ボストン・レッドソックスの松坂大輔投手は4日、本拠地のタンパベイ・デビルレイズ戦に先発登板した。松坂はメジャー初対決となるデビルレイズ・岩村明憲から3三振を奪うなど、9奪三振の好投。8回を投げ、被安打3にデビルレイズ打線を封じ、日本人新人投手では野茂英雄、石井一久(いずれも当時ドジャース)以来となる2ケタ10勝目(5敗)をマークした。
 松坂と岩村の日本での対戦成績は7打数2安打、本塁打1、三振3。同一リーグの同一地区に所属しながら、ここまで対戦機会がなく、ようやくメジャー初対決が巡ってきた。
「大輔と対戦することがあれば、100%、120%の力で向かっていきたい」
 渡米前に対松坂の意気込みを語っていた岩村はこの日も1番・サードでスタメン出場。初回、先頭打者として松坂と顔を合わせた。

 初球は145キロの外ストレート。岩村はバットを出すのが遅れ、なんとかファウルする。2球目は内角高めの速球で体を起こされると、3球目は外から曲がり落ちるスライダーでストライク。カウント2−1と追い込まれる。
 ここで松坂は勝負球に再び同じコース、同じ球種を選択した。投じたスライダーは3球目よりやや外だったが、審判の右腕がスッと上がる。見逃しの三振。ボールと判断した岩村は苦笑いを浮かべるしかなかった。

 続く2打席目は3回1死の場面でやってきた。初球はチェンジアップだった。タイミングを外された岩村のバットが空を切る。2球目、初回同様に速球で内角を突くと、3球目も内角のストレート。コースは少し甘くなったが、岩村はとらえきれずファウル。カウントは2−1となった
 相手に内を意識させた松坂は外角で勝負をかける。1球、外のボールを挟み、最後は外から曲がるスライダー。岩村はなんとかバットに当てようと試みるが、白球はキャッチャーミットに吸い込まれる。完全に松坂に牛耳られ、岩村は、2打席連続三振に倒れた。

 岩村の打席に代表されるように、この日の松坂はスライダーやカットボールを多投する。ストレートが走り、好調だった6月の投球とは一味違った内容に、デビルレイズ打線は手も足も出ない。5回まで許したヒットはわずかに2本。2塁を踏ませない内容で回は進んだ。
 
 6回、岩村と松坂の3回目の対戦が訪れた。過去2打席と異なったのは、松坂のボールがすっぽ抜け始めたことだった。ボールになった3球すべて球離れが早く、カウントは1−3。松坂は外を狙って勝負をかけるが、打者優位のカウントでは岩村のほうに分があった。
 6球目の外角ストレートを叩くと打球は左中間へ。岩村は1塁をけって2塁へ向かう。打球を処理したセンターが好返球をみせたものの、セカンドがボールをこぼし、記録は2塁打になった。対松坂のメジャー初ヒット。これを反撃ののろしにしたいデビルレイズだったが、後続が倒れて無得点に終わった。

 一方、レッドソックスは2回、不振にあえいでいたフリオ・ルーゴのタイムリーなどで3点を先制。6回には女房役のジェーソン・バリテックが貴重な犠飛を放ち、リードを4点に広げた。

 そして8回、この日最後の対決がやってくる。2死3塁、デビルレイズにとっては数少ないチャンスだ。100球を超え、制球が微妙に乱れてきた松坂はボールが続く。カウントは0−3。しかし、バッテリーは外で勝負する姿勢を崩さない。外のストレートとカットボールでフルカウントに戻すと、最後はまたまた外からのスライダー。これがコースギリギリに決まり、岩村はなすすべなく見逃し三振に打ち取られた。

 結局、松坂は最終回のみ抑えのジョナサン・パペルボンに譲り、8回4安打、9奪三振の無失点。防御率1点台と快調だった6月の流れをそのまま持続し、ついに勝ち星を2ケタにのせた。
 日本人メジャー投手の最多勝利は1年目では石井一久の14勝。2年目以降も含めると野茂英雄の16勝になる。松坂は前半戦で期待通りの10勝をあげ、記録更新が現実味を帯びてきた。
 オールスター明けの後半戦、レッドソックスとデビルレイズの対戦は15試合も組まれている。開幕から初対決まで3ヶ月もかかった両者だが、今後は頻繁に当たることになるだろう。松坂がどこまで白星を伸ばすかは、もしかしたら岩村との対戦がカギを握るのかもしれない。

 デビルレイズ、泥沼9連敗
タンパベイ・デビルレイズ 1 = 000000001
ボストン・レッドソックス   4 = 03000100×
勝利投手 松坂(10勝5敗)
敗戦投手 カズミアー(5勝5敗)
本塁打   (デ)ペーニャ19号ソロ

【岩村成績】
 4打数1安打
第1打席 見逃三振
第2打席 空振三振
第3打席 左中間二塁打
第4打席 見逃三振

<ボンズ、通算751号 記録まであと4本>

 サンフランシスコ・ジャイアンツのバリー・ボンズ外野手は同日、敵地のシンシナティ・レッズ戦で通算751号本塁打を放った。これでハンク・アーロンのもつMLB記録(755本)にあと4本と迫った。
 初回、2死1塁の場面でレッズの先発アーロン・ハラングの低めのボールをすくい上げ、右中間スタンドに運んだ。ボンズの今季17号となる2ランで先制したジャイアンツだったが、投手陣が崩れ、逆転負け。試合はレッズが7−3で勝利した。

 ボンズもその後の打席は2四球(敬遠含む)と外野フライ2本に倒れた。7月のジャイアンツはロードゲームが多く、本拠地AT&Tパークでの直近の試合は14日からのドジャース3連戦のみ。Xデーが近づくとともに、記録達成の場所も注目を集めそうだ。
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