必ずしも未来に直結しているわけではない。それは、過去の歴史が証明している。ワールドユース。今で言うところのU-20W杯。第1回大会の優勝国はソ連だった。ガーナが優勝したこともあるし、前回大会の覇者はウクライナだった。89年、91年大会と連覇を果たしたポルトガルは、いまだ大人の世界では頂点に立つことができていない。

 

 だが、だからといって無意味というわけでもない。

 

 最多優勝6回を誇るアルゼンチンは、日本で行われた第2回大会のMVPだったマラドーナをはじめ、数多のスターをこの大会から巣立たせている(W杯本大会での優勝は86年のメキシコ以来、もう36年も遠ざかってしまっているが……)。

 

 W杯とは無縁だった時代の日本にとっても、この大会は重要だった。若年層ならば、日本でも本大会に出場できる可能性がある。本大会で勝ち進める可能性もある。大人には抱けない期待を、少年たちには寄せることができた。

 

 だが、ユース世代のサッカーが大人のサッカーより注目を集めてしまうのは、大人たちが弱いからこそ起こり得る事態である。実際、W杯出場の常連国となることで、日本人サッカーファンのU-20に対する関心は落ち着いていった。これは、ある意味正常な変化でもある。

 

 ただ、女子のサッカーに目を向けると、いささか気の毒な気持ちにもなる。

 

 コスタリカで行われていたU-20女子W杯で、日本は準優勝を飾った。前回大会の優勝に次ぐ、2大会連続の決勝進出だった。残念ながら決勝では小さなミスをスペインにつかれて完敗したが、勝っていれば史上初の大会連覇だった。日本はもちろん、世界のサッカー史上に残る快挙だった。

 

 ところが、これほどの躍進を見せたにもかかわらず、メディアの反応は何とも鈍かった。地上波で取り上げられることは少なく、新聞各紙の扱いも決して大きなものではなかった。

 

 理由は一つではないだろうが、わたしは、日本の女子がすでにフルカテゴリーのW杯を制していたことも関係していたのでは、と思う。大人では勝てない、だから……という図式が、日本の女子サッカーに関しては当てはまらないのだ。

 

 最初に書いた通り、若年層での結果は必ずしも大人の世界での成功を約束するものではない。しかも、女子サッカーの場合、若年層では大きな武器となる日本の俊敏性が、大人になると体格やパワーに封じられがち、という傾向もある。来年、オーストラリアとニュージーランドによる共同開催となる第9回大会で、日本が2度目の優勝を勝ち取るのは簡単なことではない。

 

 だが、そのことを踏まえてもなお、今回のコスタリカでの奮闘は、日本女子サッカー界にとって新たな宝となる可能性がある……というか、してほしい、とわたしは思う。

 

 なぜ閑古鳥の鳴いていたかつてのJSLは、Jリーグとなって人気爆発したのか。なぜW杯優勝後のなでしこは客を呼べたのか。

 

 レベルが上がったから、ではない。客を呼べる知名度を持った存在がいたから、だった。

 

 今回のU-20女子W杯、大会のMVPに選ばれたのはINAC神戸の18歳、浜野まいかだった。彼女は、得点王争いでも2位となり、シルバーブーツを獲得した。

 

 18歳でMVPとシルバーブーツ。これは、79年に日本でマラドーナがやったのと同じこと、でもある。

 

<この原稿は22年9月1日付「スポーツニッポン」に掲載されています>


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