一般社団法人日本パラダンススポーツ協会(JPDSA)は、国内のパラダンススポーツ競技統括団体として、障がいのある人が<分け隔てられることのない自由で公正な「共生社会」の実現>を目的に2020年2月に発足した。今年8月には東京・代々木第一体育館で「東京2023パラダンススポーツ国際大会」を開催。競技の普及および競技水準の向上を目標に掲げるJPDSAの田中一代表理事に話を訊いた。

 

伊藤数子: 車いすに乗った人たちが音楽に合わせて踊り、その芸術性を競うパラダンススポーツ。今年8月に東京・代々木第一体育館で行われた「東京2023パラダンススポーツ国際大会」は、10年ぶりに日本で開催された国際大会です。18カ国・地域から100人を超える選手が集まったそうですね。私も観戦しましたが、大会会長の田中さんのタキシード姿はばっちり決まっていましたね。そもそも田中さんとダンスとの出会いは?

田中一: 埼玉県志木市で、図書館司書として働いていた2000年頃だったと思います。仕事が忙しく、ストレス解消に何かを始めたかった。その時に埼玉県障害者交流センターの会合で紹介してもらったのがきっかけです。

 

二宮清純: それでダンスに夢中になったと?

田中: はい。パラダンススポーツは車いすで日常を過ごす者にとって音楽に乗り、身体を動かすことで、自由に自分を表現できる素晴らしい競技です。私は図書館の仕事をしながら、仕事終わりにダンスレッスンに通い、車いす操作やダンスの基礎を学びました。おかげで日本選手権や国際大会にも出場することができました。60歳になって退職した後も関わっているパラダンススポーツは、私の人生に彩りを添えてくれています。

 

伊藤: 素敵ですね。「東京2023パラダンススポーツ国際大会」のプログラムに田中さんのコメントで<車いすの者同士や身体的に異なる状況の人とも手を取り合い、喜びを表現することができます>と書かれていましたが、これを読んで、私は感動しました。

田中: ありがとうございます。私がいろいろな人から学んだことを言葉にしました。

 

 共生社会を体現

 

二宮: さてパラダンススポーツでは、車いす競技者のことをドライバーと呼びます。「コンビ」はドライバーとパートナー(スタンディング)という男女ペアの組み合わせ、「デュオ」ではドライバー同士のペアが踊ります。そのほかドライバー1人で踊る「シングル」もあります。「フリースタイル」は、この3つのスタイルを自由に選択できます。またダンスジャンルはヒップホップ、バレエ、ストリートダンスなど多岐に渡ります。

田中: 私がダンスを始めた頃は「コンビ」と「デュオ」しかありませんでした。「フリースタイル」が加わったことにより、どんどんアクロバティックな技も見られるようになってきました。

 

二宮: クラス分けは?

田中: 上半身、下半身に障がいのあるクラス1、下半身のみの障がいをクラス2に分けています。「コンビ」では障がいのある人とない人が組んで一緒に踊るというのも、競技の魅力です。共生社会を体現しているスポーツだと思っています。

 

伊藤: 今年8月に行われた「東京2023パラダンススポーツ国際大会」、開催後の手応えは?

田中: 国外へのアピールを含め、パラダンススポーツのこれからの道をつくっていくための大会だと思って開催しました。反省点があるとすれば、PRが足りなかった。そこまで手が回らなかったというのが正直なところです。

 

二宮: 広報・宣伝活動が今後に向けての課題だと?

田中: そうですね。次に開催する際には、もっと多くの人に観てもらえるように積極的にPRを仕掛けていきたいと思います。大会開催後に今回のインタビューを含め、多くの反応をいただきました。10年ぶりの国際大会開催だったので、海外からのリアクションも良かったんです。国際統括団体のワールドパラダンススポーツからも高く評価していただきました。来年11月にはアジア・オセアニアカップを開催予定です。今回出てきた課題を克服し、たくさんの人に興味を持っていただけるように大会を盛り上げていきたいと思います。

 

(後編につづく)

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田中一(たなか・はじめ)プロフィール>

一般社団法人日本パラダンススポーツ協会代表理事、NPO法人埼玉県障害者協議会代表理事。1953年、埼玉県生まれ。脳性麻痺により両足に障がいがあり、車いすで日常を過ごすが、アクティブに街に出ている。東洋大学社会学部を卒業後、埼玉大学経済短期大学部に編入し卒業。1976年、埼玉県志木市役所入所。在職中の37年間は主に図書館司書として新館開設準備、サービス運営に携わり館長等を歴任。2000年にパラダンス(当時の呼称は車いすダンス)と出会い、様々な国内の競技会やドイツ、台湾の国際競技会に参加。また、イベントやダンス教室のダンスパーティーなどでデモンストレーションを披露。現在は、パラダンスの普及拡大に尽力するとともに、分け隔てられることのない「共生社会」の実現を目指している。

 

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