第148回 練習がきらい。それでもチャレンジは止めない

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「今年はチャレンジの年にする!」。そう誓ってから早1カ月が経とうとしています。

 ピアノ、始めました。はるか昔、小学生の頃に習っていたので、再開とも言えますが……。

 

 昨年、「試しに」という気持ちで始めましたが、今年は「チャレンジだ!」と気合いを入れて臨みました。

 ただ、少し慣れてくると、根っからの練習嫌いがむくむくと頭をもたげてきます。心配です(笑)。

 

 昔から、練習がきらいでした。

 中学校は陸上部。夏休みの練習は、とにかくサボることばかり考えていました。一緒にサボる仲間(女子)もいました。

 

 ある日、部活動をサボッて家にいると、陸上部の男子が数名で家にやってきました。「数子さんいますか?」。当然、母は何も知らないから「数子はいる」と答えてしまいます。「部活に行きましょう」と、彼らは玄関で私を待つという。ふ~。ジャージに着替えた私は、連れられるように(途中で逃げないように)一緒に登校しました。

 

(イラスト:Rina Matsuda)

 また、ある日はこうです。

 

 部活が終わったらプールに行く計画で、毎日水着を持って行きました。サボり仲間の1人が「今日は練習に出ないでプールに行こう!」と言うと、また1人が「見つからないで行く方法がある」と。早速水着に着替え、陸上部が練習しているグラウンドから見えないように砂利道を走ってプールへGO! これは上手くいきました。ところが5分後、油断した私たちは、男子に見つかり、先生に言いつけられました。残念ながらグラウンドからプールは見通しがよいからです。結局、男子がプールまで来て、着替えてグラウンドに来いと(先生が言っている)。万事休すです。

 

 またまた、ある日は、仲間の家に集合して町のスポーツ店、本屋さんを巡りました。これは見つからなかった。その後、味を占めて数回決行しました。

 

 夏休みはあっという間に終わり、2学期が始まるとすぐ、先生にすごく叱られました。当たり前。

 

 ここまで読んでくださった方は“そんなに練習がきらいなら、部に所属しなければいいのに”と思いましたよね。しかし私はそんなことは一度も考えませんでした。大会に出場したかったし、意識するライバルもいました。

 

 こんな練習嫌いの私は今、パラスポーツと出合い、アスリートたちにインタビューしたり、大会や練習に出向いたりしています。そのたびに“彼らは練習をとても大切にし、研究し、時間をかけている”と知らされる。「練習を休むのが怖い」と言う人もいます。そんな話を聞くと、中学生の時を思い出し、情けない気持ちでいっぱいになるのです。

 

 何故、中学生の私は陸上部に入り、大会にも出たいのに、練習がきらいなのでしょうか。その理由の一つは目標を持っていなかったからでしょう。スポーツに接したお陰で、おぼろげながらわかったことです。

 

 だから何かに挑戦するとき、明確な目標を設定しよう。この1カ月で様々な「目標」をつくりました。“いい歳して今さら”と思わなくもありませんでしたが、至って真面目に取り組みました。ピアノでの目標も立てました。

 

 今は目標ができた達成感で満足しそうな私を奮い立たせているところです。

 そんな自分に、乞うご期待!

 

伊藤数子(いとう・かずこ)プロフィール>

新潟県出身。パラスポーツサイト「挑戦者たち」編集長。NPO法人STAND代表理事。STANDでは国や地域、年齢、性別、障がい、職業の区別なく、誰もが皆明るく豊かに暮らす社会を実現するための「ユニバーサルコミュニケーション事業」を行なっている。その一環としてパラスポーツ事業を展開。2010年3月よりパラスポーツサイト「挑戦者たち」を開設。また、全国各地でパラスポーツ体験会を開催。2015年には「ボランティアアカデミー」を開講した。第1期スポーツ庁スポーツ審議会委員、東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会顧問を務めた。2022年10月、石川県成長戦略会議委員に就任。同11月に馳浩スペシャルアドバイザーに就いた。著書には『ようこそ! 障害者スポーツへ~パラリンピックを目指すアスリートたち~』(廣済堂出版)がある。
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