌に大々的に特集され、「ナオキック」という名称が興行名に付くほどファンから熱狂的に支持された人気選手であった。彼は現役中にモデルをやっていたこともあり、キックボクシングとファッションショーを融合した興行をプロデュースするなど異彩を放っていた。
(写真:10年ぶりの再会となったナオキックさん<右>)
「まさか南相馬で再会するとは……」
彼とは、過去に昆虫雑誌の取材で一緒にキャンプをした仲でもある。山梨の山中にテントを張り、クワガタ虫を採るという企画だったのだが、一緒に料理を作るなど想い出深い体験をした。ちなみにお洒落で都会派のナオキックさんは、昆虫好きでもアウトドアマニアでもない。
「いや~、息子がまだ3~4歳の頃だから、一緒にキャンプをしたのは10年前ぐらいかもしれませんね」
大きく成長した息子も交え、3人でその時の想い出話に花が咲いた。
しかし、10年ぶりの再会が南相馬というのが何とも面白い。お互い格闘技の業界にいながら後楽園など格闘技の会場ではなく、山梨や福島といった地方で会うというのが不思議で仕方がない。
「この(南相馬の)イベントではミットを持って、子どもたちに即席のキック教室をやろうと考えています」
ナオキックさんは、現役のキック選手を数名引き連れて、南相馬を訪れたという。
「垣原さん(ミヤマ☆仮面)の出番前にやりますね」
実際に子どもたちと触れ合っているところを拝見したが、これが驚くほど物腰が柔らかく、話す口調も優しい。それに理路整然と話をするところなど同じ格闘家とは思えなかった。
まるで体育の先生のようなのだ。
「実は2年前に引退してから、小学校などで『夢先生』というお仕事をしているんです」
この『夢先生』というのは、『JFAこころのプロジェクト』という組織が運営し、サッカー選手をはじめトップアスリートたちが所属している。
その彼らが、子どもたちに目標を持つことの素晴らしさ、それに向かって努力することの大切さ、フェアプレーや助け合いの精神を、子どもたちと語り合い、触れ合いながら伝えていく授業を行なっているという。
「なるほど! だからナオキックさんもそんなにトークが上手いのですね」
僕は彼の『夢先生』での活動を知り、ようやく腑に落ちた。
「垣原さんもやってみたらどうですか?」
包み込まれるようなソフトな語り口から、妙に説得力のある言葉で提案されると、つい自分もその気になってしまう。さすが『夢先生』である。
(写真:クワガタ忍者と共に昆虫ショーを披露した)
「自信はないけど興味は出てきましたよ」
僕は、子ども向けの昆虫イベントをスタートさせて丸10年となるが、このままではいけないという危機感を強く抱いている。その意味でも大きな勉強の場となりそうだ。
「役不足かもしれませんが、まずは面接だけでも受けにいってみようかな」
自分には向いていないと決め付けるのだけは避け、これからは苦手なことであっても真正面から、どんどんトライしていこうと思う。
「いや~、心の奥からフツフツと燃えてきた!」
被災地に立っていると与えられた命に改めて感謝の気持ちでいっぱいになる。
「南相馬で一番元気をもらったのは、子どもたちよりミヤマ☆仮面かもね」
青空に泳ぐ鯉のぼりを見ながら、息子の言葉に僕は大きく頷いたのであった。
(このコーナーは第4金曜日に更新します)
ミヤマ☆仮面は今週末、幕張メッセにて以下のイベントに出演いたします。
『次世代ワールドホビーフェア’16 Summer』
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