11日、キックボクシングイベント『MAROOMS presents KNOCK OUT2022 Vol.8』が東京・後楽園ホールで行われた。4つのタイトルマッチが実施され、KNOCK OUT-REDスーパーフェザー級は17歳の久井大夢(TEAM TAIMU)、同スーパーフライ級は心直(しんた=REON Fithing Sports Gym)、同スーパーウェルター級はクンタップ・チャロンチャイ(タイ)、KNOCK OUT-BLACKスーパーバンタム級は古木誠也(G1 TEAM TAKAGI)が新たにベルトを巻いた。そのほかでは愛媛県北宇和郡出身の大谷翔司(スクランブル渋谷)が再起戦をKO勝利で飾った。

 

 団体のエースに名乗り

 

 試合前、「圧倒的に勝つところを見てほしい」「ベルト獲るのは当たり前。僕が格闘技の中心になります」と豪語していたプロ3戦目の17歳が鮮やかKO勝ち。初代KNOCK OUT-REDスーパーフェザー級のベルト手に入れた。

 

 久井はKNOCK OUTアマチュア・アダルト3階級制覇(65kg、60kg、55kg)を果たし、今年4月にプロデビュー。ここまで2連続KO勝ちと勢いに乗る。

 

 対戦相手の新田宗一朗(クロスポイント吉祥寺)はJAPAN KICKBOCING INNOVATIONスーパーフェザー級王者。年齢は9歳上、身長は9cmの相手にも久井は強気な姿勢を崩さない。前日の公開計量後の記者会見で「しょうもない試合をする奴がチャンピオンになるのはよくない。オレがなった方がおもろいので絶対チャンピオンになります」と挑発的な物言いだった。

 

 この日のリング上では、獰猛な野獣のようだった。向かい合った時点で目をギラつかせていた久井はゴングと同時に飛びつくように殴りかかった。鋭い左のブローはリングサイドの観客から「稲妻のようだ」と感嘆の声がこぼれたほど。1ラウンドから押し気味進めた。

 

 すると2ラウンドに試合が動いた。30秒が経過したところで左でダウンを奪う。新田の反撃も許さず、すぐさま2つ目のダウン。そして3つ目のダウンでトドメを刺した。スリーノックダウンでKO勝ち。相手にほぼつけ入る隙を与えない完勝だった。

 

 試合後のマイクでは「関係者の皆様、3戦目でこんなチャンスをくれてありがとうございます」と語り、こう続けた。
「これからの格闘技は久井大夢です、そしてKNOCK OUTです。僕がKNOCK OUTを大きくして、いろいろな選手から『KNOCK OUTに出たい』『久井大夢と戦いたい』と思われる選手になります」

 

 宮田充プロデューサーは「今日の勝ちっぷりは一番インパクトがあったと思う」と17歳の新星を称えた。
「ああいう選手がイベントを引っ張っていく。マイクも立派だった。我々としては大事に育てていく。ポテンシャルは最高。あとは身体がどう大きくなっていくか」
 イケイケなキャラを含め、スター性は十分。KNOCK OUTのエースに名乗りを上げた男の今後に注目である。

 

 引き出しを見せた再起戦

 

 久井を含め4人の新王者が誕生した後楽園ホール。再起を図るファイターも参戦した。自衛隊徒手訓練隊出身の大谷だ。7月に後楽園ホールで行われた『KNOCK OUT2022 Vol.4』では梅野源治(PHONEX)とメインイベンターを務めた男は、この日の第3試合。前日の公開計量で「悔しい気持ちもありますが試合順は関係ない。いつもと変わらずKO勝利だけ意識している」と話していた。

 

 梅野戦で肘打ちを食って左眉付近に裂傷を負った大谷は、2週間後にロードワークや対人以外の打撃練習などトレーニングを始めていたという。試合に向けては「引き出しが今まで少なかったので、上下の散らしや多彩な攻撃を意識した」と得意のパンチだけでなく、蹴りやコンビネーションを磨いた。

 

 その成果が、この日の試合に表れていた。1ラウンドは左ミドル、右のカーフキックを中心に攻めた。庄司啓馬(TEAM TEPPEN)のパンチを食うこともあったが、クリーンヒットというほどではなかった。最初の3分間は試運転のように映った。

 

 2ラウンド目も左ミドルで相手の脇腹を打ち、バチンと快音を響かせた。庄司の右脇腹が赤く染まる。蹴りでガードを下げさせれば、得意のパンチが生きていく。右でダウンを奪うと、ラッシュで仕留めた。2ラウンド1分24秒KO勝ちで再起戦を飾った。

 

「梅野選手との試合、一皮剝ける場面で、落としてしまった弱い自分を変えるために環境を変えました」
 勤めていたバーを辞め、所属するスクランブル渋谷で会員に指導を行い、パーソナルトレーナーも務める。Youtube開始を明らかにした。チャンネル開設はまだだが、既に1本は撮り終えているという。

 

「SNSをチェックしてもらえれば、うれしいです」と大谷。「これからの成長をリングで見せられるように頑張っていきますので、今後とも大谷翔司のリング内外での活動に注目してください」とマイクでアピールした。

 

 KNOCK OUTでライト級王座を保持するのはBLACKがバズーカ巧樹(菅原道場)、REDが重森陽太(伊原道場稲城支部)だ。大谷はいずれも対戦経験があり、バズーカに1勝1敗、重森には1敗。再びライト級戦線上位へ浮上するために、次戦以降の戦いが重要になる。

 

(文・写真/杉浦泰介)

 

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