日本発のプロダンスリーグ「第一生命 D.LEAGUE2022-23」のCHAMPIONSHIP(CS)が東京ガーデンシアターで行われた。レギュラーシーズンの上位6チームで争われたCSは、ファイナルでレギュラーシーズン3位のKADOKAWA DREAMS(カドカワドリームズ)が同1位のCyberAgent Legit(サイバーエージェントレジット)を下し、初優勝。同率3位には昨季準優勝のavex ROYALBRATS(エイベックスロイヤルブラッツ)、同3位のFULLCAST RAISERZ(フルキャストレイザーズ)が入った。

 

 今季は昨季から1チーム増え、12チームの総当たり対戦方式で争われた。CSに出場したのは、Legit、ROYALBRATS、DREAMS、SEGA SAMMY LUX(セガサミールクス)、RAISERZ、LIFULL ALT-RHYTHM(ライフルアルトリズム)の6チーム。トライアルマッチはレギュラーシーズン4位のLUXと同5位のRAISERZ、同3位のDREAMSと同6位のALT-RHYTHMが対戦した。RAISERZは静と動を表現したエモーショナルなショーケース、LUXは歌舞伎を想起させるショーケース。3季連続CS出場となった両チームの対決はRAISERZが、7対5で順位によるアドバンテージ(1票)をはねのけた。カラフルなヘアカラーの個性豊かなDREAMSと、紫の髪色で統一したALT-RHYTHMの一戦は、バイオリンの奏でるハイテンポなメロディーに乗り、前衛芸術を思わせるアースティックなショーケースを見せた前者が満票で制した。

 

 セミファイナル第1試合はレギュラーシーズン1位のLegitと、同5位でトライアルマッチを勝ち上がったRAISERZ。先攻(青)のRAISERZはSPダンサーにバレリーナの大久保沙耶を起用した。エレガントなクラシックバレエとパワフルなKRUMPを融合する、まさしくテーマの「Revolution」のショーケース。ピアノの旋律に乗せて8人が舞った。迎え撃つレギュラーシーズン王者のLegitは、赤と銀のコスチュームを纏い「ROCK&FIRE」の曲に乗り、ポッピン、ロッキン、ブレイキンを披露した。イントロは8人がシンクロしたポッピン。アップテンポなビートに転調すると、ロッキンとブレイキンを組み合わせたエネルギッシュなダンスで締めた。9対3で勝ったのは、Legitだった。

 

 第2試合はCS初出場のDREAMSが、過去CS2大会ファイナル進出のROYALBRATSに挑んだ。先攻のDREAMSは「スートラ」(経典)をテーマに厳かな雰囲気を纏いつつも、独特の世界観で観客を惹きつける。8人のシンクロ率はもちろんのこと、時折、妖艶な笑顔を見せる颯希(SATSUKI)のソロパートを織り交ぜる個性も際立つショーケースだった。対する後攻(赤)のROYALBRATSは”定番”の「学園」をテーマに机、プリント、ゴミ箱など小道具を使い、8人がシンクロしたコミカルなダンスで会場を盛り上げる。結果は8対4でDREAMSがファイナルにコマを進めた。

 

 ファイナルはいずれもCS初出場のDREAMSとLegit。当然、どちらが勝っても初優勝、雌雄を決する戦いの先攻はDREAMSだ。白の衣装で選んだ曲は「CHAMPION」。この日3本目のショーケースとなるDaichiにスポットライトが当てられ、彼のソロでスタートした。DREAMSは「僕たちが持つすべてのバイブスを集めた作品」(颯希)という力強いゴリゴリのHIPHOPで真っ向勝負し、王座をもぎ取りにいった。後攻はジャケット、パンツスーツスタイルの衣装でダンスホールを思わせる世界観でスタイリッシュに舞った。両チーム共に8人が息の合ったダンスで積み上げてきた時間と、コンビネーションの深さを感じさせるものだった。

 

 勝負の決着はジャッジ10人と、オーディエンス投票による11票に委ねられた。ファイナルはアドバンテージなしのジャッジとなる。判定は青7票、赤4票。この瞬間、DREAMS悲願の初優勝が決まった。リーダーのRyoは「昨季の悔し涙をうれし涙に変えることができ、うれしい気持ちでいっぱいです」と壇上で語った。昨季は5位(昨季のレギュレーションは上位4チームに加え、5位以下のうちジャッジポイントとオーディエンスポイントの1位チームがそれぞれワイルドカード)でCS出場権を逃していた。ついに掴んだタイトル。KEITA TANAKAディレクターは「これで日本の頂点に立った。夏に世界チャンピオンを目指します。来季は世界チャンピオンのいる、世界に誇れるD.LEAGUEにしたい」と意気込んだ。

 

 KEITA TANAKAディレクターはCSのショーケースの選択について「僕らの強みである作品の種類と嚙み合わせ」と説明した。
「会場の雰囲気がCSはレギュラーシーズンとは違う。同じ技を出すと審査員も厳しい目になる。出す順番にこだわり、最後の最後まで考えました。CSはいい意味で熱量が高いので、レギュラーシーズンでも勝てるかもしれないショーケースでも場の空気で逆転することを去年、一昨年のシーズンを見ていた。それを計算に入れました」

 その言葉通り、まさにトライアルマッチで会場の空気を掴み、セミファイナルで引き込んだ。ファイナルのショーケースについて、「これぞKADOKAWA DREAMSが一番やりたかったこと」とMINAMI。「HIPHOPでなかなか勝てなかった。どんな相手でも自分たちがやってきたカッコイイ、ストレートなものをぶつけようと決めていた」

 

 最後は真っ向勝負での初戴冠。リーダーのRyoは「チャンピオンになったけど、このメンバーの中にはまだだま上に登れる人たちがいると思っている。優勝は通過点。自分たちは目標である世界一がある。オフシーズンも頑張りたい思います」と先を見据えた。KEITA TANAKAディレクターは、メンバーの成長をこう振り返る。

「基本的に無理を言ってきました。ただ超えられないものをパスしない。頑張らないと超えられないものをボーダーラインにしながら、必ず登らせてきたつもりです。身体的にも精神的にも。だから相当負担がかかっている。それをみんなで乗り越えていくことで、チーム力も個の力も、3年間やってきて成長してきたと思います」

 

 進化を遂げたのはダンサーだけではない。リーグは今季レギュラーシーズンのレギュレーションを変え、ラウンド毎に順位をつける形式から1対1のバトル形式総当たり戦に変更した。また12ラウンドのうち1ラウンドをサイファーラウンドとし、各チームの代表者(1~3人)による対戦を実施した。チーム戦以上に個々のスキルや魅力が際立つラウンド。個々のダンサーファン獲得に繋げる狙いがあるのだろう。これらの施策についてD.LEAGUE神田勘太朗COOは、手応えを口にする。

「今までは賛否の否も少なくありませんでしたが、今季は賛の方が多かったと実感しています。バトル形式にしたことで勝敗が分かりやすくなった。ダンサーやチームを好きになるラインが、分かりやすいストーリーをつくったことによって、ようやくできあがってきた」

 

 来季に向けて、運営側も束の間を休息をとはいかないようだ。
「3年間はあっという間でした。コロナ禍でスタートして1年は無観客。耐えて耐えてやってきました。ただ耐えてきたのは自分たちだけではなく、ダンサーやファンの皆さんも。それがいい意味で爆発する兆しを今回のCSで見せられたと思います。この熱量をオフに冷ますことなく、次の準備を早速、明日から取り掛かりたい。今は気合に満ちています」(神田COO)
 この日、23‐24シーズンの開幕が10月29日と発表された。来季を盛り上げるためにも、この半年でのプランニング、そして取り組みが重要と言えるだろう。

 

 取材を終え、会場を後にすると近くで楽しそうにダンスをしている子どもを見掛けた。D.LEAGUEが蒔いた種は、少しずつではあるが芽を出し始めているのかもしれない、そう感じさせる光景だった。

 

(文・写真/杉浦泰介)

 

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