第155回 カープが大好き! カープファンも大好きなんじゃ!

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 カープ女子の私は、カープファンのみなさまとの会合は楽しみでなりません。カープを肴にした「ただの飲み会」でもあります。その会にはカープ以外のチームのファンもいますから。

 

 先日も大いに盛り上がっていたところ、ある方がこうおっしゃいます。

「私は●●●(カープ以外のプロ野球チーム名)がきらいなんじゃないんや。●●●のファンがだいっきらいなんじゃ~!」

 お聞きしてみると、あるゲームでのこと。●●●の相手チームのピッチャーが打ち込まれ、交代となりました。すると、マウンドを降りるピッチャーに対し、「さよなら、さよなら●●(相手の投手)」のコールを続け、その後、『蛍の光』を歌い出したと。

 それを聞いて、胸が痛くなりました。

 

 またこんなお話も。

「リードしたまま最終回2アウトになると『あと一人、あと一人』とコールするんじゃ。わしゃ試しにカープが同じ立場だったとき『あと一人、あと一人』と声を出してみた。でも、カープファンは誰一人続いて来んかった。これぞカープファンの矜持や。そういうところ、大好きなんじゃ」

 ここまで聞いて、胸が熱くなりました。

 

 応援はすごく素敵なことで、応援する人は興奮するし楽しい。そして、勝ったらうれしいし、負けたら悔しい。プレイヤーにとって、その想いを受け取り、それが大きな力となっているはずです。素敵な関係なのです。

 

 プロ野球のスタジアムでは何が起こっているのでしょうか。

 あるチームでは、以下のようなメッセージをウェブサイトで掲載しています(掲載された全文)。

 

<皆様からの熱いご声援は日々戦うチーム・選手にとって、大変心強く、そして何よりの励みになっております。

しかしながら、昨今、球場において、残念ながら一部のお客様による誹謗中傷、過度な野次、替え歌等で相手を侮辱するなど、観戦マナーに反する迷惑行為が散見されております。

 ご観戦にあたり、このような行為は絶対におやめください。

 我々は、ともにグラウンドに立つ各球団の選手・関係者、審判員に敬意を持って日々戦っています。そのような選手・球団、またプロ野球関係者に対する悪質な言動は、本人の尊厳を傷つけるばかりか、観戦に来たお客様、特に子供たちに怖く不愉快な思いをさせてしまうものであり、決して看過することはできません。

 今一度、ご来場のお客さまひとりひとりが観戦マナーを遵守し、すべての皆様が楽しく快適に観戦できる環境を作り上げ、健全な応援でチーム・選手を鼓舞していただきますよう、心よりお願いいたします。>

 

 また、以下のような公式コメントもあります。

<チーム及びファンを挑発、冒涜する行為の禁止について

試合において、チーム及びファンを挑発、冒涜する行為(各チームのマスコットグッズを損壊したり、引きずったり、踏みつける等)は、トラブルの原因となりますので、お止め下さい。>

 これは、胸が苦しくなります。

 

 さて、世界一美しい礼をするといわれる、柔道家の棟田康幸氏にお話を聞いたときのことです(挑戦者たち・二宮清純の視点 棟田康幸氏・初瀬勇輔氏<柔道パラリンピアン>対談)。

伊藤: 棟田さんと言えば、「世界一美しい礼をする」と言われました。映像で拝見いたしましたが、本当に美しい。

初瀬: それも柔道のいいところですよね。これから戦う相手に対して礼をする。そして試合に勝っても、負けても礼をする。正直、礼をしたくない時が全くないとは言えません。でも棟田さんは常に美しい礼法を実践されていたので、柔道家としてすごく尊敬していました。

伊藤: 「柔道は相手がいるからこそできるんだ」とおっしゃっていましたね。

棟田: そうですね。1人では強くなれないのが柔道です。>

 

(写真:カープ坊やをモチーフにした特殊ポスト。広島JPビル郵便局にて)

 柔道に限らず、スポーツはいつだって一人じゃできません。一人では強くなれないし、対戦相手がいなくては勝つことも負けることさえもできないのです。

 選手は、対戦相手を含め、関わるすべての人に感謝を込めて試合に臨むものではないでしょうか。そんな選手に思いを馳せると、過度な野次、誹謗中傷などはできないはずです。

 

 ある1チームの側からだけで観るより、相手チームや、この試合に至るまでのストーリー、全体を観ることでゲームがもっと面白くなるはず。

「●●●(チーム名)がきらいなんじゃない」という言葉は、スポーツの楽しみそのものを映し出していると感じました。とても重く、胸に沁みます。

 

 

伊藤数子(いとう・かずこ)プロフィール>

新潟県出身。パラスポーツサイト「挑戦者たち」編集長。NPO法人STAND代表理事。STANDでは国や地域、年齢、性別、障がい、職業の区別なく、誰もが皆明るく豊かに暮らす社会を実現するための「ユニバーサルコミュニケーション事業」を行なっている。その一環としてパラスポーツ事業を展開。2010年3月よりパラスポーツサイト「挑戦者たち」を開設。また、全国各地でパラスポーツ体験会を開催。2015年には「ボランティアアカデミー」を開講した。第1期スポーツ庁スポーツ審議会委員、東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会顧問を務めた。2022年10月、石川県成長戦略会議委員に就任。同11月に馳浩スペシャルアドバイザーに就いた。著書には『ようこそ! 障害者スポーツへ~パラリンピックを目指すアスリートたち~』(廣済堂出版)がある。
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