第151回「もっと大会が必要だ!」久々の観戦で感じた大会開催の意義
4月8日、横浜F・マリノスカップ第18回電動車椅子サッカー大会に行ってきました。練習や体験会にはおじゃましていますが、試合を観戦するのは、かなり久しぶりのことでした。もちろん、私は金沢ベストブラザーズの応援。チームは石川県から、会場のある神奈川県藤沢市へ総勢19名で乗り込みました。
全身の中で、指先だけがほんの少し動く牧野勇樹選手(マッキー)。コロナで3年間練習がほとんどできなかったので、さらに可動域が減ってしまったといいます。そこで、そのわずかな動きでマシンを操作できるように、複雑に工夫を凝らした手づくりの操作レバー。マッキーはこれで戦います。
当日の体育館は気温が低く、スタッフはマッキーの指先をカイロやドライヤー、マッサージで温めます(写真)。
試合開始。前半途中からマッキーはコートへ向かいます。あんなにわずかな指先の可動で、これほどまでに、と驚かされる機敏で速い動き。途中交代で、ベンチに戻ってきた際にはとても興奮した表情を見せていました。“何としてでもサッカーをする”“試合に出る”。そんな強い思いがにじんでいるようでした。
2016年、日本障がい者サッカー連盟が設立されました。
アンプティサッカー、CP(脳性まひ)サッカー、ソーシャルフットボール、知的障がい者サッカー、電動車椅子サッカー、ブラインドサッカー、ろう者サッカーと7つの異なる障害の競技団体が参加しています。いろいろな障害があっても“サッカーをしたい”、“サッカーをしよう”という気概が伝わってきます。サッカーをすることで、自身も、周りの人にもサッカー以外の何かが起こっているはずです。スポーツの力は計り知れません。
今回、大会があることの大切さを、今さらながら強く感じました。
試合の時間が近付いてくるとき、監督が円陣で紡ぎ出す言葉。目まぐるしく動くスタッフ。緊張感が高まっていきます。当たり前ですが、イベントや体験会での、それとはまったく違うものです。
試合中の一挙手一投足は、観ている人の心を揺さぶります。大会を開催する意義は、こういうところにもあるんだと改めて思わされました。
元日本代表監督で現在石川県電動車椅子サッカー協会会長である城下健一さん(写真左)は、唸るようにこうおっしゃっていました。
「もっと大会が必要だ。試合じゃなきゃ見せられない、伝えられないものがたくさんある」
「う~ん。城下健一はきっと何かやる」
私は直感的にそう思いました。何年後かに、この続きをご報告することにします。
<伊藤数子(いとう・かずこ)プロフィール>