20日、「プロ野球ドラフト会議 supported by リポビタンD」が行われ、高校通算68本塁打のスラッガー浅野翔吾(高松商)は阪神と巨人が、MAX157km右腕の荘司康誠(立教大)は東北楽天と千葉ロッテが競合した。抽選により交渉権を獲得したのは巨人と楽天。そのほかでは投打の二刀流・矢澤宏太(日本体育大)が北海道日本ハムに、社会人No.1投手の呼び声高い吉村貢司郎(東芝)が東京ヤクルトにドラフト1位で単独指名となった。今回のドラフトでは育成を含む計126人が指名された。

 

 前日までに巨人、広島、オリックス、福岡ソフトバンク、埼玉西武、日本ハム、楽天、中日、東京ヤクルトの9球団が1位指名を表明した異例のドラフト。1位の重複は浅野と荘司のみだった。いずれも“当たりくじ”を引いたのは指名を表明していた両チームだった。

 

 まず浅野を巡る争いは巨人vs阪神という伝統の一戦、“場外ラウンド”となった。抽選前の時点で、巨人・原辰徳監督は12分の1、阪神・岡田彰布監督はオリックス時代を含め、当たりくじを引く確率は8分の1といずれも“引き”は強くない。

 

 先手は原監督、後手・岡田監督。いずれも右手で抽選箱の中に手を入れた。<交渉権獲得>と書かれた紙を手にしたのは原監督。“当たり”を確信すると右拳を突き上げた。自身の連敗ストップのため、会場までの道筋を変え、靴を新調するなど運を引き寄せるための行動をした。「その効果があった」と笑った。

 

 原監督としては2008年(東海大相模高・大田泰示)以来、久々の“当たりくじ”を引き寄せた。指揮官が「一流の選手」と太鼓判を押す若きスラッガー。身長は171cmと小柄だが、今夏の甲子園で3発放ったパンチ力は十分だ。岸敬祐スカウトの評。

<高身長ではないがパワーがあり、広角に長打が打てる外野手。地肩が強く、脚力もあり走攻守の三拍子がそろう。大舞台に強くスター性があり、将来クリーンアップが打てる素材>

 

 右打ちの外野手として指名されたが、既にスイッチヒッターに挑戦しており、左打席でホームランも放っている。プロ入りに備え、既に内野の守備練習も行っているという。原監督は「胸を張って堂々とユニホームに袖を通してほしい。大手を広げて出迎えるので、何も不安なく門を叩いてください」と浅野にメッセージを送った。

 

 荘司の交渉権を掴んだのは、楽天の米田陽介球団社長。「すごくうれしい」と笑顔を見せると、控室で待つ石井一久GM兼監督も拍手で喜んだ。米田社長は荘司に向かって「エースとなる素質がある。東北で一緒に熱く盛り上げていきましょう」と呼びかけた。楽天は2位にも投手の小孫竜二(鷺ノ宮製作所)を指名し、即戦力級投手を揃えた。

 

 抽選で“当たりくじ”を引けなかった阪神とロッテは、右の強打者・森下翔太(中央大)、最速152km右腕の菊地吏玖(専修大)を指名した。残りの8球団は単独指名。高校生3人(広島・斉藤優汰=苫小牧中央、福岡ソフトバンク・イヒネ・イツア=誉、横浜DeNA・松尾汐恩=大阪桐蔭)、大学生5人(日本ハム・矢澤、中日・仲地礼亜=沖縄大、西武・蛭間拓哉=早稲田大、オリックス・曽谷龍平=白鷗大)、社会人1人(ヤクルト・吉村)だった。

 

 今季は「不作の年」などという声もあるが、プロに入ってからは前評判など関係ない。実力で見返し、のちに「当たり年」と呼ばれるのか。各選手の“成り上がり”に期待したい。

 

(文/杉浦泰介)

 

楽天1位、立教大・荘司康誠「一歩一歩成長したい」

 思いがけないタイミングだった。荘司康誠(立教大)を最初に指名したのは、事前に公表した楽天より2球団前のロッテ。名前が読み上げられると、中継画面には覚悟を決めた吉井理人監督の表情が映った。まもなく楽天も荘司を指名し、パ・リーグ2球団の重複となった。

 

 抽選にはロッテが吉井監督、楽天は米田陽介球団社長が臨んだ。抽選箱に一礼してから先に右手で引いた吉井監督、米田社長は左手で残りのひとつを引き上げた。開封後、渾身のガッツポーズを作ったのは米田社長。荘司の新天地は杜の都・仙台に決まった。

 

 2時間後、立教大学・新座キャンパスで荘司は会見に臨んだ。ブレザーに身を包んだ188センチの長身右腕は、時折表情を緩めながら丁寧に質問に答えた。「一番はホッとした気持ちが強い」。東京六大学リーグや大学日本代表での活躍が、プロから最上級の評価を得た。

 

 新潟明訓高時代は甲子園未出場。立教大でもケガの影響でリーグ戦デビューは3年春だった。荘司は自らの歩みをこう振り返る。「いわゆる野球エリートというような野球人生ではなかったが、それでも自分を信じてやってきたことが今に結びついていると思う」

 

「ドラフトにかかることは予想していたが、1位しかも重複になるとは……」と本音を明かしたのは立教大の溝口智成監督。指揮官はプロの世界に送り出す教え子について、「これからの成長を期待されての指名だと思う。我がチームの選手ながら非常に楽しみ」と、親心を見せた。

 

「(注目ポイントは)長身から投げる真っすぐ」。最後の質問に、荘司は歯切れよく答えた。晴れの席ではあるものの、終始そう感じさせない大物感を漂わせたまま会見は終わった。未完の大器の可能性を垣間見たような30分間だった。

 

(文・写真/古澤航)

 

 各球団の指名選手は以下のとおり。

 

◎セ・リーグ

東京ヤクルト
1位 吉村貢司郎 投手 東芝

2位 西村瑠伊斗 外野手 京都外大西高

3位 澤井廉 外野手 中京大

4位 坂本拓己 投手 知内高

5位 北村恵吾 内野手 中央大

育成1位 橋本星哉 捕手 中央学院大

 

横浜DeNA
1位 松尾汐恩 捕手 大阪桐蔭高

2位 吉野光樹 投手 トヨタ自動車

3位 林琢真 内野手 駒澤大

4位 森下瑠大 投手 京都国際高

5位 橋本達弥 投手 慶應義塾大

育成1位 上甲凌大 捕手 四国IL・愛媛
育成2位 鈴木蓮 内野手 滋賀学園高
育成3位 今野瑠斗 投手 東京都市大塩尻高
育成4位 渡辺明貴 投手 BC・茨城
育成5位 草野陽斗 投手 東日本国際大附属昌平高

 

阪神
1位 森下翔太 外野手 中央大

2位 門別啓人 投手 東海大付属札幌高

3位 井坪陽生 外野手 関東第一高

4位 茨木秀俊 投手 帝京長岡高

5位 戸井零士 内野手 天理高

6位 富田蓮 投手 三菱自動車岡崎

育成1位 野口恭佑 外野手 九州産業大

 

広島
1位 斉藤優汰 投手 苫小牧中央高

2位 内田湘大 内野手 利根商業高

3位 益田武尚 投手 東京ガス

4位 清水叶人 捕手 高崎健康福祉大高崎高

5位 河野佳 投手 大阪ガス

6位 長谷部銀次 投手 トヨタ自動車

7位 久保修 外野手 大阪観光大

育成1位 名原典彦 外野手 青森大
育成2位 中村貴浩 外野手 九州産業大
育成3位 辻大雅 投手 二松学舎大附属高

 

巨人
1位 浅野翔吾 外野手 高松商業高

2位 萩尾匡也 外野手 慶應義塾大

3位 田中千晴 投手 國學院大

4位 門脇誠 内野手 創価大

5位 船迫大雅 投手 西濃運輸

育成1位 松井颯 投手 明星大
育成2位 田村朋輝 投手 酒田南高
育成3位 吉村優聖歩 投手 明徳義塾高
育成4位 中田歩夢 内野手 東奥義塾高
育成5位 相澤白虎 内野手 桐蔭学園高
育成6位 三塚琉生 外野手 桐生第一高
育成7位 大城元 外野手 未来沖縄高
育成8位 北村流音 投手 桐生第一高
育成9位 森本哲星 投手 市立船橋高

 

中日
1位 仲地礼亜 投手 沖縄大

2位 村松開人 内野手 明治大

3位 森山暁生 投手 阿南光高

4位 山浅龍之介 捕手 聖光学院高

5位 濱将乃介 内野手 日本海オセアン・福井

6位 田中幹也 内野手 亜細亜大

7位 福永裕基 内野手 日本新薬

育成1位 松山晋也 投手 八戸学院大
育成2位 野中天翔 投手 ノースアジア大明桜高
育成3位 樋口正修 内野手 BC・埼玉武蔵

 

◎パ・リーグ

オリックス
1位 曽谷龍平 投手 白鷗大

2位 内藤鵬 内野手 日本航空石川高

3位 齋藤響介 投手 盛岡中央高

4位 杉澤龍 外野手 東北福祉大

5位 日髙暖己 投手 富島高

育成1位 西濱勇星 投手 BC・群馬
育成2位 才木海翔 投手 大阪経済大
育成3位 入山海斗 投手 東北福祉大
育成4位 茶野篤政 外野手 四国IL・徳島
育成5位 村上喬一朗 捕手 法政大

 

福岡ソフトバンク
1位 イヒネ・イツア 内野手 誉高

2位 大津亮介 投手 日本製鉄鹿島

3位 甲斐生海 外野手 東北福祉大

4位 大野稼頭央 投手 大島高

5位 松本晴 投手 亜細亜大

6位 吉田賢吾 捕手 桐蔭横浜大

育成1位 赤羽蓮 投手 霞ケ浦高
育成2位 山下恭吾 内野手 福岡大附属大濠高
育成3位 木村光 投手 佛教大
育成4位 内野海斗 投手 武田高
育成5位 岡植純平 投手 飾磨工業高
育成6位 佐々木明都 投手 学法松韻学園福島高
育成7位 水口創太 投手 京都大
育成8位 宮﨑颯 投手 東京農業大
育成9位 重松凱人 外野手 亜細亜大
育成10位 前田純 投手 日本文理大
育成11位 佐藤航太 内野手 八戸学院光星高
育成12位 飛田悠成 内野手 金沢高
育成13位 西尾歩真 内野手 中京学院大
育成14位 盛島稜大 捕手 興南高

 

埼玉西武
1位 蛭間拓哉 外野手 早稲田大

2位 古川雄大 外野手 佐伯鶴城高

3位 野田海人 捕手 九州国際大付属高

4位 青山美夏人 投手 亜細亜大

5位 山田陽翔 投手 近江高

6位 児玉亮涼 内野手 大阪ガス

育成1位 野村和輝 投手 日本海オセアン・石川
育成2位 日隈モンテル 外野手 四国IL・徳島
育成3位 三浦大輝 投手 中京大
育成4位 是澤涼輔 捕手 法政大

 

東北楽天
1位 荘司康誠 投手 立教大

2位 小孫竜二 投手 鷺宮製作所

3位 渡辺翔太 投手 九州産業大

4位 伊藤茉央 投手 東京農業大北海道オホーツク

5位 平良竜哉 内野手 NTT西日本

6位 林優樹 投手 西濃運輸

育成1位 辰見鴻之介 内野手 西南学院大
育成2位 古賀康誠 投手 下関国際高
育成3位 竹下瑛広 投手 函館大
育成4位 永田颯太郎 内野手 国立台湾体育運動大

 

千葉ロッテ
1位 菊地吏玖 投手 専修大

3位 友杉篤輝 内野手 天理大

3位 田中晴也 投手 日本文理高

4位 髙野脩汰 投手 日本通運

5位 金田優太 内野手    浦和学院高

育成1位 吉川悠斗 投手 浦和麗明高
育成2位 白濱快起 投手 飯塚高
育成3位 勝又琉偉 内野手 富士宮東高
育成4位 黒川凱星 内野手 学法石川高

 

北海道日本ハム

1位 矢澤宏太 投手 日本体育大

2位 金村尚真 投手 富士大

3位 加藤豪将 内野手 米・メッツ3A

4位 安西叶翔 投手 常葉菊川高

5位 奈良間大己 内野手 立正大

6位 宮内春輝 投手 日本製紙石巻

育成1位 藤田大清 外野手 花咲徳栄高
育成2位 中山晶量 投手 四国IL・徳島
育成3位 山口アタル 外野手 テキサス大タイラー校
育成4位 山本晃大 投手 BC・信濃