来月から調教師に転身するJRA(日本中央競馬会)騎手・福永祐一が19日、東京競馬場で国内の騎乗を終えた。残りは2月25日(土)にサウジアラビアで行われるレース。引退式は3月4日(土)、京都・阪神競馬場で開催予定だ。

 

 27年のジョッキー人生を振り返り、福永はこう語った。

「自分が今日の日を迎えてどういう気持ちになるのか、興味深く、心の中から湧き上がってくる気持ちを見ていましたが、後悔というのは先ほどのレースでもありますし、後悔は尽きなかったですが未練は一つもありませんでした。満足する結果はどこまでいっても残すことはできないかなと思うんですけど、未練なく騎手という仕事を終えられるということに、“自分はやりきったのかな”と。騎手という仕事を味わい尽くせたのかなと感じています」

 

 父は天才と称され、1970年から9年連続でリーディングジョッキーに輝いた洋一。騎手界のサラブレッドは、96年3月2日の中京第2レース(4歳未勝利 ダート・1000m)でデビューし、マルブツブレベスト(牡馬)に騎乗、初勝利を飾った。それから27年の騎手人生で手にしたのは史上3位タイのGⅠ勝利数(34)、史上4位の勝利数(2636勝)&重賞勝利数(160勝)、そして史上8位の騎乗数(19497)。史上最年長となる13年連続JRA年間100勝をマーク。リーディングジョッキーを2度(2011、13年)獲得した華々しい記録と共に騎手を引退する。

 

 国内ラストレースは東京12レースの大島特別(ダート・1400m)でゲンパチプライド(4歳牡)に騎乗し、5着に終わった。この日は9レースのヒヤシンスステークス(ダート・1600m)でペリエール(3歳牡)に乗り、JRA通算2636勝目を挙げた。

「未来のある馬で、次は自分が乗ることができない状況でもあるにも関わらず、依頼をくださったオーナーをはじめとする関係者の方々の思いを非常にうれしく思いました。だからこそ一番いい結果で応えないといけないと思い、近年の中でハ一番プレッシャーのかかるレースでした」

 

 レース後のセレモニーでは、柴田善臣、武豊という先輩ジョッキーから花束を受け取った。
「『順番が違うだろ』と言われました」と笑い、こう続けた。
「自分も結構いいおじさんですが、僕よりもおじさんの2人に花束をもらったのは複雑な気持ちでした。2人ともまだまだお若いし、今もバリバリ騎乗されている。お2方に依頼できるような馬を育てたい」

 

 97年、GⅢの東京スポーツ杯3歳ステークス(芝・1800m)で初の重賞勝ち(キングヘイロー)を収めた東京競馬場で国内ラストレースとなったのも何かの縁か。「変わらず最高でした。お客さんがいない時期もあったし、無観客のダービーもあったけど、それでも最高でした。最高のジョッキー人生でした」と言葉を詰まらせながら、思い出の地を振り返った。

 

 最後にファンへの感謝を述べ、来月からスタートする調教師としての意気込みを語った。

「僕が父は騎手ということもありまして、この世界に足を踏み入れたけど、北橋(修二)先生をはじめとする方々にここまで育てていただきました。そして、自分には過ぎた勝ち鞍を挙げることができました。何より27年間、一度も騎手という仕事が“嫌だ”と思わずここまで来られたのは、たくさんのファンの方々のおかげだと、心から思います。日本の競馬をいつも盛り上げていただき、ありがとうございます。自分は次のステージ、調教師という仕事に進みますが、多くの方々に応援してもらえるような馬をつくって、後ろに並んでいるジョッキーと共に、また競馬を盛り上げていけたらと思っています」

 

(文/杉浦泰介、写真/ⓒBS11)

 

BS11では、福永祐一騎手の引退式の模様を3月4日(土)16時からの「BSイレブン競馬中継 第2部」で放送予定

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