3日、第99回東京箱根間往復大学駅伝競走(箱根駅伝)は、神奈川・芦ノ湖から東京・大手町までの復路5区間(109.6km)で行われ、往路を制した駒澤大学が10時間47分11秒で2年ぶり8度目の総合優勝を果たした。今シーズン、出雲全日本大学選抜駅伝競走(出雲駅伝)、全日本大学駅伝対校選手権大会(全日本大学駅伝)に続く3冠。史上5校目の快挙を達成した。2位は往路2位の中央大学、同3位の青山学院大学は3位だった。最優秀選手賞にあたる金栗四三杯には、往路4区で区間記録を更新した東京国際大学のイェゴン・ヴィンセント(4年)が輝いた。

 

 上位10校までに与えられるシード権は國學院大学、順天堂大学、早稲田大学、法政大学、創価大学、城西大学、東洋大学が手にした。東洋大は18年連続、國學院大は5年連続、創価大は4年連続、順大は3年連続、法大は2年連続のシードを守った。城西大は5年ぶり、早大は2年ぶりのシード権獲得だ。第100回大会の予選会は関東学生陸上競技連合のみならず、日本学生陸上競技連合登録者がエントリー可能に。全国大会の様相を呈する。

 

 総合順位は以下の通り。

(1)駒澤大(2)中央大(3)青山学院大(4)國學院大(5)順天堂大(6)早稲田大(7)法政大(8)創価大(9)城西大(10)東洋大(11)東京国際大(12)明治大(13)帝京大(14)山梨学院大(15)東海大(16)大東文化大(17)日本体育大(18)立教大(19)国士舘大(※)関東学生連合(20)専修大

※OP参加のため順位なし

 

 ゴール地点の読売新聞東京本社前で胴上げされた大八木弘明監督は「選手たちに3冠というプレゼントをいただいた」と感謝した。ミーティングでは「『各選手が5番以内に入れば勝てる』と伝えました」と言い、選手たちはそのノルマを見事に達成。全10区間で2、3、2、3、4、1、3、4、3、2位という抜群の安定感で、大東文化大(1990年度)、順大(2000年度)、早大(10年度)、青山学院大(16年度)に続く3冠を成し遂げ、箱根駅伝の歴史にその名を刻んだ。

 

 19年ぶりに復路首位スタートとなった駒大は当日のエントリー変更で6区に伊藤蒼唯(1年)、8区に赤星雄斗(3年)を起用した。注目のルーキー佐藤圭汰、3年生の実力者・花尾恭輔は欠場となった。それでも7区・安原太陽(3年)、9区・山野力(4年)、10区・青柿響(3年)はいずれも箱根駅伝経験者。9、10区は昨年と同じオーダーだ。また前日の往路5区に続き、山のスペシャリスト区間には1年生を抜擢した。

 

 30秒差で追う中大は、6区は4年連続となる若林陽大(4年)が走り、7区は当日のエントリー変更で千守倫央(4年)が入った。早い段階で駒大をつかまえ、トップに立ちたいところだろう。連覇が懸かる青山学院大は昨年の金栗四三杯獲得の中村唯翔(4年)が入らずも、9区に岸本大紀(4年)を起用。そのほか昨年の優勝メンバー西川魁星(4年)、中倉啓敦(4年)もおり、2分3秒差の逆転劇を狙う。

 

 芦ノ湖からスタートする復路の始まりは、山下りの6区(20.6km)。朝8時、トップ駒大を皮切りに順次発走していく。伊藤は序盤の上りで中大、青山学院大との差を広げる。スタート地点は氷点下を記録し、ランナーたちの吐く息は白い。伊藤は曲がりくねった下りを軽快なリズムで刻んでいく。58分22秒で区間賞獲得。「緊張とワクワクの半々だった」という初の箱根路を下った1年生はリードを守るどころか2位との差は47秒と広げた。

 

 7区(21.3km)の駒大・安原は、区間4位(1時間3分14秒)と好走した中大の千守に差を縮められたものの、1時間3分18秒で区間5位とまとめた。区間賞は1時間2分43秒で創価大の葛西潤(4年)と明大の杉彩文海(3年)。「チームの流れを少しでもいい方向に変えたい」と葛西は順位を1つ上げ、上位争いに食い込む。杉は「自分の役割を果たすことができた」と2つ上げ、シード権圏内に浮上した。

 

 湘南の海岸沿いを走る8区(21.4km)。戸塚中継所で駒大の赤星は1時間区間4位の走りを見せ、中大との差を1分以上に広げた。一方で3位争いが激化。3位・國學院大から早大、法大、創価大、順大が15秒以内にひしめく。7区に続いて8区も2人が区間賞(1時間4分16秒)。東洋大の木本大地(4年)、法大の宗像直輝(3年)はいずれも1つ順位を上げ、東洋大は11位でシード権圏内、法大は5位と80年ぶりのトップ3が見えてくる位置で襷を渡した。

 

 復路のエース区間、9区(23.1km)は主将の山野が区間記録ペースで逃げる。昨年は先頭を走る青山学院大を追いかけて区間4位だったものの、区間記録を更新した中村にその差を広げられた。後輩たちが繋いできた襷に「情けない走りはできない」と山野。途中ペースダウンし、8位からの5人抜きで区間賞獲得(1時間7分27秒)の青山学院大・岸本には1分近く及ばなかったものの、区間3位の走り。2位・中大に1分半以上もの差を広げ、総合優勝をグッと手繰り寄せる。

 

 アンカーを2年連続で託された青柿が、「チームの順位が自分で決まるプレッシャーがあった」というが区間2位の1時間9分18秒で駆け抜け、最後は3本の指を立ててフィニッシュテープを切った。大八木監督によれば「エースクラスが体調を崩して2人ほど使えなかった」という。花尾、佐藤を欠いても勝ち切った分厚い選手層を他校に見せつけた。

 

 来シーズンの目標は史上初の2年連続3冠達成だ。エース田澤廉(4年)らが卒業するが「3年生以下、いい選手が残っている。常勝軍団にしたい」と大八木監督。大八木監督は退任の意向を示し、藤田敦史コーチが後任に就く予定だ。“平成の常勝軍団”と呼ばれた駒大が“令和の常勝軍団”を目指す戦いは既にスタートしている。

 

(文/杉浦泰介)