現地時間20日(日本時間21日)、第5回WBC(ワールド・ベースボール・クラシック)準決勝がアメリカ・フロリダ州マイアミで行われ、侍ジャパン(野球日本代表)がメキシコを6対5で破った。侍ジャパンは好機をつくるものの、得点が奪えない苦しい展開。吉田正尚(ボストン・レッドソックス)の3ランなどで追いすがるが、4対5で9回裏に入った。すると無死一、二塁で、村上宗隆(東京ヤクルト)の逆転サヨナラタイムリーが飛び出した。連覇を果たした2009年大会以来、3大会ぶりの決勝進出。決勝は21日(日本時間22日)、連覇を目指すアメリカと対戦する。

 

◇準決勝

 吉田、7回に値千金の2試合連続アーチ(ローンデポ・パーク)

メキシコ(プールC1位)

5=000|300|020

6=000|000|312X
日本(プールB1位)

勝利投手 大勢(1勝0敗)

敗戦投手 ジョバニー・ガジェゴス(0勝1敗2S)

本塁打 (日)吉田正尚2号3ラン

    (メ)ルイス・ウリアス1号3ラン

 

 13年はプエルトリコ、17年はアメリカに、2大会連続準決勝で敗退していた侍ジャパン。準決勝の壁を打ち破ったのは、眠れる主砲の一振りだった。

 

 準決勝のマウンドは大方の予想通り、佐々木朗希(千葉ロッテ)に託された。佐々木は160km台のストレートと140km後半のフォークで2三振を奪う完璧な立ち上がりを見せた。2回表には2連打を浴び、1死一、二塁のピンチとなるもショートゴロゲッツーに抑えた。3回表は3者凡退に切って取った。

 

 4回表2死から試合は動く。4番ロウディ・テレスにレフト前ヒットを打たれる。通常ならサード定位置付近の当たりだが、プルヒッター対策で敷いた逆をつかれたかたちとなった。続く5番アイザック・パレデスはサード後方にポトリと落ちるヒット。2死カウント0-1からの2球目、甘く入った変化球をレフトスタンドに運ばれた。打たれた瞬間、佐々木はマウンドにしゃがみ込んだ。侍ジャパンは3点の先制を許した。

 

 一方の打線は大谷翔平(ロサンゼルス・エンゼルス)の同僚サウスポーのパトリック・サンドバルのスライダーとチェンジアップを織り交ぜた巧みなピッチングに苦しみ、ゼロ行進が続いていた。4回裏に近藤健介(福岡ソフトバンク)、吉田のヒットで2死一、三塁のチャンスをつくったものの、村上はカウント1-2からの外のスライダーに手が出なかった。

 

 5回裏には先頭の岡本和真(巨人)がチェンジアップを叩き、レフトへホームラン性の打球を放った。しかし、ここはレフトのランディ・アロサレナにフェンス際の好捕で阻まれた。その後も満塁のチャンスをつくったが、近藤が外角の球を逆らわず弾き返したが、打球はここでもアロサレナのグラブに収まった。6回裏にも2死満塁のチャンスで源田壮亮(埼玉西武)がレフトフライ。1点が遠いまま、試合は終盤戦に突入した。

 

 嫌なムードを振り払ったのは4番の一発だった。7回裏、2死から近藤がライト前ヒット、大谷がフォアボールを選んで一、二塁。準々決勝まで打率4割、この日も2安打を放ち、好調をキープしている吉田が打席に立った。頼りになる4番は2-2からのインローのボールをすくい上げた。ライトポール際への同点弾が飛び出し、侍ジャパンは3対3に追いついた。

 

 8回表は5回から登板し、テンポの良いピッチングで同点の流れをつくった山本由伸(オリックス)の4イニング目。先頭打者を3球三振に仕留めたがアロサレナ、アレックス・ベルトゥーゴの連続ツーベースで1点を勝ち越された。続くホエイ・メネセスにヒットを許し、栗山英樹監督は火消し役に湯浅京己(阪神)をマウンドに。湯浅はテレスから三振を奪ったものの、パレデスにタイムリーを許した。さらなる得点を狙った二塁走者のメネセスはホームで刺した。

 

 8回裏に代打・山川穂高の犠牲フライで1点を返し、侍ジャパンは4対5の1点差で最終回を迎えた。まずは先頭の大谷が今大会2セーブのジョバニー・ガジェゴスの初球を右中間に弾き返す。大谷は二塁ベース上で吠えながら自軍のベンチに向かって両手を大きく振り上げる。続く吉田はボールをよく見て四球を選んだ。ここで栗山監督は吉田に代え、代走の切り札・周東右京(ソフトバンク)を送った。

 

 無死一、二塁のチャンス。ここまで4打数ノーヒットと沈黙していた男に打席が回ってきた。村上は1-1からの3球目を迷いなく振り抜いた。打球はセンターの頭上を越え、フェンスに直撃した。二塁から大谷、そして一塁から俊足の周東がホームイン。昨季史上最年少の三冠王となり、大きな期待を寄せられながら今大会ほとんど当たりが出ていなかった村上による劇的な逆転サヨナラ打で勝利した。

 

 3大会ぶりの優勝をかけて対戦するのは、準決勝でキューバに大勝した前回大会王者のアメリカだ。今大会はア・リーグMVP3度受賞のマイク・トラウト(エンゼルス)、昨季ナ・リーグMVPのポール・ゴールドシュミット(セントルイス・カージナルス)、同ナ・リーグ本塁打王カイル・シュワーバー(フィラデルフィア・フィリーズ)らタイトルホルダーをズラリと揃える豪華メンバーで臨んでいる。先発予定は今永昇太(横浜DeNA)。彼独特の空振りの取れる真っすぐで、重量打線をキリキリ舞いさせたいところだ。

 

(文/杉浦泰介)