(写真:2団体統一王者となり、リング上でインタビューに応える寺地)

 1日、ボクシングのダブル世界戦がさいたまスーパーアリーナで行われた。WBC&WBAスーパー世界ライトフライ級王座統一戦はWBC王者の寺地拳四朗(BMB)がWBAスーパー王者の京口紘人(ワタナベ)を7ラウンド2分23秒TKOで破り、2団体統一を果たした。WBO同級タイトルマッチは王者ジョナサン・ゴンサレス(プエルトリコ)が挑戦者の岩田翔吉(帝拳)に判定勝ち。2度目の防衛に成功した。

 

 10年ぶりの日本人王者同士による統一戦は壮絶な“どつき合い”となった。勝者は緑(WBC)のベルトを持つ寺地。黒(WBA)のベルトを手にし、狙いを定める4団体統一に一歩近付いた。

 

 京都出身の寺地、大阪出身の京口はアマチュア時代に対戦経験がある。対戦成績は2学年上の寺地の3勝1敗。その後は互いにプロ転向し、世界王者に就いた。寺地はWBCを8度防衛、京口は無敗のまま2階級制覇を果たした。プロデュー後もスパーリングで拳を交えたことはあるが、プロでの公式戦初対決が統一戦となり、注目を集めた。

 

 序盤からペースを握ったのは寺地だ。左の突き刺すようなジャブで間合いを制し、機を見て右やワンツーを当てた。ガードを固めながら前に詰める京口より手数で上回った。ジャッジペーパーで序盤の4ラウンドを確認しても、3人のジャッジがフルマークで寺地に付けている。すると5ラウンド、試合は動いた。寺地の右ストレートが京口を襲う。後ずさりするようにキャンバスに尻餅をついた。

 

 このまま一方的な展開になるかと思われたが、京口が息を吹き返し、反撃に出た。寺地をロープ際まで追い詰め、ラッシュを仕掛ける。「記憶はあまりない。トレーニングでやってきたことが出たのだと思います」と京口。打ち合う2人にさいたまスーパーアリーナに詰め掛けた1万人を超える観衆は大いに沸いた。

 

 6ラウンドは小康状態に入る。寺地は「距離を取れるなと思い、一旦休憩した」と振り返った。直前のインターバルで打ち合いになったことを反省。セコンドの加藤健太トレーナーは5ラウンド終了時のやり取りを明かした。

「本人が『やっちゃった』ということを言っていたので、『そんなことないよ。プラン的にはいいんだよ。ただ、よく見てやればいいんだよ』と声を掛けました」 

 

 プランは間違っていない――。冷静さを取り戻した寺地が自分の距離で戦った。決着は7ラウンド。終盤にワンツーでグラついた京口を、寺地が右ストレートで仕留めた。京口はロープにもたれかかるようにしてダウン。駆け寄ったレフェリーが試合を止め、寺地は京口にプロ初黒星を付けた。リング上のインタビューでは、「ぜひ次やりましょう」とWBO王座を防衛したゴンサレスに“ラブコール”を送った。

 

 試合後の記者会見でファンへのコメントを求められると、「もっとレベルアップして4団体統一まで絶対行けるという自信があります。加藤トレーナーと一緒になって強くなっていく。これからも僕に期待してくれればうれしいです」と語った。緑、黒、次に狙うは赤茶(WBO)か赤(IBF)のベルト。“ラブコール”を送ったゴンサレスは、先に行われた試合後に「(統一戦の)勝者と日本で対戦したい」と口にしている。次戦への期待は高まるばかりだ。

 

(文・写真/杉浦泰介)