プロ野球のクライマックスシリーズ(CS)が、8日に開幕する。セ・リーグは連覇を果たした東京ヤクルトへの挑戦権をかけ、リーグ2位の横浜DeNAと同3位の阪神が対戦。一方のパ・リーグもオリックスが連覇した。最終戦で逆転を許した2位の福岡ソフトバンクは、レギュラーシーズンのリベンジに燃え、3位の埼玉西武をホームに迎える。

 

 3季ぶりのCS参戦となったDeNAと、2季連続出場の阪神。2019年のファーストステージと同一カードだ。当時は阪神が2勝1敗でファイナルへ進出した。ただ今季の対戦成績で見れば、16勝9敗と勝ち越すDeNAが有利か。2位のアドバンテージで開催球場はすべて横浜スタジアムである。戦績を“ハマスタ”に絞れば、11勝2敗とさらに圧倒する最多安打の佐野恵太、打点リーグ2位の牧秀悟らで構成されるクリーンアップは破壊力十分。リーグナンバーワンの防御率(2.67)を誇る阪神の投手陣とて封じ込めるのは容易でない。

 

 今季のDeNAは打だけにあらず、投手陣も安定している。今永、大貫晋一の2ケタ勝利コンビに加え、伊勢大夢、入江大生、田中健二朗、エドウィン・エスコバー、山﨑康晃とブルペン陣は盤石だ。今季阪神戦の防御率は、伊勢と入江が0点台、田中と山﨑が1点台とほぼ完璧に抑えているため、接戦となればDeNAに分があるだろう。

 

 数字だけ見れば、阪神の圧倒的不利が窺える。強いて挙げるなら指揮官の経験か。今季限りで退任を明言している矢野燿大監督は指揮を執った4季中3季でCSを経験している。20年は2位に入ったが、CS中止のため、ほぼ皆勤賞と言っていい。一方、就任2季目の三浦大輔監督はCS初采配。短期決戦の経験の差が采配に現れるのかにも注目したい。

 

 7日に予告先発が発表され、DeNA今永、阪神・青柳晃洋のエース対決となった。今永は今季阪神に2勝2敗、青柳はDeNAに3勝1敗。まずは初戦、どちらが先に取るか。両エースによる投げ合いに期待大である。

 

 パはソフトバンクと西武がPayPayドームで対戦する。投手4冠の山本由伸、2季連続2ケタ勝利の宮城大弥ら先発投手が豊富なオリックスとのファイナルステージを見据えれば、できれば両チームとも2連勝で片をつけたいところだろう。ファーストステージはソフトバンクが有利と見る。7日に行われた試合前日記者会見で、西武・辻発彦監督はソフトバンクについて「打線はどこからでも得点が取れる。選手が欠けても、2番手、3番手が出てくる」と語っていたほど選手層が厚いからだ。

 

 規定打席到達者に3割バッターはいないが、チーム打率、総得点はソフトバンクがリーグトップである。今宮健太、柳田悠岐、アルフレド・デスパイネ、ジュリスベル・グラシアル、中村晃、牧原大成など打線にコマは揃っている。藤本博史監督は第1戦の先発に千賀滉大を指名。「一番信頼できる投手。千賀で1戦目を取りたい」と意気込んだ。2戦目は東浜巨、3戦目は石川柊太が予想されているが、どちらかに後半戦好調の板東湧梧を当てても面白い。

 

 要警戒なのは西武の一発攻勢か。今季リーグナンバーワンのホームラン数。特に今季ホームランキングの山川穂高には7発も献上している。辻監督が「彼が打てばチームは勢いに乗る。勝利に導いてくれると思います」と期待を寄せる主砲に、仕事をさせないことがファイナルステージ進出のカギを握る。先発のコマは揃っているだけに、レギュラーシーズン終盤に打たれたリリーフ陣の復活にも期待したいところだ。

 

 昨季は最下位に終わった西武が、今季3位に浮上できたのは投手陣の安定に依るものが大きい。「戦える投手陣ができてきた」と辻監督は胸を張る。チーム防御率2.75はリーグトップである。第1戦の髙橋光成が勢いを付ければ“下克上”もあり得る。指揮官は「必ず本領発揮してくれると思う」と明言。今季キャリアハイの12勝を挙げた右腕に託された。

 

(文/杉浦泰介)