プロ野球の日本シリーズ第7戦が東京・神宮球場で行われ、オリックスが東京ヤクルトを5-4で破った。これで通算成績を4勝2敗1分けとし、1996年以来、26年ぶりの日本一に輝いた。MVPには好守で活躍を見せた杉本裕太郎が選ばれた。優秀選手賞は、2試合の先発でゲームをつくった山﨑福也、第5戦サヨナラ弾の吉田正尚、ヤクルトからはトップバッターとしてチームを牽引した塩見泰隆が選ばれ、敢闘賞には2本塁打、8打点のホセ・オスナ(ヤクルト)が選ばれた。ヤクルトは第3戦までで2勝1分けと優位に運びながら逆転を許し、球団初の日本シリーズ連覇を逃した。

 

◇日本シリーズ第7戦

 胴上げ投手ワゲスパック、4勝に貢献するMVP級の活躍(オリックス4勝2敗1分け 神宮)

オリックスバファローズ

5=100|040|000

4=000|000|040

東京ヤクルトスワローズ

勝利投手 宮城(1勝1敗)

敗戦投手 サイスニード(1敗)

セーブ  ワゲスパック(1勝3S)

本塁打 (オ)太田1号ソロ

    (ヤ)オスナ2号3ラン

 

 絶対的エースの離脱、1敗1分けからの本拠地初戦を落とすなど、窮地に追い込まれたオリックスが逆転で日本一に輝いた。第7戦も中嶋聡監督の“ナカジマジック”が冴えを見せた。

 

 レギュラーシーズンを含め“猫の目打線”と呼ばれるほぼ日替わりのオーダーで臨んできたが、先発投手以外は第6戦と同じ陣容で挑んだ。1番に起用された太田椋が早速期待に応えた。「積極性が欲しいところでバンバン振っていけるバッターを起用しました」と中嶋監督。その太田はヤクルト先発サイスニードの初球を、バックスクリーンに叩き込む先頭打者アーチ。オリックスが幸先良く先制した。

 

 初回に援護点をもらった宮城大弥はその裏を三者凡退に切って取った。シーズン中はなかった中4日、そして神宮初登板ながら好スタートを切った。2回の一、二塁のピンチも8番・長岡秀樹をショートゴロに打ち取った。

 

 追加点は思わぬかたちで転がり込んできた。先頭の8番・伏見虎威がヒットで出塁すると、続く宮城は送りバント。三塁方向に飛んだゴロはチャージをしたサード村上宗隆の横を抜け、内野安打となった。太田も送りバントが内野安打となり、無死満塁の大チャンスをつくった。

 

 2死となった後、打席には吉田が立った。するとサイスニードの初球が吉田の右肩付近を襲うデッドボール。押し出しでオリックスに追加点が入った。続く杉本はセンターへ弾き返したが、塩見が落下点に入り、スリーアウトチェンジかと思われた。ところが塩見はまさかの後逸。走者一掃で、この回一挙4点が入った。

 

 宮城は6回の攻撃で代打を出されたため、5回でお役御免となったが、無失点で試合をつくった。指揮官も「素晴らしいピッチングをしてくれた」と称えた。6回からは自慢のリリーフ陣が登場だ。まずは3試合に登板し、防御率0.00とシリーズのキープレーヤーとなっている宇田川優希。1死後、3番・山田哲人を歩かせたが、村上を150kmを超す力強い直球で押し、見逃し三振。オスナをレフトフライに仕留めた。

 

 宇田川は回跨ぎの2イニング目。1死からドミンゴ・サンタナにヒットを許し、守備の乱れから得点圏に進まれた。このピンチにも23歳の剛腕は慌てない。長岡は力勝負でレフトフライに抑えた。続く代打の青木宣親はストレートで追い込み、最後は落差の大きいフォークで空振りを誘った。

 

 8回裏は同じくシリーズ無失点の山﨑颯一郎がマウンドに。しかし山﨑は塩見、丸山和郁に連打を浴びた。山田は空振り三振に切ったものの、迎えるは4番の村上だ。17打席ノーヒットの若き主砲に力勝負を挑んだが、ライト前ヒットを打たれ、1点を返された。さらに続くオスナにはレフトスタンドへ放り込まれ、1点差まで迫られた。

 

 一気にヤクルトに傾きかけた流れをシャットアウトしたのが、ベテランの比嘉幹貴だ。39歳の変則右腕もこのシリーズ4試合に登板し、防御率0.00を誇る。比嘉は中村悠平から空振り三振を奪うと、サンタナをピッチャーゴロに仕留めた。

 

 最終回のマウンドは第3戦から抑えを任されているジェイコブ・ワゲスパックの出番だ。日本シリーズ無失点の長身右腕は先頭の長岡をセンターフライに打ち取り、まずワンアウト。続く代打・内山壮真は第2戦で同点3ランを放っている切り札だが、スライダーを2球続けてレフトフライに抑えた。

 

 最後のバッター塩見にはストレートで押した。カウント1-2と追い込み、空振り三振に切って取った。このシリーズ5試合に登板し、1勝3セーブ、防御率0.00と大活躍の助っ人はグラブを宙に投げ、キャッチャーの若月健矢と抱き合った。

 

 オリックスとしては四半世紀以上ぶりの日本一。当時選手だった中嶋監督は「選手たち全員で勝ち取った優勝」と中嶋監督が振り返ったように総力戦で掴んだ日本一だ。日替わり打線に加え、7試合で先発投手は5回前後で降ろし、ブルペン陣を惜しげもなく投入した。その一方で第4戦に回跨ぎで好投した宇田川、山﨑颯を翌日ベンチから外し、休ませるなど卓越のマネジメントを見せた。

 

 休養十分の宇田川、山﨑颯は第6戦からフル回転。この日の第7戦で山﨑颯は打たれたが、宇田川、比嘉、ワゲスパックは無失点のまま、シリーズを戦い抜いた。3人は表彰こそされなかったものの、誰もがMVPを取ってもおかしくないと思える大活躍だった。

 

(文/杉浦泰介)