みなさん、お久しぶりです。サッカーカタールW杯特別編成のため、1回分休みとなりましたが、また今月からコラム再開となります。それにしてもサッカー日本代表の健闘はすごかった。クロアチアに勝利していれば100点満点でしたが、それでも我々を楽しませてくれましたね。さあ、野球界も負けていられません。現役ドラフトなどなど、来季の楽しみにつながる動きを中心に語っていきましょう。

 

 移籍初年度はチャンス

 

 出場機会に恵まれず、くすぶっている選手たちにチャンスが巡ってくる現役ドラフトなる制度が作られました。初年度ということもあり「海の物か山の物か……」と思う面もありますが、これは興味深い取り組みだと思います。

 

 目玉は東北楽天から巨人に移籍したオコエ瑠偉でしょう。楽天には辰己涼介、島内宏明らレベルの高い外野手がいたこともありオコエには出場機会があまりありませんでした。巨人は現在、外野手が手薄になっています。オコエには十分、チャンスがあると考えますね。

 

 バッティングは少々雑なため、改善が必要ですが守備走塁は素晴らしいモノをもっています。高松商から浅野翔吾がドライチで加わります。オコエはこれまで出場機会は多くありませんが、プロの厳しさは十分過ぎるほど身に染みているはずです。7年間、この世界で飯を食ってきたアドバンテージはあるわけですから、現役ドラフトを良いステップボードにしてさらに成長してほしいです。

 

 昔ほど、プロ野球での移籍の意味合いがネガティブなものではなくなってきています。僕の体験談ですが、巨人から西武にトレードされた時、ショックだったのは事実です。しかし、西武は内野手を補強したくて僕を獲ってくれたわけです。トレードでの加入初年度はその選手にとっては大きなチャンス。たとえ、その移籍が個人的にショックだったとしても腐らずに“期待に絶対に応える”と努力を重ねてほしいですね。オコエはおそらく、今回の移籍をネガティブに捉えているとは、考えにくいですがこの1年が勝負の年。彼のセールスポイント(守備、走塁)をアピールしまくるシーズンになれば、巨人にとっても喜ばしいことだと思います。

 

 「ベンチのセンス」とは

 

 そして巨人は“熱男”こと松田宣浩を獲得しました。僕は常々、巨人ベンチの雰囲気の暗さを指摘しています。松田のキャラクターをいかし、ベンチのムードを盛り上げてほしいと同時に、周囲も松田を浮かせないことが大事になってきます。

 

 新型コロナウイルスの影響で無観客や応援禁止の期間にわかったことがありました。この期間で僕は“ベンチのセンスがわかるな”と思いました。盛り上げる声、ちょっとした野次の声……。気の利いた言葉や会話の妙って大事なんです。ベンチがシーンとしていても、勝てている時は問題ないですが、負けが込むと空気が重くなる。そうすると若手たちは伸び伸びプレーしづらくなるでしょう。以前、このコラムで“丸美屋のふりかけ(第33回はこちら)”の件を書きました。何も、こうしろとは思わないですが、ムードを明るくすることは今の巨人ベンチには必要だと思います。

 

 さてさて、来年にはWBCが開幕します。大谷翔平やダルビッシュ有らが参戦の意志を示しています。加えて、アメリカも“本気モード”の人選をする情報もあります。野球ファンからしたら目から鱗が落ちるほど楽しみです。もうすっかり早いもので年末です。今年も僕のコラムを読んでいただき、誠にありがとうございました。来年もよろしくお願いいたします。そうそう、立教大学駅伝部が55年ぶりに箱根駅伝に出場します。ぜひ、そちらの応援もよろしくお願いいたします(笑)。よいお年をお迎えください。

 

<鈴木康友(すずき・やすとも)プロフィール>
1959年7月6日、奈良県出身。天理高では大型ショートとして鳴らし甲子園に4度出場。早稲田大学への進学が内定していたが、77年秋のドラフトで巨人が5位指名。長嶋茂雄監督(当時)が直接、説得に乗り出し、その熱意に打たれてプロ入りを決意。5年目の82年から一軍に定着し、内野のユーティリティプレーヤーとして活躍。その後、西武、中日に移籍し、90年シーズン途中に再び西武へ。92年に現役引退。その後、西武、巨人、オリックスのコーチに就任。05年より茨城ゴールデンゴールズでコーチ、07年、BCリーグ・富山の初代監督を務めた。10年~11年は埼玉西武、12年~14年は東北楽天、15年~16年は福岡ソフトバンクでコーチ。17年、四国アイランドリーグplus徳島の野手コーチを務め、独立リーグ日本一に輝いた。同年夏、血液の難病・骨髄異形成症候群と診断され、徳島を退団後に治療に専念。臍帯血移植などを受け、経過も良好。18年秋に医師から仕事の再開を許可された。18年10月から立教新座高(埼玉)の野球部臨時コーチを務める。NPBでは選手、コーチとしてリーグ優勝14回、日本一に7度輝いている。19年6月に開始したTwitter(@Yasutomo_76)も絶賛つぶやき中。2021年4月、東京五輪2020の聖火ランナー(奈良)を務め、無事"完走"を果たした。


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