今年はチャレンジの年。先月の当コラムでピアノの再開をご報告させていただきましたが、もう一つ、再スタートさせたものがあります。それはゴルフです。実は1年前から練習を再開しました。

 

 理由は三つ。どれも「いまいち」と言えばそれまで。しかし、理由などどうでもいいのです。

①こうしてパラスポーツのことをお仕事にしてから、カープ女子になり、試合を見て応援したり、秩父宮ラグビー場でボランティアチームに参加してみたりとスポーツに関わることが増えました。もちろん、パラスポーツはたくさん見て、いろいろなお手伝いをしています。スポーツを「みる」「支える」は毎日のように関わっているのですが、「する」は心許ない……。“「する」も少しぐらいやらなきゃ”という積年の罪悪感を払拭したい一心でした。

 

②コロナの影響で、いわゆる「飲み会」が制限され、あまりにもつまらない日々。少し経つと、「ゴルフだったら外でするから大丈夫」という声が聞こえてくるようになりました。飲み会の代わりにゴルフに出かける人が増えていき、私は取り残されて行くではないか。このまま指をくわえて見ているのがつらい。

 

③パーソナルトレーニングのジムのオーナーをしている知人から数年前に「パラアスリートをトレーニングで応援をしたい」との相談を受けました。その頃、障がいのある人がジムの入会を断られるという話をよく聞いていたので、“さすが、素晴らしい”と感激し、あるパラアスリートを紹介しました。アスリートにもオーナーにも喜んでいただきました。さらには他のパラアスリートも通うようになったり、ジムではそのことが宣伝になったりで、いいことが重なっていきました。

 オーナーは、お礼の代わりに「よかったらトレーニングしませんか。無料でご招待します」とご提案いただきました。う~ん。ふと資料を見ると、ジムの契約トレーナーの中にゴルフのレッスンプロが。そのオーナーは私が「あっ」と反応したのを見逃さず、「ゴルフレッスンでもいいですよ」とおっしゃるのです。私は「やった! ほんとですか?」と勢いでお願いしてしまった。というわけで、なんと幸運なことにレッスンプロの下、練習を始めることになったのです。何だか申し訳ない話になってしまいましたが、ここで引き下がるのは悔しい。もちろん、(本当に少ないのですが)レッスン料をお支払いしています。

 

 というわけで、私のゴルフ練習が再開しました。

 しかし、悲しいかな、他人とコースを回れるほどのレベルにはなかなかなれません(簡単ではないのは当たり前)。30年ほど前にプレーしていた頃も上手くなく、場面によっては、つらくてつらくて、針のむしろにいるような心持で回っていたものです。

 

 そこで、最近ゴルフの話題になると、恐る恐る言ってみます。

「バンカーに入ったら、1度は頑張って打ちます。2回目以降は入ったら手で拾います」

「ティーショットが上手くいかなかったら、もう1球打ちます」

 とか、オリジナルルールはいかがでしょう~?

「なんと心得る!」「けしからん!」「ゴルフに対する冒涜だ!」と思われた御仁には、お詫び申し上げます。

 

 そんな中、「オッケー、オッケー」と答えてくださった奇特な方がいて、ついにラウンドの日程調整に入ったのであります。勇気あるお誘いに感謝でいっぱいです。

 はてさて、デビュー戦や如何に!

 

 つづく

 

伊藤数子(いとう・かずこ)プロフィール>

新潟県出身。パラスポーツサイト「挑戦者たち」編集長。NPO法人STAND代表理事。STANDでは国や地域、年齢、性別、障がい、職業の区別なく、誰もが皆明るく豊かに暮らす社会を実現するための「ユニバーサルコミュニケーション事業」を行なっている。その一環としてパラスポーツ事業を展開。2010年3月よりパラスポーツサイト「挑戦者たち」を開設。また、全国各地でパラスポーツ体験会を開催。2015年には「ボランティアアカデミー」を開講した。第1期スポーツ庁スポーツ審議会委員、東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会顧問を務めた。2022年10月、石川県成長戦略会議委員に就任。同11月に馳浩スペシャルアドバイザーに就いた。著書には『ようこそ! 障害者スポーツへ~パラリンピックを目指すアスリートたち~』(廣済堂出版)がある。

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