16日、キックボクシングイベント『MAROOMS presents KNOCK OUT2023 Vol.4』が東京・後楽園ホールで行われた。KNOCK OUT-REDスーパーフェザー級前王者の久井大夢(TEAM TAIMU)が、KNOCK OUT-BLACKライト級前王者のバズーカ巧樹(菅原道場)が2階級制覇を達成。またISKAインターコンチネンタル・オリエンタルール・ウェルター級暫定王座決定戦で宇佐美秀メイソン(Battle Box)がジャマル・ワフィム(フランス)を下し、ベルトを巻いた。

 

 バズーカの王座返上により、KNOCK OUT-BLACKライト級のベルトを争ったのが久井と大谷翔司(スクランブル渋谷)だ。当初は4人による1Dayトーナメントの予定だったが、挑戦者が現れず2人の王座決定戦となった。

 

 対照的な道を歩んできた。久井は昨年プロ3戦目にして王座獲得した17歳の新星である。今年は中国、K-1と他団体のリングにも乗り込んでいった。今回は階級を上げての挑戦。1週間後に18歳の誕生日を迎え、17歳最後の試合で2階級制覇を狙う。

 

 対する大谷は自衛隊徒手格闘訓練隊出身の32歳だ。プロデビューは25歳と久井より遅い。初タイトルもそれから4年4カ月後。持っていたJAPAN KICKBOXING INNOVATIONライト級王座を返上してまで選んだタイトルマッチである。

 

 ゴングが鳴ると勢いよく飛び出したのは久井。サウスポースタイルからスピードのある攻撃を披露する。大谷はプレスをかけながら強打を狙う。スピードvs.パワーの構図で1ラウンドは進んだ。互いに決定打はないまま3分間が過ぎた。

 

 2ラウンドで大谷が久井のパンチで左まぶたの上をカット。視界が狭まる中、前進を続けた。久井は接近戦ではカウンターを狙いつつ、足を使ってうまくブローをかわした。前進を続ける大谷、かわす久井。大谷は鼻血も流し、出血が激しいため3ラウンドで2度ほどドクターチェックが入った。

 

 試合終了のゴングが鳴ると、右拳を突き上げた久井と、項垂れるようにコーナーに戻った大谷。判定も両者の感触と同じ、3人のジャッジは久井を支持した。リング上でマイクを持った久井は、こう語った。
「今年、僕はいろいろな挑戦をさせてもらいました。中国、K-1、今回は階級を上げてライト級に挑戦しました。今年はまだ残っています。宮田(充プロデューサー)さん、山口(元気代表)さん、今年、僕にもう一つ何か挑戦させてください。期待しています」

 

 大谷は持っていたINNOVATIONのベルトを返上して挑んだ試合だったが、KNOCK OUTの王座に届かなかった。「不完全燃焼だった」。プレスをかけ続け、前へ前へと積極的な姿勢は見せたが、連打には繋がらなかった。セコンドに就いた増田博正代表は「まぶたの上を切って、二重に見えて焦ってしまった。相手の頭が当たって鼻血も出てたり、リズムに乗れなかった」と肩を落とした。

 

 もちろん久井陣営としては狙い通りの勝利だ。久井の父でもある淳平会長は「作戦通りです。観ている人は面白くなかったかもしれませんが、パンチで倒されないように戦いました」と振り返った。久井本人も「おもろくなかったかもしれないけど、正直ああしないと勝たれへんかと思うほど、厳しい試合だった」と大谷の実力を認めた上での戦法だった。大谷が勝つために距離を詰めて前進を続けたように、距離を取って戦った久井も勝つための策。それは責められるものではない。

 

 今後、久井はベルトを守るのか、違う階級に挑むのか。他団体のリングに上がる可能性だってあろう。
「いろいろな挑戦をしたい。ワクワクするような試合をやっていきたいです」

 

 メインのタイトルマッチはKNOCK OUT-REDスーパーライト級王座決定戦。2階級制覇がかかるバズーカと、同じく2階級制覇を狙うKNOCK OUT-BLACKウェルター級前王者・良太郎(池袋BLUE DOG GYM/team AKATSUKI)は接戦となった。

 

 1ラウンド、良太郎がバズーカの前蹴りに対してのカウンターで右フックを当て、ダウンを奪った。2ラウンドはバズーカが強烈な前蹴りで良太郎をロープ際に弾き飛ばした。REDルールは首相撲、肘あり。3ラウンドにバズーカの右まぶた上が切れると、4ラウンドには良太郎の額からも血が流れる。肘打ちにより、一発逆転もあり得る闘い。5ラウンドはバズーカが肘の連打で、良太郎が出血がひどくなり、ドクターチェック。ややスタミナ切れの様子の良太郎は耐えたが、

 

 3人のジャッジのうち1人が48-47でバズーカを支持、残り2人は48-48のドロー。延長ラウンドに突入した。最後は気持ちの勝負とばかりに打ち合った。ゴングが鳴ると、バズーカが左拳を突き上げ、良太郎はロープにもたれかかる。ジャッジ3人が支持したバズーカに軍配。新王者は「こんな試合じゃ、本当ダメなんで。もっと強くなって出直します。ありがとうございました。押忍」とリング上で語った。

 

 今大会はTOKYO MXで生中継された。19時の放送開始から始まった第4試合から7試合までKOが続き、興行を盛り上げた。宮田プロデューサーも「良かったと思います。最後も延長を含む6ラウンドやってお客さんも最後までどちらが勝つわからなかった。特に素晴らしかったのは古木と栗秋の試合」と大会を総括。第7試合は古木誠也(G1 TEAM TAKAGI)vs.森岡悠樹(北流会君津ジム)、第6試合の栗秋祥梧(クロスポイント吉祥寺)vs.玖村修平(K-1ジム五反田チームキングス)を評価した。

 

 今月いっぱいでkrush専任となりKNOCK OUTプロデューサーとしては、今大会が最後の興行となった。この日、栗秋vs.玖村戦のようなK-1グループとの対抗戦についても「繋がっていくもの。先のことはわからないが、ファンの人たちがノッてくれるなら継続していくのがいいと思う」と話した。

 

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(文・写真/杉浦泰介)