10日、ボクシングの世界バンタム級4団体王座統一戦(13日・有明アリーナ)の記者会見が横浜市内で開かれ、WBAスーパー&IBF&WBC王者の井上尚弥(大橋)とWBO王者のポール・バトラー(イギリス)らが出席した。

 

 壇上にはWBA、IBF、WBC、WBOと4団体のベルトが並んだ。「いよいよという気持ち」と冒頭に述べた井上。男子として史上9人目、バンタム級では初となる4団体統一は、「バンタム級No.1を示す。自分にとって必要なこと」であり、「待ち望んでいた試合」だ。本人曰く「試合で黒くしたのは21歳以来」という黒髪で記者会見に臨んだ。その理由を問われると、「髪の色はその時の気分やテンションが表れるものですが、初心に戻ろうと思って」と答えた。

 

 半年前、井上はさいたまスーパーアリーナでノニト・ドネア(フィリピン)を倒し、WBCのベルトを獲得。4団体統一にリーチをかけた。今回の試合を「バンタム級最終章」と位置付けている。対戦相手のバトラーは「(4団体統一は)イングランド出身、バンタム級で初。自分にとって大きな意味のある戦い」と意気込む。34歳のWBO王者はプロでの試合数は井上を上回るが、WBO王者としては初防衛戦となる。

 

 この試合に向け、井上は9月に約2週間、アメリカ・ロサンゼルスで合宿を行ってきた。仕上がりも順調のようで、大橋秀行会長は「前回の(ノニト・ドネア戦より1.5倍強くなった印象。そのスピードとパンチ力は、1ラウンドから火を噴く」と期待を寄せる。井上自身は「バトラーはドネアと違い、12ラウンドフルに使って戦ってくる。倒す準備もしていますが、長引いた場合の準備もしている」と“両構え”で試合に臨む。

 

 今月8日の公開練習でバトラー陣営が「井上にはディフェンスに弱点がある」とコメントした。井上はそのことついて聞かれると、こう答えた。
「ディフェンスを徹底したら一発ももらわない自信がある。倒しにいく分、被弾することもあると思いますが、本当はディフェンスが得意というところを見せていければ」

 

 “モンスター”と呼ばれる男のバンタム級最終章の舞台は東京オリンピック・パラリンピック競技会場として新設された有明アリーナ。ボクシング世界戦初開催となる会場で、どんなエンディングを迎えるのか。WBO王者は転級前の通過点に甘んじるのか。ゴングは3日後の夜、打ち鳴らされる。

 

(文・写真/杉浦泰介)