パラグアイ、ブラジル、ガーナ、チリまたはチュニジア。このコロナ禍にあって、よくぞこれだけの対戦相手を揃えたものだと思う。疑似W杯、とまではいかないものの、疑似コパアメリカもしくは疑似アフリカン・ネーションズカップの水準には十分に達している。

 

 対戦相手との交渉だけでなく、依然極めて強度の高い防疫対策をとっている日本国内での調整も簡単ではなかっただろう。まずは、日本サッカー協会や関係者の仕事に「あっぱれ」である。

 

 予選敗退を喫したとはいえ、パラグアイはアルゼンチンと敵地、ホームともに引き分けている。18試合を戦ってわずか12点しかあげられなかった得点力の低さが致命傷になったが、伝統の堅守は健在である。メッシですらこじ開けられなかった彼らの門を打ち破るのは、もちろん簡単なことではない。

 

 そして、6日に行われるブラジル戦。各々の試合ではてこずる場面も目立ったが、終わってみれば無敗で予選をクリアしており、日本にとっては相当な難敵となる。

 

 ただ、予選最下位に終わったベネズエラでさえ、敵地では残り23分までゴールを許さず、ホームでは残り19分までリードを奪っていた。日本が一泡吹かせる可能性は十分にある。

 

 気になるのは、すでに韓国入りしているブラジル代表について漏れ伝わってくる情報が、どう見てもバカンスモードのそれだということ。ネイマールが江南の高級クラブで120万円のシャンパンを開けた? およそ、緊張感のあるニュースではない。

 

 もちろん、そこはブラジル。いざ試合になればきっちりと実力を発揮してくるのだろうが、かといって、W杯のような本番モードでないこともほぼ間違いない。

 

 なので、ここは韓国に頑張ってもらい、ブラジルに火をつけてくれることを期待する。現時点では、ブラジルのメディアも今回のアジアツアーをバカンスモードとして捉えているふうだが、韓国相手にしょっぱい試合をやらかしたとなると、一気に風向きは変わるだろう。何しろ、サッカーが下手なことを「日本人のようだ」と表現するお国柄である。

 

 日本が対戦したいのは、ただのブラジルではなく、本気のブラジル。負けたらやばい、と尻に火がついた状態のブラジル。そんな相手とバチバチの試合をやってこそ、W杯のドイツ戦やスペイン戦へ向けての糧となる。というわけで、生まれて初めて思う。

 

 頑張れ、韓国。

 

 南米勢との2連戦が終わればキリンカップが待っている。2日のパラグアイ戦から中3日で4連戦というのも、なかなか体験できることではない。すべて国内での試合ではあるものの、あえて会場をすべて変え、選手たちを移動させる日程を組んだのも、本番を想定してのことだろう。どうせなら、ノエスタ(神戸)とパナスタ(大阪)ではなく、もう少ししんどい組み合わせにしてほしかった気はするが。

 

 過去の日本代表は、予選では攻撃的に戦いながら、本番になると極端に守備的なスタイルに切り替えることもあった。根底にあったのは、自分たちが、アジアが世界に通用するはずがないという思い込みである。

 

 そろそろ、そんな自虐史観には別れを告げたい――。

 

 なんて期待を持ちながら、6月の4連戦を見守ろうと思う。

 

<この原稿は22年6月2日付「スポーツニッポン」に掲載されています>


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