世界の4強が出そろった。FIFAワールドカップブラジル大会のベスト4に駒を進めたのは、ブラジル、ドイツ、アルゼンチン、オランダ。いずれもサッカー大国であり、対戦カードは奇しくも「南米VS欧州」の構図となった。9日(日本時間)にはブラジル―ドイツの一戦が行われる。2002年日韓W杯決勝の再現カードだけに、激戦は必至である。

【攻守の要抜きで戦うブラジル】

 ブラジルに激震が起こったのはコロンビアの準々決勝終盤だ。FWネイマールがハイボールを処理しようとした際、DFフアン・スニガに背後からチャージを受けた。スニガのヒザがネイマールの背中を強打。背番号10は激痛に顔をゆがめて倒れ込み、担架に乗ってピッチを後にした。そのまま病院へ直行して受けた診断の結果は「腰椎骨折」。幸い、選手生命に別条はないものの、ネイマールは残り試合の欠場を余儀なくされた。今大会4ゴール、1アシストを記録していたエースの離脱は、セレソンにとって痛すぎる。

 さらに、コロンビア戦では主将のDFチアゴ・シウバが今大会2枚目の警告を受け、累積で準決勝は出場停止となった。ブラジルは攻守の要がいない中で、ドイツとの準決勝を戦わなくてはならない。

 ネイマールの代役には、MFウィリアンまたはMFベルナールの起用が取り沙汰されている。ただ、ウィリアンも練習中に腰を強打し、途中で練習を離脱した模様。ブラジルにとってはまさに泣きっ面に蜂だろう。このような現状である以上、代役にネイマールと同等の働きを期待するのは難しい。やはり、周囲の選手がこれまで以上のパフォーマンスで、エースの離脱を補うしかない。そこでカギを握りそうなのが、FWフッキだ。圧倒的な突破力と抜群のシュート力を誇り、ネイマールの対を成す存在といえるアタッカーだ。しかし、今大会は4試合に出場して、未だノーゴール。ドイツ戦ではチームを勝利に導く初ゴールを望まれている。また、フッキがゴールに近い位置でプレーしつづければ、ネイマールの代役へのマークも少しは緩まるはずだ。

 チアゴ・シウバの代わりは、どうやらDFダンテが務めることになりそうだ。ドイツのバイエルン・ミュンヘンに所属する30歳のCBは、レギュラーとしてクラブのブンデスリーガ制覇に貢献した。ダンテは身長189センチの長身で、空中戦の強さに定評がある。1対1の守りにも長け、前任者の穴埋めには最適だ。しかし、今大会はまだ出場がないため、コンビを組むDFダビド・ルイスとのコンビネーション不足など不安もある。試合までにいかに周囲との連係を高められるかもポイントになるだろう。

 満身創痍といえるセレソン。ファイナルへ辿り着くためには、文字通り一丸となって勝利を目指すことが求められる。

【理想は守護神が目立たない内容】

 ベスト16、準々決勝を戦ったドイツの選手で最も輝きを放っていたのは、GKマヌエル・ノイアーだ。安定したキャッチング力、驚異的な反応速度など、GKとしての能力は世界屈指。また、ノイアーはPA外でも非凡なプレーができる。相手がドイツのDFラインの裏へ出したボールに、PAを飛び出してクリアしてしまうのだ。ベスト16のアルジェリア戦では、ロングボールに抜け出したFWを、左サイドへ追い込み、最後はスライディングしながらクロスを足に当ててクリア。その活躍ぶりは、まさに守護神だった。

 ノイアーがゴール前に君臨していることで、ドイツのフィールドプレーヤーは攻撃に集中できるといっても過言ではないだろう。ボールを奪われてから速攻を仕掛けられれば、攻撃が慎重になり、最終ラインも低い位置に設定しても不思議ではない。だが、ドイツは常に最終ラインを高く保ち、積極的に縦パスやドリブルでゴールに迫る。これは、GKへの信頼があってこそできる戦い方ではないだろうか。

 そんな守護神の負担を軽くするために、攻撃陣はブラジル戦で早い時間帯で先制点を奪いたいところだ。守備陣は、高い個人技を誇るブラジルのアタッカー陣を、複数人で囲い込むなどの対策が重要だ。

 準決勝で、ノイアーのプレーが目立つのはドイツが苦境に立たされていることを意味する。ドイツとしての理想は、守護神が静かに勝利を見守られる戦い方だ。

(鈴木友多)