(写真:スタンドに挨拶するジャパンのメンバー ©JRFU)

 8日、ラグビーW杯フランス大会プールD3位の日本代表(ジャパン)が同2位のアルゼンチン代表に27-39で敗れた。前半2分に先制されたジャパンは、16分にLOアマト・ファカタヴァのトライなどで追いついた。前半を14-15で終えると、後半も競った展開に。しかし28分に4本目のトライを奪われると、突き放された。これでジャパンは2勝2敗で勝ち点9、順位は変わらず3位。2大会連続の決勝トーナメント進出はならなかった。勝ったアルゼンチンは3勝1敗で勝ち点14、2位をキープし、2大会ぶりの8強入りを果たした。

 

 ナントの午後に桜の花は咲かなかった。2大会連続の決勝トーナメント進出をかけて、大一番に臨んだジャパンはアルゼンチンに力負け。”ロス・プーマス”(アルゼンチン代表の愛称)の前に桜の戦士たちは屈した。エベレストの頂上を目指す旅は、志半ばで下山を余儀なくされた。

 

 開始早々に先制パンチを食らった。センターライン付近でラインアウトモールから大きく前進。アルゼンチンのFWは力強く、ジャパンは後退させられた。そこから反則を犯し、アルゼンチンにアドバンテージ。思い切りよくランナーを走らせる相手を止めることができなかった。CTBサンティアゴ・チョコバレスにブチ抜かれ、インゴールまで運ばれた。WTBエミリアノ・ボフェリのコンバージョンキックが決まり、7点を追いかけるかたちとなった。

 

 6分、ファーストスクラムで相手のコラプシングを誘う。スクラムで先手を取った。11分にはSH齋藤直人が敵陣で相手に背を向けたままパントキック。FBレメキロマノラヴァがキャッチし、イングランド戦でSH流大が魅せたトリッキーなプレーでチャンスメイクした。最後はラックで自らがボールを落とし、ノックオン。チャンスを逸したが、相手に“何か仕掛けてくる”と警戒させるには十分なプレーとなった。

 

(写真:左サイドを駆け抜けるファカタヴァ。大学時代はWTBも経験した ©JRFU)

 16分、ジャパンはアルゼンチンを追撃。自陣からのカウンターアタックでセンターライン付近までボールを運ぶ。左に展開していき大外のファカタヴァへ。トンガ出身の28歳はボールを片手にタッチライン際を駆け抜ける。前方に蹴ったボールを自らが取り、そのままインゴールへ到達。SO松田力也のコンバージョンキックも決まり、7ー7の同点とした。

 

 しかし、23分にFLピーター・ラブスカフニがハイタックルでシンビン(10分間の一時退場)に。それで得たPGはボフェリが外したものの、28分にはWTB松島幸太朗のハイパントをキャッチした相手にカウンターを受けた。SHゴンサロ・ベルトラノウに抜け出されると、最後はスピードに乗った状態でボールを受けたWTBマテオ・カレーラスにトライを奪われた。33分には、自陣でのマイボールラインアウトでボールを失い、その後、オフサイドの反則を犯してしまう。今度はボフェリに決められ、7-15と突き放された。

 

 遠のいた“ロス・プーマス”の背中を再びとらえようと、ジャパンは食らいつく。38分、今大会初先発初出場のWTBシオサイア・フィフィタが左サイドを抜け出し、パスダミーで内を突く。サポートに走っていた齋藤がパスを受け、インゴール左中間に飛び込んだ。松田がコンバージョンキックを確実に決め、14-15と1点差で前半を終えた。

 

 逃げるアルゼンチン、追うジャパンの構図はハーフタイムを迎えた後も続いた。6分、アルゼンチンがラインアウトモールから前進。フェーズを重ね、大外左で待つM・カレーラスにボールが渡る。このトライチャンスを確実にモノにし、ボフェリのコンバージョンキックも決まる。再度アルゼンチンがリードを広げる。

 

(写真:W杯初トライこそならなかったがDGを決めたレメキ @JRFU)

 12分、松田のPGで5点差に、16分にはレメキのDGで2点差に詰め寄った。今大会プレースキック絶好調の松田。この日も安定したキックでジャパンを支える。レメキはセンターライン付近、ゴールまで50m近くあった距離を射抜いてみせた。

 

 だが、またしてもミスとペナルティー。キックオフボールをNo.8姫野和樹がジャンプしてキャッチしようとするが、陽の光と前方で飛んだアルゼンチンの選手が視界を遮り、落球してしまう。直後のスクラムで相手に押し込まれ、ペナルティーアドバンテージ。勢いよく攻めるアルゼンチンにこの日4本目のトライを許した。ボフェリにコンバージョンキックに決められ、20-29と9点差に離された。

 

(写真:途中出場でトライをあげたナイカブラ ©JRFU)

 それでも桜の戦士たちの心は折れない。23分、スクラムでコラプシングを誘い、ペナルティーを獲得。ボールをタッチライン外に蹴り出し、ラインアウトでトライを狙いにいく。HO坂手淳史はニアサイドに低いボールを供給し、相手の虚を突いた。モールで前進しようとするがアルゼンチンが耐えられたものの、攻勢をかけて反則を誘った。次はタップキックからパスを繋いでトライを狙う。齋藤から右へ展開。大外のWTBジョネ・ナイカブラが右隅に飛び込んだ。松田が角度の狭いコンバージョンキックを決めて、2点差に。

 

 敵陣で反則を誘えれば、松田のキックで逆転できる。ただ反撃はここまでだった。29分、M・カレーラスに軽快なステップ、ハンドオフでタックルをかわされ、ハットトリックを許した。途中出場のSOニコラス・サンチェスのコンバージョンキック成功で9点差。34分には、PGをサンチェスに決められ万事休した。強豪アルゼンチンに最後は振り切られ、桜の戦士たちの夢は散った。

 

「エベレストの頂上に桜を咲かすことはできませんでしたが、自分たちのレガシー、文化、目標、夢は次に受け継がれていくもの。まだまだ日本ラグビーは強くなれると信じています」と姫野。強豪相手にスクラムで互角以上の戦いを見せ、好ゲームを展開したが、勝てなかった。プールを突破した8カ国・地域に共通していたのが、4試合通算で2ケタ失点に抑えたこと。ジャパンは魅力的なアタックを見せたが、失点数は107とかさんだ。4年後も頂上到達を目指すなら、この課題克服は必須条件である。

 

(文/杉浦泰介、写真/©JRFU)