こっそり変更、“飛ぶ”統一球の謎
NPB(日本プロ野球組織)の公式戦で使用される統一球が今季から反発係数を高めていたにもかかわらず、開幕から2カ月半も公表されなかった問題が波紋を広げている。加藤良三コミッショナーは12日に行った会見で、仕様変更が発覚した前日まで「知らなかった」と発言。自らが主導して導入した統一球にもかかわらず、無責任な姿勢に終始した。14日に開催された12球団臨時代表者会議では第三者機関を設置して、この問題を調査することを決めたものの、加藤コミッショナーは改めて引責辞任を否定している。試合内容にも関わる重要な変更を“隠蔽”した上、トップが責任を明確にしないNPBに対し、選手会、ファンの反発はさらに強まりそうだ。(写真:加藤コミッショナーは「不祥事ではない」との認識だが……)
今季は開幕直後からホームランが急増し、2011年より導入された統一球が「変わった」との声は球場で数多く聞こえてきた。そういった意見を踏まえ、問題発覚前の6月3日に発売された『週刊大衆』(6月17日号)誌上で、二宮清純も以下のような見解を示していた。
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48試合で21本ということは、単純計算だが、144試合で63本ということになる。
横浜DeNAの主砲トニ・ブランコのホームラン数だ。一昨年16本、昨年24本のドミニカ人が今季、突然甦った背景には、いったい何があるのか。
「ボールが変わったんですよ」
ある球団のスコアラーは、あっさり言い切った。
「今年のボールはとにかく飛ぶ。昨年、一昨年の統一球を変更したことは、まず間違いない」
そこで近年の1試合あたりのホームラン数を調べてみた。
2010年 1.86本
2011年 1.09本
2012年 1.02本
2013年 1.48本(5月27日現在)
低反発の統一球、いわゆる“飛ばないボール”を使用していた11、12年と比べると、今季は明らかにホームラン数が増えている。「バッターが“飛ばないボール”に慣れたんだよ」という声もあるが、それなら2年目の昨季からホームランが増えてもよさそうなものだ。先のスコアラーが指摘したように、やはり「ボールが変わった」と見る方が自然だろう。
現場の声も紹介しておこう。
「風の影響もあるが、ボール自体が昨季までと明らかに違う。投手が気の毒だなと思う」(東京ヤクルト・小川淳司監督)
「今年のボールは飛ぶ。打った感触が軽い。昨年までのボールよりWBCのボール、WBCのボールより今年のボールが飛ぶといった感じでしょうか」(福岡ソフトバンク・内川聖一)
腑に落ちないのは、これだけの“証言”がありながら、統一球を導入したNPBが「統一球の仕様は変更していない」と言い張っていることである。
朝令暮改と批判されるのが嫌なのだろうか。前中日投手コーチの権藤博は「コミッショナーは説明責任を果たすべき」と迫っている。“飛ぶボール”“飛ばないボール”どちらがいいか悪いかの是非はともかく、うやむやなボール変更は将来に禍根を残しそうだ。
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統一球導入の背景には、「12球団が同じ条件でプレーする」「ホームランの“インフレ”を防ぐ」「国際大会に対応しやすくする」といった目的があった。だが、先のWBCでは代表選手が使用球の対応に苦労したばかりか、“うやむやなボール変更”でのホームラン増加で導入の理念は損なわれてしまっている。加藤コミッショナーのサインとともに、統一球に刻まれた汚点を拭い去る方法を見つけるのは容易ではない。