7日(日本時間)、ブラジルW杯に向けて米国で事前合宿中のサッカー日本代表はタンパでザンビア代表と国際親善試合を行ない、4対3で勝利した。前半、日本はザンビアの攻勢に押し込まれた。前半9分、MFクリストファー・カトンゴのゴールで先制されると、28分にはMFネイサン・シンカラに追加点を奪われた。反撃したい日本は40分、MF本田圭佑のPK弾で差を縮める。迎えた後半は日本が優勢に試合を展開し、28分にMF香川真司、30分には本田のゴールで逆転。44分にMFルバンボ・ムソンダに同点弾を奪われたものの、アディショナルタイムにFW大久保嘉人が決勝点を決めた。

 大久保、代表復帰後初ゴール(タンパ)
日本代表 4−3 ザンビア代表
【得点】
[日本] 本田圭佑(40分、75分)、香川真司(73分)、大久保嘉人(90分+1)
[ザ] クリストファー・カトンゴ(9分)、ネイサン・シンカラ(28分)、ルバンボ・ムソンダ(89分)

「(内容は)あまり良くないと思っている」
 アルベルト・ザッケローニ監督の言葉が、すべてを表していた。ザンビアは10年アフリカネーションズカップ王者で、W杯初戦で当たる“仮想コートジボワール”として最適の相手。そのチームに、日本は序盤から押し込まれ、攻撃も相手の組織だった守備を攻めあぐねた。

 日本はGK川島永嗣ではなくGK西川周作が先発した以外は、これまでのベストメンバーといえる布陣でW杯前最後のテストマッチに臨んだ。
 優勢に試合を進めたいところだったが、前半早々の9分、ザンビアに先制点を奪われる。右サイドからのアーリークロスをニアサイドで相手に逸らされ、ファーサイドに流れたボールをクリストファー・カトンゴに頭で押し込まれた。フィニッシュの場面ではDF内田篤人と西川がボールをお見合い。そのスキを、クリストファー・カトンゴに突かれた。自分たちのミスで招いた失点に、ザッケローニ監督は「試合の入り方がよくなかった」と苦い表情を見せた。29分には、CKからザンビアのトリックプレーで追加点を奪われた。右CKからのグラウンダーのパスを、ニアに飛び込んだ選手がスルー。最後はシンカラに右足でゴール左へ流し込まれた。

 反撃の糸口を見つけたい日本だが、横パスはつなげるものの、縦に入れたボールをことごとくカットされてかたちをつくれない。日本の特徴はザンビアに研究されていたように映る。それにも関わらず、日本はパスで崩すことにこだわっていた。香川などがシュートを余裕があってもパスを選択するシーンも見受けられた。だが、時には強引にでもシュートを打って、相手に警戒心を抱かせることも必要だろう。それはDFラインを押し下げることにつながり、日本の攻め込むスペースを増やすことになるからだ。

 日本にようやくゴールが生まれたのは40分、PA内で相手がハンドしたことで得たPKを本田が決めた。そこからは、サイドの崩しからシュートに持ち込むかたちも見えだしたが、1点ビハインドで試合を折り返した。

 最後のテストマッチということもあり、後半は開始からFW柿谷曜一朗に代えて大久保がピッチへ。14分にはDF森重真人、FW大迫勇也がそれぞれDF今野泰幸、MF岡崎慎司と交代で出場。22分には内田に代えてDF酒井宏樹が投入された。

 日本はボールを支配するものの、なかなかチャンスをつくれていなかったが、28分に同点弾が生まれた。香川が左サイドでパスを受けると、中央へ切れ込んでから右足でゴール前へクロス。これが飛び込んできた大久保に触れることなく、そのままゴールネットを揺らした。
 この2分後に本田が逆転ゴールを決める。流れの中で攻撃参加していたDF森重真人がPA内右サイド深くに進入し、巧みなフェイントからゴール前にクロス。これを本田が滑り込みながら押し込んだ。ようやくいい流れからゴールが決まり、あとはどのように勝利に近付いていくかが重要だ。

 33分には香川を下げてMF齋藤学が投入され、日本は5人目の交代。3対2のまま時間が経過し、日本が勝利を手中に収めたかに思われたが、44分、ルバンボ・ムソンダに同点弾を決められた。ムソンダのミドルシュートがブロックしたMF山口蛍の足に当たってコースが変わり、西川の頭上を越えてゴールに吸い込まれた。
 まさかの同点にスタジアムにどよめきが起きた。ところが、である。試合はこれでは終わらなかった。直後にMF遠藤保仁に代わって投入されたMF青山敏弘が、ファーストタッチでゴール前へロングフィード。反応した大久保が華麗なトラップから左足でゴールに突き刺した。大久保は2008年11月のシリア戦以来、約5年半ぶりの代表ゴール。滑り込みでW杯メンバー入りした男が、打ち合いにピリオドを打った。

 ザンビアはアフリカ特有のフィジカル能力を全面に押し出したサッカーを展開した。ルーズボールへの反応速度は、アジアではなかなかお目にかかれないレベルだった。距離があっても長い足を伸ばしてボールカットする。このような特徴は、コートジボワールにも通ずるものがあるはずだ。その意味で日本にとっては有意義なテストマッチだったといえるだろう。

 初戦のコートジボワール戦まであと1週間。「このチームを信頼しているし、どうすれば勝利に近づくのかを分かっている」と語った指揮官は、どのようにチームを勝利へ導くのか。ザックジャパンがいよいよ集大成となる舞台、ブラジルへと向かう。