18日、ボクシングの世界戦が東京・有明アリーナで行われた。WBAスーパー&WBC世界ライトフライ級タイトルマッチは王者・寺地拳四朗(BMB)がWBC同級1位&WBA4位のヘッキー・ブドラー(南アフリカ)を9ラウンド2分19秒TKO勝ちを収め、WBAは2度目、WBCは3度目の防衛を果たした。WBO世界スーパーフライ級タイトルマッチは王者・中谷潤人(M・T)が同6位アルヒ・コルテス(メキシコ)に判定勝ち、同王座初防衛に成功した。デビュー2戦目の那須川天心(帝拳)は大差の判定で2連勝を飾った。

 

 メインイベントで登場した寺地は、2団体統一王座返り咲きを狙った相手を9ラウンドで仕留めた。

 

 ブドラーはWBA世界ミニマム級王者で、2018年5月に当時WBA世界スーパー&IBFライトフライ級王者の田口良一を破って2階級制覇を達成している。同年12月、京口紘人(ワタナベ)に敗れたものの、昨年WBCライトフライ級挑戦者決定戦で勝利し、寺地へ挑戦権を得た。戦績はこれまで39戦35勝4敗の35歳だ。

 

 序盤からペースを掴んだのは寺地。ジャブ、ストレートを軸に相手を削る。しかしブドラーも粘りを見せる。「なかなかタフな相手。KOを狙いにいったがなかなか倒せなかった」と寺地。中盤以降も優位に試合を運ぶが「攻め方が分からなくなり、判定が頭を過ぎった」と振り返る。5ラウンドには右まぶたの上をカットする場面も。

 

 7ラウンド終了後にセコンドの加藤健太トレーナーの指示で、攻め方を変えた。すると、9ラウンドに試合は動いた。ロープ際に追い込み、ラッシュを仕掛けてサンドバック状態に。レフェリーが試合を止めた。「相手が執拗に右回りになり、勝負から離れる動きをした時に迷いが出始めた。そこを8ラウンドで切り換えてできたのは成長を感じました。9ラウンドで仕留められたことは大きい収穫」と加藤トレーナー。寺地も「自分がブレてしまったのは反省点。(加藤さんの)指示に合わせられたのはいい面」と語った。

 

 寺地は次戦、4団体統一を見据えて「今のところは3団体目にいきたい」と希望を口にする。4団体統一か、階級を上げてベルトを狙いにいくのか。

 

 今年5月にアメリカ・ラスベガスで2階級制覇を達成した中谷は、WBO世界スーパーフライ級初防衛戦で難敵を退けた。

 

 コルテスは中谷が照準を合わせるWBC王者ファン・フランシスコ・エストラーダ(メキシコ)と昨年9月、メキシコで対戦し、判定で敗れたものの接戦を演じた。ここで中谷が圧倒できれば、ビッグマッチに向けて大いにアピールとなるはずだ。本人は「防衛戦という気持ちではなく、しっかり勝つ」との思いで臨んだという。

 

 長いリーチを生かし、一定の距離を保つことができるのが強みだ。左の強打が光る。序盤は様子見ながらラウンドだったのか、5ラウンドには強烈な左ボディを見舞い、キャンバスにヒザをつかせた。さらにラッシュから2度目のダウン。9ラウンドにもボディでこの日3度目のダウンを奪うなど、ほぼ危なげなく試合を終えた。ジャッジ2人が119-106、1人が118-107を付ける圧勝だ。

 

 KO勝ちできなかったのは減量の影響か。試合後の会見で聞かれると、本人は減量のきつさは認めつつも「12ラウンド戦えたので、あまり体重のせいとは感じなかった」と否定した。とはいえ頬が少しこけているように見え、この階級に長く居座ることは、得策と思えない。

 

 今後については「スーパーフライでやるなら、統一戦をやりたい気持ちはすごくあるので、どのチャンピオンでもやりたい」と語った。他3団体の王者は、WBCがエストラーダ、WBAが井岡一翔(志成)、IBFがフェルナンド・マルティネス(アルゼンチン)。”ネクストモンスター”と呼ばれる25歳の標的は、どの王者になるのか注目である。

 

 世界戦を差し置いて、セミファイナルに抜擢された那須川は、メキシコのバンタム級王者と123ポンド(約55.79kg)契約で戦った。デビュー戦はバンタム級の日本ランカー(当時2位)与那覇勇気(真正)に続き、2戦目は9戦全勝(7KO)のメキシコのホープ、フアン・フローレスが当てられた。フローレスの新型コロナウイルス感染により、対戦相手はグスマンに変わった。

 

 黒一色のリングコスチュームを身に纏い、リングに向かう。入場曲はキックボクシング時代から慣れ親しむ、ロック歌手・矢沢永吉の『止まらないHa~Ha』。リング上で少し落ち着きがないように映るのは、“早く闘いたい”との気持ちからか。

 

 ゴングが鳴ると、1ラウンドいきなり試合は動いた。2分過ぎ、グスマンの攻撃に左を合わせるかたちでダウンを奪った。その後もスピードで相手を圧倒。3ラウンドにはボディでグラつかせたが、6ラウンドのラッシュでは倒し切れなかった。7ラウンドにダウンを奪うなど、大差の判定で勝利した。

 

 これでデビュー戦2連勝。「無事に2戦目で勝つことができて多少ホッとしている。課題というか、次へのステップが見えました。成長した姿は見せられたと思うので、これに満足せず次に繋げたい」と那須川。セコンドの粟生隆寛トレーナーは「良くなっている部分と課題はこれから詰める。1戦目は技術、2戦目をダウンを見せられた。次は倒し切るボクシング」と語った。

 

 課題は守りを固めた相手への対処法か。「相手が何もしてこない時に“どうやって攻めよう”と迷ってしまった。僕は相手が打ってきたところで合わせるスタイル」と那須川。本田明彦会長も早期の世界挑戦は否定し、10戦目以降となることを明かしている。那須川は「僕は自分を、チームを、応援してくれる人を信じて、最強の道を突き進んでいく」と誓った。

 

(文・写真/杉浦泰介)