メジャーリーグ(MLB)のボストン・レッドソックスで活躍する吉田正尚の身長は173センチである。年俸総額(5年)9000万ドル(約123億3000万円)もの高額契約を結ぶにあたり、身長の低さを不安視する声は少なくなかった。
<この原稿は2023年6月12日号『週刊大衆』に掲載されたものです>
FOXスポーツのジェイク・ミンツ記者は、「昨年のメジャーリーグの打者のうち、身長が5フィート8インチ(1メートル73センチ)以下だった選手は、わずか2%だった」とサイトに書いている。
開幕当初はMLBの投手にアジャストできず、4月18日(現地時間)終了時点では、打率を1割6分7厘にまで落としたが、5月23日現在、打率3割、6本塁打、29打点。スタンスをオープン気味にしたことが功を奏し、本領を発揮しつつある。
パワーの源泉は、ボディビルダーのような筋肉だ。ホームランを打つと、祝福の儀式として“マッチョダンベル”が手渡される。驚異のスイングスピードは学生時代からのウエイト・トレーニングの賜物だ。
170センチ前後の身長のホームラン打者と言えば、この1月、74歳で世を去った門田博光(南海-オリックス-ダイエー)を思い出す。
身長170センチながら、メジャーリーガー顔負けのフルスイングで、NPB歴代3位となる567本塁打を記録した。
南海時代の監督・野村克也は、「もっとコンパクトなスイングを心がけろ」と説教したが、門田は聞く耳を持たなかった。「僕は不器用なバッター。鋭く小さなスイングでは、ボールを遠くへ運ぶことができない」
ボールを砕く――。それが門田の“打撃哲学”だった。
プロ野球選手の平均身長は180.8センチ(2019年)である。そんな中、170センチそこそこの選手の活躍は、小柄な野球選手にとって大きな励みになるのではないか。
先頃、22年連続勝利を達成した東京ヤクルトの左腕・石川雅規は167センチ。“山椒は小粒でもぴりりと辛い”とのことわざは、令和の今も生きている。
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